無人運転がまもなく現実のものになる。
重慶市と武漢市の地方政府当局がこのほど、全国に先駆けて自動運転の完全無人化による商用化テスト政策を打ち出すとともに、百度(バイドゥ)に全国初の無人化試行営業許可証を発行し、安全員が乗車していない自動運転車両が公道で商用化サービスを展開することを認可した。この政策が実施されたことで、重慶と武漢の居住者は全国で初めて無人運転による移動サービスを利用できるようになった。
ここ数年の間に、無人運転は一歩ずつ前進し、中国は後発組ながら世界のトップクラス入りを果たした。
重慶市永川区と武漢経済技術開発区で完全無人自動運転
百度は重慶と武漢の両地方政府が発行した完全無人自動運転営業許可証を取得した。
現在、百度の無人運転車両の営業範囲はまだ両市の全ての公道をカバーしていない。百度の関係者が8日に述べたところでは、「重慶市永川区と武漢経済技術開発区で、百度の完全無人運転移動サービスを体験できる。百度の自動運転移動サービスプラットフォーム『蘿蔔快跑』は両エリアで、安全員が乗車していない車両による自動運転の有料移動サービスをすでに提供している。現在、投入されている車両はARCFOX社の第5世代『Apollo Moon(アポロ・ムーン)』で、今後さらに台数を増やす予定であり、他の車種を増やすことも検討している」という。
コストが大幅低下
自動運転産業全体を見ると、2020年7月に文遠知行(WeRide)が無人運転タクシー(ロボタクシー)のテスト許可証を取得して、広州市で無人運転テストを開始し、22年初めに無人運転ミニバスの乗客を乗せた営業をスタートした。同年7月20日には百度が北京市の無人化移動サービス商用化テストの許可証を取得し、「運転席が無人」という新たな段階に突入し、8月8日に全国初の完全無人運転営業許可証を取得した。この2つの許可証は、中国で初めての完全に無人化した自動運転の営業許可証でもある。
易観分析の自動車交通産業研究総監の劉影氏によると、「商用化という視点に立てば、車内に安全員のいない無人運転は、自動運転のコスト上の優位性をよりよく発揮できるものと言える。従来のタクシーは1キロメートル走行すると大体1.89元(1元は約19.8円)のコストがかかり、安全員のいるロボタクシーの同コストは約2.2元だが、安全員のいないロボタクシーならわずか0.82元で済む。ロボタクシーは従来のタクシーの43%までコストが下がり、従来のタクシーや安全員のいるロボタクシーより大幅なコストカットになる」という。
無人運転の安全性はどうか?
自動運転が完全無人化を実現すると聞くと非常に素晴らしく聞こえるが、安全性はどうやって保障されるのだろうか。
SNSでは、ユーザーから「(ロボ)タクシーに乗ると、自分で運転できるのか?」との質問が投げかけられた。これについて百度の関係者は次のように答えた。「もしも車内の乗客がハンドルを持ち去るなど悪意ある行動を取ろうとした場合、プログラムは乗客が運転席に侵入したことを自動的に検知し、侵入行為であると判断すれば、車両を道路の端に強制的に停車させる。車両が突然停止するなどの緊急事態が発生すれば、百度アポロプラットフォームが『5Gクラウド運転代行』技術により迅速にクラウド端末を通じて車両の管理を引き継ぎ、車両の安全を保障する。こうした管理の引き継ぎはシステムの自動検知を通じて行われる。乗客が『5Gクラウド運転代行』のボタンを押して操作することも可能だ」。
同関係者によると、「重慶と武漢の両政府の要求を踏まえ、完全無人化営業を展開するには、テスト、モデル応用、無人化テスト、さらに車両全体の無人化営業の各プロセスの要求を遵守しなければならない。百度の第5世代ロボタクシーの場合、無人化営業を申請するには、1台あたりの走行距離が累計数千キロメートルに到達していなければならない。その上、一定量のニーズがあり、さらに有責事故が発生しないなどの条件を満たして初めて申請を提出することができる」という。
相次いで打ち出される産業支援政策
ここ数年、中央政府は一連の支援政策を相次いで打ち出し、無人運転技術の進歩と商用化の実現を後押ししてきた。
20年2月、国家発展改革委員会、工業・情報化部(省)など11の部・委員会が共同で通達した「スマートカーイノベーション発展戦略」は、ハイレベルの自動運転の発展を加速させることを打ち出した。
今年8月3日には、自然資源部が「スマートコネクテッドカーの高精度地図応用テスト関連業務の着実な実施に関する通知」を通達し、北京、上海、広州、深セン、杭州、重慶の各市でスマートコネクテッドカーの高精度地図の応用テストを展開し、さまざまなタイプの地図が自動運転向けに多様なルート検索の応用を提供するよう支援した。同8日には、交通運輸部が「自動運転車両による輸送の安全なサービスの手引き(試行版)」を発表し、社会から広く意見を募集した。
産業の発展の可能性は巨大
現在、中国のスマートコネクテッドカー産業は急速に発展している。情報によれば、中国国内には自動運転テスト用に開放された道路が5千キロメートル以上あり、全国の多くの都市が自動運転の信号情報を開放している。北京、上海、杭州、深センといった一線都市だけでなく、重慶や長沙など40を超える省・市で自動運転関連の管理規定や実施細則が打ち出され、道路テスト、人を乗せたテスト、試行営業から無人化まで、さまざまな段階にわたり積極的な探求を続けている。
関連機関の予測では、30年までに、中国の自動車の50%が自動運転を実現し、世界の自動運転レベル4-5の車両は8千万台前後に達し、30年の中国自動運転車サービス市場の規模は1兆3千億元に達するという。この産業には非常に大きな発展の可能性があるということだ。
中米の比較 中国は公道テスト実現をさまざまな角度から保証
実際、世界各国がこぞって自動運転分野で追いつ追われつの競争を展開している。今回、重慶と武漢で車内に安全員がいない自動運転の商用化試行営業サービスが正式にスタートしたことは、中国の科学技術イノベーションと科学技術政策の開放レベルが世界のトップクラスに達したことを示している。
中国は6年間で10件を超える国家級の政策を相次いで発表し、デジタル交通、インフラ建設、スマートコネクテッドカーの発展、スマートコネクテッドの標準などさまざまな角度から自動運転の全方位的な発展を保証してきた。ここ数年は、北京、上海、杭州、重慶など40を超える省・市で関連の管理規定や実施細則が打ち出された。公道テスト、人を乗せたテスト、試行営業から無人化まで、さまざまな段階にわたり積極的な探求が続けられている。
同じ6年の間に、米国は5件の国家級政策を相次いで打ち出し、主に自動運転関連の法律を制定することで商用化を推進してきた。標準には革新的な点が多いため、関連の実施細則はまだ十分ではない。たとえば、22年6月にゼネラルモーターズ傘下のクルーズが初めてカリフォルニア州サンフランシスコで完全無人化自動運転タクシーの有料営業を許可された企業になったものの、その車両は市の中心部を走ることができないばかりか、営業時間が夜の10時から朝の6時までの間に限られていた。
ここからわかるのは、中国では道路関与者とその複雑さが米国の何倍にも達し、公道での自動運転テストをさまざまな角度から保証し、実現させているということだ。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2022年8月15日