解説
- 中日韓FTA
- 「概説」
- 中日韓FTAは、人口15億人以上を抱える中日韓3カ国の間で締結する自由貿易協定。FTAとは、2カ国・地域以上の間で、関税や輸入数量制限などの貿易障壁を相互に撤廃し、自由貿易を行なうことを約束する協定。締結されれば、物流の円滑化が促され、メーカーのコスト削減や市場シェアおよび利益の拡大につながったり、消費者がより低価格で商品を購入できたりと、構成国・地域の経済全体に一定のメリットがある。
▽FTA構想
中日韓FTA構想は、2002年に初めて提起されたもので、3カ国首脳はまず民間ベースで学術研究を実施することで合意した。それから約7年間、3カ国の研究機関はFTA締結の実現可能性に関する研究を大量に実施し、前向きな結論を得た。3カ国の民間研究チームが独自のモデル試算で導き出した結論は▽3カ国間の自由貿易が実現すれば、各国の経済成長率も上昇が見込める。うち韓国が最も大きな恩恵を受ける▽3カ国間のどの二国間貿易よりも経済効果は大きい--などでほぼ一致した。このほか、3カ国の企業を対象としたアンケート調査でも前向きな反応を得た。
▽FTAの構成
中日韓国3カ国はいずれもアジアの重要な経済国で、経済総量はアジア全体の約7割を占める。過去10年間で、中日貿易と中韓貿易の構成は次第に均一化している。中日貿易は、中国の機械設備と電子製品の日本向け輸出が明らかに拡大しており、うち加工貿易の形式が大きな割合を占めている。大分部は中国に進出している日系企業による製品輸出で、産業内貿易と企業内貿易に属する。一方、中韓貿易も、韓国の対中輸出商品がローエンド製品から半製品・完成品にシフトしており、産業内貿易も日増しに拡大している。
3カ国でそれぞれ異なる産業の強いがFTA締結の基礎となる。経済的に発展している日本と韓国はいずれも資本・技術集約型製品に比較優位があるが、中国の比較優位は依然として資源・労働集約型製品が中心。国内外の情勢の変化や3カ国の経済構成の調整を背景に、こうした条件を維持することができるのか、FTA締結にはどのようなデメリットがあるのか、いかに制度づくりを通じてコストを抑えるか、などが今後検討すべき課題だ。
▽これまでの進展
2009年10月、第2回中日韓首脳会談が北京で開催され、3カ国首脳は中日韓FTA産官学共同研究を早期開始することで一致。同月、タイで開かれた第6回中日韓経済閣僚会合で、2010年前半から共同研究を開始することで合意した。2010年5月30日、中日韓FTA共同研究第1回会合が韓国ソウルで開かれ、2012年までに共同研究を終了させる方針を確認した。
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