7年間の設計・開発を経て、中国製大型旅客機C919の1番機が11月2日、中国商用飛機有限責任公司が新たに建設した総組立製造センター浦東基地の工場内で正式にラインオフした。これは中国が中距離旅客機の研究開発から製造に至る能力を備えた世界でも数少ない国の一つになったことを意味する。
大型航空機とは?
一般的に、離陸時の総重量が100トンを超す軍用輸送機と、1フライトで3千キロの飛行が可能な100席以上の民間機と指す。中国の大型航空機プロジェクトは大型旅客機と大型貨物輸送機とからなる。C919は中国独自開発の次世代ジェット旅客機で、2008年に研究開発がスタートした。中国の重要科学技術特定プロジェクト16項目のうちの一つでもある。
室内の配置
室内は1通路(ナローボディ)を採用し、基本機種は定員158人で、国際航空市場で現在最もよく利用されているエアバス「320」やボーイング「737」に相当する。全長約39メートル、全幅約36メートルで、同タイプ機よりやや大きい。また複合材料と新型の航空機用合金を大量に使用し、機体が大きくなっても、機体総重量は合理的な水準に保たれている。
C919の室内は同タイプ機よりやや広く、1メートル90センチほどの背の高い人でも頭がつかえることなく歩けると同時に、荷物棚の空間が大きく設計され、小柄な人でも荷物の出し入れがしやすい。中間の座席をやや広く取り、国際航空で使用する機体の標準座席仕様より0.5インチ広くしており、乗客の出入りはスムースだ。
C919の特徴と強み
航空機の性能を決める2つの決定的要素は揚抗比と航空機の重量だ。設計段階での目標は、C919の主翼の重量はボーイングの水準を超えること、揚抗比はエアバスの水準に到達することだった。
中国の航空力学のトップレベル専門家100人からなるチームが、C919のために500種類の翼を設計し、現在C919-101号機に採用された主翼は度重なる構造テストで選ばれた優れたデザインの中からさらに選りすぐったもので、欧米諸国での風洞実験の結果は世界の同業者に高く評価され、いくつかの重要指標ではライバル機を上回った。また重量を軽くし燃料消費を減らすため、C919の600種類の部品には複合材料とアルミリチウム合金などが使用され、複合材料の使用量は機体構造の総重量の20%にあたり、主翼に使用された複合材料(チタニウム合金)は10%前後を占め、ライバル機を大幅に上回る。
C919の安全性
国産機の安全性への疑問に対して、中国商用飛機公司のC919総設計士の呉光輝は、「飛行機というものは空を飛べば必ず危険がある。おまけに中国人は初めてこのような航空機をうち出したのだ。将来の運航への投入には一連の挑戦が横たわる可能性があるが、私には自信がある。この自信は蓄積からきたものだ。現在、ボーイングとエアバスの航空機部品の多くはメイド・イン・チャイナだ。08年のスタートから現在まで約7年の時間を経過し、C919プロジェクトの過程で私たちは大量の設計、計算、テストを十分過ぎるほど行ってきた。私はぜひともこの飛行機の乗客第1号になりたい」と話す。
競争力
設計によると、C919の基本機種は航続距離が4千キロメートルで、国内すべての都市間の往復が可能だ。最大航続距離は5500キロメートルで、北京からシンガポールへの直航が可能だ。
またC919には世界最先端の航空機電気システムが搭載され、全機種にフライ・バイ・ワイヤが採用され、操縦士の操作が高度に集積化され、システム訓練を受ければすぐに操縦の任に当たることができるようになる。重要技術と機体部分の完全な独自設計・独自製造を保証すると同時に、関連設備は世界からの調達を実現し、世界トップクラスのサプライヤーをそろえ、この国産旅客機が将来、航空市場で強い競争力をもつことを保証している。
C919は機体完成後、システムの試験という試練を迎える。その後には、初飛行、耐空証明の取得、顧客への交付、運航・メンテナンスが続く。
Step1:試験飛行
プロジェクト発展段階の計画に基づき、C919は今後さらに配電系統、飛行制御、油圧など各システムの試験、航空機搭載システムの統合試験、全機の静的試験を実施する必要がある。1番機は試験飛行機として、初飛行前にシステム調整、試験飛行の設備・計器の取付などを終えなければならず、2016年に初飛行となる。
初フライトにはまだ2~3年のテスト飛行のプロセスが必要で、さまざまな気象条件の下で何回もテスト飛行を繰り返して、やっと旅客を乗せた運航に投入できるのだ。
Step2:航空許可証の取得
商業運航を実現するには、国内路線を運航する航空機の場合は中国民用航空局が発行した航空機型番合格証を取得しなければならず、国際路線の場合は米連邦航空局の承認が必要だ。
Step3:航空会社とのビジネス交渉
国産大型旅客機は現在、欧米の同類機種との激しい競争に直面している。エアバスの新型A320、ボーイングの新型ボーイング737は、市場における位置づけがC919と重複する。
航空機のラインオフはその航空機がテスト飛行の段階に入ったことを意味しており、顧客に大きな信頼感を与えることができる。中国商用飛機公司が提供したデータによると、現在、国内では中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空、海南航空を含む7社が135機を予約した。海外ではドイツの普仁航空が7機、タイのシティエアウェイズが10機の購入意向合意に調印した。このほか国内の12社を含むファイナンスリース会社からの注文もある。
国産の中距離旅客機を開発した理由は?
□ 民用航空機市場に照準
世界の民用航空機市場は全体として発展の可能性が非常に大きい。今後20年間で世界の民用航空機市場の規模は8700億ドル(約104兆8959億円)に達する見込みだ。
□ 製造業のレベルアップ
中距離旅客機の研究開発・製造能力は国の航空産業の水準をはかる重要な指標であり、その国の総合力を示す重要な指標でもある。C919のラインオフは中国が中距離旅客機の研究開発から製造に至る能力を備えた世界でも数少ない国の一つになったことを意味する。国産中距離旅客機の開発製造は中国民用航空産業の発展における非常に重要な節目であり、中国が先端製造業を構築する上で極めて重要な戦略的価値をもつポイントだ。
□ 経済を牽引する
中国経済が中レベルの高度成長を実現し、中の上の水準に向かい、より高い質、高い効率の発展を実現させようとするなら、独自の先端製造業をもつことが絶対に必要だ。C919のラインオフでは、産業の牽引効果やシンボル的役割を軽視してはならない。高らかに響く「高速鉄道の実力」や「高速鉄道での自信」と同じように、中距離旅客機も科学技術の発展を加速させ、ハイテク技術の高みを制覇する上で私たちにより大きな自信を与えてくれる。
将来の発展
□ C919の主なライバル
C919の主なライバルはボーイング737とエアバスA320だ。この2機は民用航空史上、最もよく売れた機種でもある。中国には独自の強みがあり、市場は大きく、また大きな『世界の加工工場』でもあり、今後は製造・運営コストなどでA320よりも競争力をもつようになるとみられる。さらにC919の後発組としての強みは明らかで、新しいエンジン、新しい技術を導入しているため、経済性や燃料消費などでライバルよりも優れている。
□ 目標:世界の航空機製造業のサプライチェーンに食い込む
世界の民間機製造業に眼を向けてみると、業界の集中の度合いが高く、寡占している顕著な特徴がある。これによってC919型機の製造開発はただ民間機製造業というパイの分け前にあずかる第一歩に過ぎない。引き続き中国は航空機の部品製造を発展させ、世界の航空機製造業のサプライチェーンに食い込むことで世界の産業チェーンでの地位をたゆみなく向上させ、世界の航空機製造業のレベルに追い付き、また追い越す。大型旅客機の機体組み立て拠点に牽引され、上海で完全な航空産業チェーンを形成する。
□ 中国のトロイカ
C919第1機のラインオフに伴い、大型飛行機は高速列車、原子力発電所と並んで中国製のトロイカに名を連ねる。多くの業界アナリストは「高速列車、原子力発電所の成功経験があるので、大型飛行機の国際化への道のりはスムーズに進む可能性が高い」とより楽観的な態度を示す。
事実、商務部(省)によると、この前ロシアで行われた「2015年度・第6回国際イノベーション産業展」で、中国は同産業展初の名誉招待国として参加、130社余りの中国企業が出展した。高速列車、原子力発電所、大型飛行機、掘削プラットフォーム、宇宙探査器などの先進製造業が「中国工業の代表チーム」として、初めて一挙公開した。
国内市場はより大きな「金脈」だ。過去30年、中国民間航空機市場が急速に拡大し、それぞれの航空企業大手は事業拡大の「黄金期」を掴むため、大金を投入し航空機を購入、ボーイングやエアバスにつぎ込んだ米ドルは数えきれない。現在、この航空製造業のパワーゲームにおいて、中国は間もなく2大製造メーカーの長期にわたる寡占市場に割り込み、利益を分かち合うだろう。(編集JZ)
「人民網日本語版」2015年11月6日