2019年の国際情勢は複雑に入り組み、不安定性と不確定性が一層際立った。世界経済の低迷が続き、一国主義と多国間主義の対立が一層激化し、保護主義とポピュリズムの逆流がうねり、伝統的及び非伝統的安全保障上の脅威が入り交じって蔓延し、グローバル・ガバナンス体制が幾重もの試練に直面した。世界の大きな調整と変革が加速する中、平和・発展・協力・ウィンウィンという時代の潮流は依然滔々と前進している。
(1)史上初のブラックホール撮影 宇宙探索の重要な一歩
4月10日、中国を含む国際研究チームが人類史上初となるブラックホール画像を公開した。過去2年にわたって各国・地域の研究者が「イベント・ホライズン・テレスコープ」プロジェクトに取り組み、世界各地の電波望遠鏡をつないだ巨大な仮想望遠鏡を構築し、追跡撮影した。地球から約5500万光年離れたこのブラックホールは、太陽の65億倍の質量を持つ。
(2)各国で相次ぐテロ事件 踏み込んだ効率的なテロ対策協力が急務
今年は世界でテロ事件が相次いだ。年初にケニア・ナイロビでテロが発生。3月にニュージーランド・クライストチャーチで銃撃事件が発生。7月にアフガニスタンの首都カブールで爆発が起きた。国際テロ勢力が一部の国の現地過激派と共同でテロを画策することが、新たな脅威となっている。テロ組織はニューメディア等の手段も利用して宣伝攻勢を強め、過激思想を拡散している。新たな情勢の下、国際社会にとって踏み込んだ効率的なテロ対策協力が急務となっている。
(3)4大ホームグラウンド外交 多国間主義を守る中国の大国としての責任感を示す
4月25日、第2回「一帯一路(the Belt and Road)」国際協力サミットフォーラムが北京で開幕し、「一帯一路」建設が質の高い発展という新たな段階に入ったことを示した。北京世界園芸博覧会は世界がエコ文明の礎を共に構築し、グリーン発展の道を共に歩むための方向性を指し示した。アジア文明対話大会は世界の異なる文明間の交流と相互参考を強化した。第2回中国国際輸入博覧会は経済のグローバル化を支持し、多角的貿易体制を維持するために国際公共財を提供し、世界の開放的協力という大合唱を響かせた。今年、習近平国家主席は4大ホームグラウンド外交に出席し、「一帯一路」共同建設、文明間の交流・相互参考等を通じた人類運命共同体の構築推進という理念を深く明らかにし、多国間主義の維持という時代の強い声を発した。グテーレス国連事務総長は「すでに中国は多国間主義の最も重要な柱となっており、世界の平和と発展の促進にとって不可欠で、信頼に値する重要なパワーだ」と評価した。
(4)米国がイランへの「最大限の圧力」を強化 各国はイラン核合意の維持に努力
米国はイラン核合意から離脱して以来、イランに対する「最大限の圧力」を徐々に強化した。5月8日、イランは米国に報復するため、イラン核合意の一部履行停止を宣言した。7月以降、湾岸地域でタンカーや油田への襲撃事件等が相次ぎ、地域情勢は一触即発の状態となった。一方、米国を除くイラン核合意の関係国は合意の完全で有効な履行という方針を繰り返し再確認した。
(5)中国が朝鮮半島問題の政治的解決を後押し 各国は働きかけを活発化
6月20、21日両日、習近平国家主席は招待に応じて朝鮮を国賓訪問した。12月17日、中国とロシアは朝鮮半島問題の政治的解決についての決議草案を国連安保理に共同提出。互いの懸念を尊重し、歩み寄るよう朝米双方に促した。今年に入り、中国を含む国際社会が積極的に後押しする中、朝鮮半島情勢は立て直され、各国が働きかけを活発化している。第2回朝米首脳会談が2月下旬にベトナム・ハノイで開催された。6月にも朝米首脳は板門店で顔を合わせた。だが朝鮮側の懸念への対応、対朝制裁の解除において米側が具体的措置を終始取らないため、双方は相互信頼を欠いている。朝鮮半島情勢の見通しは依然不透明だ。
(6)米国がINF離脱 新たな軍拡競争の懸念を呼ぶ
8月2日、米国は国際社会の反対を顧みず、中距離核戦力(INF)全廃条約から頑として離脱。INF全廃条約は正式に失効した。離脱後、米国は中距離巡航ミサイルや中距離弾道ミサイルの発射実験を相次いで行なった。こうした行動は世界で新たな軍拡競争への懸念を呼んだ。一国主義により世界情勢が一層複雑化し、世界の不安定化要因と不確定要素が著しく高まった。
(7)「ブレグジット」が延期を繰り返す 欧州統合は複雑な試練に直面
12月20日、英下院は「ブレグジット」(英国のEU離脱)協定関連法案の基本部分を可決した。ブレグジットは延期を繰り返して3年余りを費やし、負のデモンストレーション効果が拡大・波及し、欧州統合プロセスは停滞さらには後退の危険性に直面している。これはEUの国際的地位と世界的影響力を弱めただけでなく、欧州地域と世界の政治構造にも複雑な影響を与えた。
(8)チリが国際会議開催を中止 各国で社会動乱が発生
10月30日、チリはAPECサミットと国連気候変動会議の主催を国内の大規模な社会動乱のために断念することを発表した。2019年、抗議のうねりが世界各国を席巻した。中南米各国で全国的なストライキや民衆の抗議デモが発生。イラク、イラン、レバノン、エチオピアでも抗議のうねりや社会騒乱が発生した。各国で起きた動乱は、世界で動揺要因やリスクが著しく増えていることを反映しており、深層の原因は拡大し続ける貧富の格差、民衆の不満、制度的欠陥、ガバナンスの困難、社会矛盾の顕在化にある。
(9)世界最大の自由貿易協定交渉が全体的に終了 地域協力が高度化
11月4日、第3回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議がタイで開催された。各国首脳は共同声明を発表し、参加国中15カ国が全ての文書交渉及び実質的に全ての市場参入交渉を終え、来年の署名実現に尽力することを明らかにした。締結されれば世界で最大の人口を擁し、最も潜在力のある地域自由貿易協定となる。だがインドがRCEPに当面加わらないことを発表。日本も「インド抜きのRCEP署名は考えていない」としており、今後の道は平坦ではない。
(10)世界貿易の「最高裁」が機能停止 保護貿易主義が世界経済に累を及ぼす
12月11日以降、世界貿易機関(WTO)の上級委員会――世界貿易の「最高裁」が25年間の運用を経て、米国による妨害のため「麻痺」状態に陥った。今年も米国はあちこちで関税の圧力を振りかざし、貿易覇権を行ない、中国、メキシコ、インド、EUなどの対米輸出品に相次いで追加関税を課した。経済のグローバル化が深く進行した今日、保護貿易主義は世界の貿易と産業チェーンに打撃を与えている。(編集NA)
「人民網日本語版」2019年12月30日