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零下40度の厳寒の中 チベットカモシカに「エサをデリバリー」

人民網日本語版 2022年03月07日10:42

零下40度まで気温の下がった西蔵(チベット)自治区には、肌を刺すような寒風が吹きすさび、数十センチメートルも降り積もった雪が、地面をすっかり覆い隠していた。ここは同自治区阿里地区改則県。県内には10万キロメートルにわたって羌塘草原が広がり、10万頭を超えるチベットカモシカが生息する。人民網が伝えた。

改則県林草局の仁増羅布局長は朝早く羌塘草原にやって来た。普段の巡回保護の作業とは異なり、この日は草原の奥の方まで足を踏み入れ、「食品デリバリー配達員」の役割を果たした。「配達サービス」を受けるのは、草原に暮らすチベットカモシカたちだ。

群れをなし集まったチベットカモシカ(撮影・仁増羅布)。

昨年10月以降、羌塘草原は広い範囲で大雪となり、気温が急速に低下した。仁増羅布さんは普段の巡回保護をする中で、遠くの方に黒と黄色の点がたくさん集まっているのを目にした。何かが群れをなし列を作って動いており、近づいて見てみると、草原の一部分に密集した数千頭のチベットカモシカだった。

それからの数日間、仁増羅布さんは管理保護スタッフにたびたび電話で状況をたずね、ようやく次第に状況をつかめるようになったという。それは連日の大雪の影響で、カモシカがエサを求めて雪が少ない場所に集まってきていたのだった。

仁増羅布さんの「凍死したカモシカや餓死したカモシカはいないのか?」という質問に対し、管理ステーションのスタッフからは、「大人のカモシカは問題ないが、生まれたばかりの赤ちゃんの状況はあまり楽観できない」という答えが返ってきた。

仁増羅布さんはこの答えを聞いて胸が締め付けられる思いがした。そこでそれから数日間、カモシカたちの生存状況を確認するため、再び草原に出かけた。零下30-40度の気温が続き、草原に厚く積もった雪は溶ける気配もなく、カモシカたちの命は極端な気象現象により非常に大きな脅威にさらされていた。

「このままではだめだ!」と仁増羅布さんは密かに決意し、今まで誰も思いつかなかった「エサのデリバリー」を実行すると決めた。

まず飼料になる草をどこで調達するかという問題があった。同局の職員と一緒に牧草栽培を手がける合作社を訪れ、余った干し草を買い取った。チベットカモシカに与えるのだと知ると、合作社の人々は皆賛同してくれたという。

袋に詰めた干し草を管理ステーションまで運ぶ様子(撮影・仁増羅布)。

仁増羅布さんたちは干し草を袋詰めして大型トラックと小型ピックアップトラックに積み上げ、丸一日かけてチベットカモシカの生息地近くにある管理ステーションまで運んだ。

管理保護スタッフと同局のスタッフは最初、干し草の半分ほどを地面にどさっと置くだけだった。仁増羅布さんはそのときのことを振り返って、「誰もが初めての経験で、カモシカたちがありがたく受け取ってくれるかどうかなんて、誰もわからなかった」と笑いながら語った。

翌朝早く、草原に向かう仁増羅布さんは緊張の面持ちでドキドキしていた。草原に到着すると車から飛び降り、あちこちに置かれた干し草がどれくらい食べられているかをチェックした。幸い、干し草はほとんど食べられており、仁増羅布さんは、「こんなやり方だったが、効果があったんだ!」とホッと胸をなで下ろしたという。

管理保護スタッフがカモシカのためにエサを撒く様子(撮影・仁増羅布)。

それから2日間にわたり、カモシカたちが今年のとりわけ厳しい冬を越せるようにと願いながら、県のスタッフは広大な草原に草を撒き続けた。またその後半月にわたって10数トンの草を撒き、たくさんのカモシカがエサの不足する冬を無事過ごせるよう力を尽くしてサポートした。(編集KS)

「人民網日本語版」2022年3月7日

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