NATO拡大の背後にある「力は正義なり」の論理

人民網日本語版 2022年05月17日16:22

フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を申請するという決定を相次いで発表した。両国は今後数日中に正式に申請する可能性が高い。NATOの過去5回の東への拡大を踏まえると、今回の両国の加盟は6回目の東への拡大と言え、そして「北への拡大」とも言えるだろう。(文:王義桅・中国人民大学習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想研究院副院長、EU研究センター主任。環球時報掲載)

両国の加盟は、NATOあるいは米国に何をもたらすのか。地理的には、フィンランドはロシアと1300キロメートルにもわたり陸上国境を接している。フィンランドの加盟は、NATOのロシアとの陸上国境の総延長が2倍になることを意味するうえ、コラ半島やサンクトペテルブルクなどロシアの戦略要地や重要都市との距離が一層縮まることになる。これは同時に、北欧5ヶ国全てがNATOに加盟し、NATOのロシアに対する地政学的封じ込めが一層強化されることも意味する。

フィンランドの加盟は、NATOに多大な利益ももたらす。フィンランドは現役部隊の規模で欧州上位にあり、予備役も90万人いる。空軍はF18戦闘機などを保有しているうえ、近く最先端のF35にアップグレードする。その防衛システムは、NATOのシステムとの互換性が他の少なからぬ欧州諸国より高い。NATOに加盟することで、フィンランドはスカンジナビア諸国やバルト諸国と共に、より大きな対露抑止力を形成することとなる。

スウェーデンはかつての北方の強国であり、強大な革新的工業システムを持ち、軍需企業として名高いSAABも擁する。フィンランドとスウェーデンがNATOの北方防衛の最前線へと変わることで、武装が加速し、欧州の安全保障に対する米国の投入が減少することは間違いない。このため米国は、アジア太平洋地域へ、より注意を向けようとするかもしれない。実際、すでにNATOは中国に矛先を向けているのだ。

NATOは冷戦の産物であり、その再拡大は冷戦によって利益を得る「狂気の再来」と言えるだろう。NATOの最終目標は、ソ連を崩壊させたのに続いてロシアも崩壊させるだけではなく、ある意味において、経済グローバル化の拡大に「挫折」した西側文明が、安全保障を拡大することで「西側中心主義」の神話を書き続けようとするものでもある。敵を探し求め、脅威を作り、自分達と異なる者達をなくすことが、NATOの拡大論理である。拡大し、敵を作ることで合法性を追求するNATOは、本質的に「力は正義なり」の論理から抜け出していないのだ。(編集NA)

「人民網日本語版」2022年5月17日

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