新型コロナウイルスが流行する中、ヒト-ヒト感染の連鎖を効果的に遮断することがカギになる。そこで、ロボットが消毒清掃、薬や食事の配達、診療補助など「第一線の業務」を担うようになり、VR(仮想現実)不動産下見、オンライン娯楽、オンライン教育なども、人々が家から出られない中での必然的な選択肢になった。また無人工場や自動化生産ラインの構築に対するニーズがかつてないほど差し迫ったものになっている。
こうした「非接触式サービス」という変革の流れが、新たな経済モデルである「非接触式経済」を生み出した。
非接触式レストラン
最近、食品・飲料品ブランドがコラボレーションして初めて「非接触式レストラン」を打ち出した。業者が注文用のQRコードを店舗のドアやホールなどに表示し、消費者が携帯電話でコードを読み取って「非接触式注文」をする。厨房から注文されたメニューの詳しい情報と注文番号を作成する。料理ができるとスタッフが店舗の決まった場所に置き、消費者は送られてきた番号を元に料理を受け取る。すべての過程で人と人が接触することがない。
非接触式検温
北京市内の盒馬鮮生スーパーでは、店に入ろうとする客が電子スクリーンで「顔をスキャンする」と、リアルタイムで体温が表示される。感染症の流行中には、駅、空港、デパート、学校など人が集まる場所で、さまざま検温ロボットが「非接触式検温」をする様子が日常になった。
こうした検温はサーマルイメージング技術を利用したもので、人がカメラの撮影範囲に入れば、マスクをしていても正確に体温を検出する。こうした非接触式のサービスは人の流れが激しい場所での感染症対策のソリューションを提供するとともに、人による検温に潜む各種のリスクを効果的に防止することもできる。
非接触式宅配便
人々の日常生活になくてはならない宅配便の分野でも、「非接触式技術」が活躍する。
2月6日、京東物流グループが独自開発したスマート配達ロボットが武漢市の街中を駆け巡り、医療物資を武漢市第九病院に送り届けた。武漢だけでなく、長沙、貴陽、呼和浩特(フフホト)の京東スマート配達ステーションでも配達ロボットが周辺のコミュニティにサービスの提供を続けた。
京東物流の孔旗首席科学者(専門は自動運転)は、「配達員は標準プロセスに基づき、車両を消毒し、荷物を置き、スイッチを押して出発すると、車が自動的にショートメッセージ、音声通話を発信し、受取人に通知する。受取人が受け取り指定場所で荷物を受け取ると、自動的に次の受け取り指定場所に移動するか配送ステーションに戻る。人と車が共存する道路、信号のある交差点など複雑な場面ではレベル4以上の自動運転が可能だ」と説明した。
感染症が「非接触式」を発展の第5段階へ移行させる
中国自動化学会パターン認識・機械知能(MI)専門委員会の副事務局長を務める合肥工業大学の賈偉博士は、「『非接触式』というのは、人と人が接触しないこと、また人と具体的な物とが一定の距離を保ち、直接接触しないことを言う。『非接触式』は何も目新しいことではなく、1970年代から80年代にかけて誕生して現在に至り、これまで5つの発展段階を経てきた」と説明した。
賈氏は続けて、「2002年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)で1回目の『非接触式経済』のブームが来た。今年の新型コロナウイルスの流行で『非接触式サービス』と『非接触式経済』の発展が加速し、『非接触式』は5番目の重要な発展段階に突入した。今回の感染症の流行中に、『非接触式技術』の応用にいくつかの注目点が現れた。先ほど述べた『非接触式』の検温やロボットのほか、オンライン教育、テレワーク、ドローンの大規模な応用、オンラインボランティア診療、ゼロ接触エレベーターなどもあり、さらには『非接触式サービス』が高精度のライブ配信によって行われるケースもあり、たとえば火神山医院と雷神山医院の建設状況の『クラウド監督』がこれにあたる」と説明した。
中国の「非接触式経済」が世界に経験を提供する
感染症が世界で拡大する状況の中、中国の「非接触式経済」発展の成果と経験が世界でも認められている。
国連は3月末に米ニューヨーク本部で、騰訊(テンセント)とグローバルパートナーシップを結んだ。騰訊は国連75周年式典へ全面的な技術プランを提供し、騰訊会議(テンセントミーティング)、企業微信(Enterprise Wechat)、騰訊同伝(同時通訳サービス)を通じて数千回の会議・イベントをオンラインで開催する。世界規模の感染症と闘うため、騰訊会議は国際版アプリ「VooV Meeting」を開発・リリースしており、利用範囲は100ヶ国・地域を超えた。
「非接触式技術」は政府の計画における重点の1つになりつつある。このほど上海市はオンライン経済、おうち経済、「非接触式経済」など新経済・新産業の発展加速を打ち出した。安徽省もオンライン経済、おうち経済、「非接触式経済」などの新経済・新産業を積極的に発展させ、新たな成長源を育成することを打ち出した。
たとえば上海GM金橋工場の無人作業現場は感染症の流行中に「無照明工場」、「スマート物流」などのスマート製造手段を駆使し、「非接触式製造」を実現した。無人の生産ラインは途切れることなく、感染症対策と同時に、安定した高効率の生産を守った。
大規模な実現は技術の恩恵と切り離せない
感染症が収束した後も、「非接触式」は十分に実施され、経済発展を促進できるだろうか。賈氏は、「『非接触式』サービスに向けた人工知能(AI)技術を加速するには、まずAIの感度をさらに上げ、次にはよりよいAIのアルゴリズムが必要で、さらにAI技術の応用・イノベーションを強化することが必要だ。現在、中国では『非接触式』が十分に重視されているとは言えず、国や業界の発展計画、標準規範はなく、技術の成熟度の向上が必要で、現在のデジタル経済のインフラでは応用ニーズに十分に応えることができない。そのため十分に応用しようと思えばある程度の挑戦に直面することになる」と述べた。
5Gの商用化がさらに進むにつれ、AIの3Dセンシング技術の機能と規模が全面的に爆発的に成長するとみられる。業界では、5G商用化、AI技術の成熟、政策によるバックアップなどの好材料により、2020年に新型肺炎によって広まった「非接触式サービス」が及ぼす影響は、2003年のSARS流行時より広範囲にわたり、かつ強いものになる、との見方が広がっている。
佳都科技の劉斌副社長(兼商用スマート製品事業部ゼネラルマネージャー)は、「現在、5G、AI、モノのインターネット(IoT)などの技術が急速に発展し、『新インフラ』の台頭が産業のデジタル化へのモデル転換・高度化を加速し、『非接触式経済』により大きな発展の可能性をもたらした。『非接触式経済』の発展を楽観視しており、新たな社会の形になる可能性が高いと考えている」と述べた。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2020年4月22日