11月5日から10日にかけて、上海では第4回国際輸入博覧会(以下、輸入博)が開催されている。北海道は4年連続で輸入博に出展しているだけでなく、今年4月にはライフスタイル体験店「匠の饗宴」を上海市と浙江省杭州市にオープンさせることで、輸入博の成果を実体店という形にしてみせた。ECコマースが目覚ましい発展を遂げている現在の中国で実体店をオープンさせた理由とは?輸入博で得られた最大の収穫とは?人民網では北海道のこの4年間の歩みと今後の取り組みなどについて、日中経済協会上海事務所北海道経済交流室の早田武志室長と、北海道の出展業務を受託する株式会社フォレストリの森はるか代表にインタビューを行った。
来場者の対応を行う日中経済協会上海事務所北海道経済交流室の早田武志室長(撮影・張麗婭)。
ーー北海道は「匠の饗宴」というスタイルで今年で4回目の輸入博出展となるが、これまで得られた最大の収穫とは?
【日中経済協会上海事務所北海道経済交流室 早田武志室長】
中国で最大規模を誇る輸入博は、北海道の優れた食品の魅力を直接PRする場として、極めて重要な機会と捉えている。昨年の第3回輸入博では、商談を通じて北は黒竜江省哈爾浜(ハルビン)の百貨店から、南は広東省広州市のホテルまで、中国各地における北海道物産フェアを実現させた。そして最大の収穫となっているのが、輸入博を通じて中国の極めて幅広い消費者に北海道の食品に興味を抱いてもらえたことだろう。また中国全土の有力バイヤーが数多く来場するため、道産食品の販路拡大に向けた多数の商談機会が創出されたことが挙げられる。
【株式会社フォレストリ 森はるか代表】
これまで輸入博に「匠の饗宴」として連続出展し、北海道産食品を中心に展開してきたことが、ブランドイメージの構築に非常に効果があったと感じている。今年4月からは、北海道産食品を主な材料とした料理や弁当を体験できるライフスタイル体験店「匠の饗宴」を4店開店し、これらの店舗で、北海道で焙煎したコーヒーの提供や様々な北海道産食品の販売も行っている。その多くが輸入博で紹介した商品となっている。このように輸入博への出展経験が、日常の店舗運営のノウハウに、そして商品ラインナップの拡大に直結している。
ーーライフスタイル体験店「匠の饗宴」の経営状況は?また、こうした体験スタイルの店舗をオープンさせた理由とは?
【森代表】
今年4月に上海市内にオープンした旗艦店をはじめ、現在4店舗を展開し、弁当やコーヒーを中心に人気は上々で、北海道産食品ファンを日々増やしている。
実体店をオープンさせた理由は、輸入博への連続出展を通じて北海道産品の中国市場販路開拓にこれまで挑戦してきたが、その中で中国の消費者に購入してもらうためには商品のおいしさや使い方などを理解してもらうことが何より重要であるとの経験を得た。そしてそのためのショールームとして、体験スタイルの実体店が最適という考えに至った。
札幌会場で輸入博の来場者の声を聞くベル食品(株)の福島和人課長代理(写真提供・日中経済協会上海事務所北海道経済交流室)。
タマゴボーロ菓子を試食する来場者にオンライン越境インタビューを行う様子(写真提供・日中経済協会上海事務所北海道経済交流室)。
ーー今年の第4回輸入博の見どころは?
【早田室長】
北海道は日本の地方自治体としては唯一、単独ブースで出展し、約50社の220品目を紹介している。今年は新たに水産品コーナーを設け、米と日本酒、菓子、調味料・加工品、水産品の5つのコーナーで、水産品と日本酒、米とコロッケ、スイーツとコーヒーといった北海道産品をセットにした試食を提案し、北海道の食の楽しみ方を発信している。
また、北海道からのオンラインヒアリングを実施し、会場に行くことができない北海道企業にとって、中国での販路拡大に向けたヒントとなるよう微信(WeChat)のビデオ通話機能を活用し、会場にいるバイヤーに対して試食を提供したタイミングで、札幌会場の企業がリアルタイムでヒアリングを実施。会場での試食とオンラインヒアリングの連動性を強化している。
今回初めて出展された北海道の水産品を加工した商品(撮影・張麗婭)。
ーー北海道の中国市場における今後の取り組みは?
【早田室長】
中国は北海道にとって貿易額で1位、新型コロナ前の2019年は観光客数も1位となっており、非常に重要なパートナーだ。
新型コロナの影響で人の往来は制限されているが、各国の経済活動は正常化に向かっており、特に中国国内の経済活動はコロナ前の規模を上回っていると認識している。さらに世界的なデジタル経済の拡大に伴いEC市場がさらに拡大するなど、新型コロナを契機として、新たな商機が生まれているため、中国市場進出の取り組みをストップさせないことが重要だ。これまでありがたいことに、非常に多くの中国人観光客が北海道を訪れ、特色ある大自然とその豊かな自然が育む美味しい食品を味わってくれた。現時点では、渡航制限から以前のように北海道を訪れてもらうことができず残念だが、北海道の美味しい食品を中国に届けることは可能であり、往来ができないからこそ、各方面の協力を得ながら、北海道産食品を輸出し、中国の消費者に紹介することに全力を挙げて取り組みたいと考えている。
具体的には、オフラインでは、今回の第4回輸入博の出展成果を最大化させるため、来場バイヤーとの商談の早期成約を目指すほか、北海道物産フェアの開催など、中国現地に拠点を有するパートナーと連携したイベントを連続して展開していく。またオンラインでは、すでに世界的に標準化したと言っても過言ではない「リモート商談」を、北海道の企業も積極的に活用するよう促し、新たな販路開拓につなげたいと考えている。同時にオンライン販売サイトでの販売についても、商品数やチャンネルとも強化していく考えだ。
このように北海道における成果や取り組みを見ていくと、輸入博は出展者に単に商品を展示し、バイヤーに向けて販売するための場を提供しているだけでなく、その先につながるビジネスチャンスをも提供していることがわかる。新型コロナ感染症の影響が続く中、今後もこうしたオンラインとオフラインを連動させた取り組みが続いていくことになるだろう(文・玄番登史江)。
「人民網日本語版」2021年11月9日