動画サイト「bilibili」(ビリビリ)でこのほど注目を集めた若者の生活を伝える動画を見ると、若者には「サーキットレース、スカイダイビング、本格的な写真撮影、ダイビング……」といったこだわりを示す一面もあれば、「深夜まで夜更かしし、最も高いサプリを飲みながら、定期健診では毎回何もありませんようにとビクビクしている」という一面もあった。一体、中国の若者には「いくつの顔」があるのだろうか。
実際的
今の若者はスカイダイビングで世界のあちこちに出かけながら、お金を稼ぐことにも関心があり、古風でもあれば現代的でもあるなど、変化に富んだ世代だといえる。
百度(バイドゥ)の「五四青年節(5月4日の青年の日)検索ビッグデータ」によると、若者はよく言われるように「娯楽に熱狂する」だけでなく、経済関連コンテンツへの注目度が高く、「株のやり方」や「今何に投資したら儲かるか」、「2020年の不動産価格の動き」といった「俗っぽい」キーワードにも注目している。
過去90日間に、00後(2000年代生まれ)は起業や経済的自由をより熱心に検索しており、各年代の中でトップだった。「パートナー制度はどうか」についても踏み込んで検索しようとしていた。
別の一面もある。00後はさまざまなレシピを熱心に検索し、どれも注目度が上昇した。80後(1980年代生まれ)や70後(1970年代生まれ)が主に鶏肉のカシューナッツ炒めや紅焼肉(豚三枚肉の煮込み)といった料理の作り方に注目していたのに対し、00後はもっと簡単な「玉子チャーハン」の作り方を熱心に調べていた。また湖北省商品の団体購入には年代による目立った違いはなく、どの世代も「湖北省のためなら太っても構わない」という「手切族」(ネット通販で過剰な衝動買いをしてしまう人々)になっていた。
理想
多くの人は無意識のうちに、スターを追いかける若者が科学者を崇拝するはずがないと考える。しかし検索ビッグデータ報告をみると、(スターの)華晨宇や楊■(幕のくさかんむりがわかんむり)の人気が高いのはもちろんだが、90後(1990年代生まれ)と00後は鍾南山、李蘭娟、袁隆平といった「実力派」の院士(アカデミー会員)に対しても熱心に検索し、その検索件数の急速な増加はスターを超えるほどだ。
90後と00後が人生で追い求めるのは単に楽しむことだけではなく、彼らはそれぞれ理想や抱負を抱いている。新型コロナウイルス感染症が発生してから、00後はそれまで人気の専攻だった金融より、医学に一層注目するようになった。百度の検索ビッグデータでは、過去約90日間に、00後の「医学系大学ランキング」の検索件数は前年同期比で182%増加した。
人文分野への関心
過去約90日間、「ボランティアサービス」の検索件数では90後が最も多く、00後がこれに続いた。同じように、百度知道で「ボランティア募集」の話題に関心を寄せた人を年代別にみると、90後が47%とほぼ半数を占め、次は00後の25%だった。
検索ビッグデータ報告では、「野生動物保護」、「公衆衛生管理」などの検索件数で、00後と90後が80後、80前(1980年以前生まれ)を著しく上回った。
死ぬのは怖いけど生活は気まま
肥満や脱毛を気にし、夜更かしすると体に悪いのではと心配するというように、若者は健康に心を砕く。サプリや育毛剤を好み、モグサのお灸パッドを愛用し、いろいろな健診やワクチンを受ける。感染症の流行中には、マスクやアルコールを買い占めるなど、若者は「何をやってもダメ。とにかく死ぬのが一番恐い」と自嘲する。
「今の若い人はものすごく死ぬのを怖がっている」と話す浙江省杭州市の杭州市中医院皮膚科の陶承軍主任医師は、たくさんの若い患者を受け持つ。「若い人たちは自分の健康を非常に重視しているように思う。20代の女性は肌に小さなほくろを見つけ、メラノーマか皮膚がんではないかと心配してパニック状態になった。20代の男性は髪の毛が20-30本抜けたのに気づき、心配でじっとしていられなくなって受診し、髪が全部抜けてしまうのではないかと言っていた」という。
では、死ぬのを怖がっている若者は健康的な生活を送っているのか。
陶氏が挙げる実例をみると、答えはノーだ。「多くの若い患者は日光皮膚炎(日焼け)で受診する。日に当たらないようにして、出かける時は日よけに注意するように言うが、ちゃんとできる人は非常に少ない。また日に当たって悪化し、病院に来ることを繰り返し、病院に来ると気がせいてすぐに薬で治そうとする。でもいったん落ち着くと、また注意しなくなる」。
華燕吟医師も「自己矛盾」している若い患者を診察したことがあるという。華医師は、「昼ご飯に代替食やダイエット食を食べ、食べ終わると水晶餅やお焦げ風揚げ煎餅などの高カロリーのおやつを食べる」と言う。
責任を引き受ける
若い人にはよく「仏系(仏のように物事に拘泥しない人々を指す)」とか「小確幸」(小さくても確かな幸せ)、「二次元」といったレッテルが貼られ、親の目からみれば子どもだ。しかし感染症に直面して、若者は親しい人に別れを告げ、「戦闘服」に身を包み、自分に与えられた責任を勇敢に引き受けた。
新型肺炎が猛威を振るっていた頃、武漢に支援に赴いた医療従事者4万人あまりのうち、1万人以上が90後以降の若い世代で、うち95後、00後が相当な数を占めた。「感染症の中で、90後と00後が急に成長したことに気づいた」と感慨深く語る人もいる。しかし本当のところ彼らは突然成長したのではなく、多くの人が彼らを十分に理解していなかっただけだ。感染症期間中に「現場ライブ配信」のように彼らの様子が伝えられたことで、凝り固まった偏見が払拭された。
現実的
90後、00後の多くは生活に直面してもいる。学校を出たばかりの新入社員で、給料は少なく、何でもやらされる。毎朝早くに満員の地下鉄に乗り、夜は残業で996(朝9時から夜9時まで週6日間働く)の日々を送る。彼らは自分たちのことを自嘲気味に「社畜」と呼ぶ。
若者には学業でもプレッシャーにさらされ、仕事では大変な思いをし、住宅価格という難題にも直面する。いつも生きるために心を砕き、力を尽くすが、得られるものはわずかだ。
若者は一見、一日中笑顔を絶やさず、何でも笑い飛ばしているように見えるが、これは何でも順調だからではなく、問題に向き合う勇気があり、うまくいかないことを上手に忘れることができ、喜びを大切にする賢明さを備えているからに他ならない。
若者は自分の置かれた立場で真剣に毎日を暮らし、日々努力し、努力を続ける。それほどきらびやかではないが、苦労を重ねながら価値を生み出していく。
人というものはある時代やある層にレッテルを貼りがちだが、今の若者も普通の人として普通の生活を送っている。その「普通」が少し若者仕様になっただけだ。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2020年6月5日