米国はこのところ、中国・世界保健機関(WHO)新型コロナウイルス起源合同調査報告書が示した科学的で権威ある結論を公然と覆し、「研究所流出説」を大いに煽り立て、バイデン大統領に至っては情報機関に新型コロナウイルスの起源について調査するよう命じさえした。世界が協力して新型コロナウイルスと闘っている重要な時期に、米国はなぜ新型コロナウイルス起源解明の政治化に固執するのか?米国によるウイルス起源解明政治化は、世界の新型コロナウイルスとの闘いの大局にどのような影響をもたらすのだろうか?こうした点について人民網は、日本の著名な国際政治経済学者で、前参議院議員、元外務大臣政務官の浜田和幸氏を取材した。人民網が伝えた。
科学と事実を顧みず、ウイルス起源解明の政治化を強行する米国のやり方について、浜田氏は、「バイデン大統領が5月、情報機関に対して90日と期限を設けて、新型コロナウイルスの発生起源について調査報告を命じたのは、世界最悪の感染症患者や死者が収まらないために支持率が急落を遂げているせいだ。起死回生を狙っての『中国責任論』を立証しようとするものに違いない」とし、「米国は国内の情報機関のみに対してウイルスの起源について調査を命じており、明らかに医学的見地からではなく、地政学的な見地から『責任の所在をアメリカから中国へ押し付けようとする』魂胆が見え見えだ」と指摘した。
浜田氏は、「新たなウイルスの起源解明には長い時間と膨大な資源が必要になる」と指摘し、「米国による情報機関を動員しての90日という短期間でのウイルス起源解明の動きは国際社会、特に医学、医療関係者を納得させるような結果をもたらすとは到底思えない」との見方を示した。そのうえで、「本当にウイルスの起源を解明しようとするのであれば、医学、特に細菌学の専門家による国際的な連携を図るべきだ」と述べた。
また浜田氏は、「そもそも、第1段階の調査には欧米の専門家も参加しており、その報告書によれば、武漢のウイルス研究所からウイルスが流出した可能性は『極めて低い』とされていた」と指摘した。しかし米国はそれを尊重しなかったばかりか、情報機関に再調査を命じた。これについて浜田氏は、「『中国責任論』を補強するための対外情報工作の一環として、『コロナ起源解明』という作戦を思いついたのだろう」との見方を示した。
浜田氏は、「こうしたアメリカ政府の進める『コロナ起源解明の政治化』に対しては、100ヶ国以上の政治、経済、社会団体や研究機関が反対の意思表示を行っている。コロナウイルスの起源を明らかにするのは科学者や医学関係者の仕事であって、情報機関に委ねるべき任務ではないということだ。現在では、中国の武漢で発生する以前にヨーロッパの一部で新型コロナウイルスの感染者が出ていたことも明らかになっている。そうした状況を考慮しても、その起源解明や今後の対策に関して言えば、中国はもとより世界各国の協力が不可欠のはず」と指摘した。
ジョンズ・ホプキンス大学の統計データによると、北京時間2021年8月22日の時点で、米国の新型コロナウイルス感染者数は累計で3770万人を超え、死者数は累計62万人を上回っている。これほど深刻な感染状況を前にしても、米国は感染症対策のために積極的な役割を果たせていないどころか、かえって科学者らの正義の声を絶えず抑え込み、立場を貫いている多くの科学者が個人攻撃される事態となっている。これについて浜田氏は、「米国は表向き『自由と民主主義を守る』と宣伝しているが、コロナウイルスの起源やワクチンの効果については、自由で科学的な議論や研究をことあるごとに抑圧している。政府や大手ワクチン製造会社にとって不都合な情報や意見を次々にネット上から削除している。また、政府の見解に反する意見を述べる研究者や専門家に対しては個人攻撃や脅迫めいた圧力も日常茶飯事だ。米国で広がる『ウイルスの中国起源説』は在米の中国人にとどまらず、日本人を含むアジア系に対する差別や偏見を助長し、暴力事件にも発展している」と指摘。「こうした自由な議論を抑圧するような動きが続けば、米国はますます分断が進むだろう」との見方を示した。(編集AK)
「人民網日本語版」2021年8月25日