次第に暖かさが増すにつれ、この時期は「春眠暁を覚えず」という漢詩の一節にもあるように、ついつい心地よくウトウトしてしまいがち。だが中国では近年、睡眠障害に関するニュースをこの時期よく見かけるようになっている。その理由の一つは2001年に国際精神衛生・神経科学基金会が定め、2003年から中国睡眠研究会が中国に紹介した3月21日の「世界睡眠デー」に、睡眠に関するデータの発表やイベントが行われるため。そしてもう一つは、中国の若者たちの間に広がる不眠が注目を集めているからだ。今回はそんな中国における睡眠事情を紹介していこう。人民網が伝えた。
中国の若者に広がる不眠
中国睡眠研究会のデータは、2021年に中国で睡眠障害を抱える人の数は3億人を超えたとしており、そのうち成人における不眠の発生率は38.2%に達している。また中国のデータ分析機関によると、不眠に悩んでいる人の学歴は大卒が約6割。そして主に経済が発展している一、二線都市に住んでいる22歳~40歳の成人としている。このように、大都市に住む学歴の比較的高い若者の間で不眠が広がりを見せていることが見てとれる。
その睡眠の質に影響を与えている要因を見てみると、スマホを始めとする電子機器が手放せなくなっている生活習慣のほか、社会や経済が発展することでますます厳しくなっている各種の競争からのストレス、人間関係など実に様々。しかもいずれの要因もそう簡単に改善できるものではないので、自然と要因そのものよりも、安眠グッズなどの快適度を高める方に目が向けられるようになっている。
睡眠経済のパワーと今後の見通し
睡眠障害を抱える3億人が安眠グッズを購入したら?と考えれば、「睡眠経済」というワードで表現することができるレベルの経済活動が行われていることは想像に難くない。中国において「睡眠」という業界やニーズが注目され始めてからの歴史は浅いものの、2016年から2020年のわずか4年の間に、その市場規模は44.42%増の2616億3千万元(1元は約18.6円)から3778億6千万元という急速な発展を遂げている。また生活リズムが速く、仕事のストレスが増大化している現在の中国では、睡眠障害の「主力」の若年化が進んでいるのと同時に、その消費もグレードアップし続けていることから、今後も「睡眠経済」の市場規模は引き続き成長し続けるとみられている。
中国で人気の安眠グッズは?
現在人気を集める安眠グッズは大きく分けて薬、アプリ、グッズの3種類。薬はいわゆる処方箋も必要とするような睡眠薬から、睡眠補助サプリメントなど。ちょっと変わったところでは、へそのツボに貼るタイプの中医薬や頭のツボを温めるお灸などもあり、いかにも中国な感じがする。
アプリは無料のものから有料のものまであるが、安眠効果のある音楽やホワイトノイズ、そしてアイドルが音声で寝かしつけてくれるといったものまである。イケボイスだったら、眠りに落ちるどころか、かえって目が冴えちゃいそう!と、ちょっと期待に胸を躍らせ、ダウンロードしてみたものの、それほどのイケボイスには出会えなかった…。
そして最後は安眠グッズ。これは実に幅広く、抱き枕や枕、マットレスなどの寝具から、アイマスク、手に握るだけでストレス解消にもなるハイテクグッズなど。値段もピンキリで効果のほどはわからないが、市場には様々な安眠グッズが溢れていた。
昨年4月に抜け毛をテーマにした記事を書いた際にも感じたことだが、中国の若者たちのストレスフルな日常に同情を覚えると同時に、そこから生じる旺盛な購買力には感嘆せざるを得ない。眠れなくても、髪が寂しくても、日々頑張っている中国の若者たちの前向きな姿に私もちょっと力づけられた。(文・イラスト・玄番登史江、袁蒙)。
イラストで知ろう!イマドキ中国
人民網ではもっと身近なスタイルで今どきの中国を読者の皆さんに知ってもらうため、「つるにはまるまるむし爺さん」と「へのへのもへ郎」、「へめへめくつ美」の3人が流行語やカルチャー、時事問題など幅広いジャンルにおける「イマドキ」を紹介。中国ってこんな国なんだ!と興味を抱き、理解を深めるきっかけにしてみてください。
「人民網日本語版」2022年3月21日