【国際観察】NATOの東への拡大が欧州安全保障の悲劇の根源

人民網日本語版 2022年04月19日15:05

ロシア・ウクライナ紛争の勃発以来、西側全体が「共通の敵への憤怒」という感情的高まりと「同盟の復活」という勝利の雰囲気に浸っている。3年前にはマクロン仏大統領に「脳死」と呼ばれたNATOが、一夜にして若返りの妙薬を探し当て、ピントのぼけた戦略と内輪もめという宿痾が癒えたかのようだが、本当にそうだろうか?(文:康傑・中国国際問題研究院ユーラシア研究所副研究員)

冷戦後の米露欧関係とNATOの東への拡大の歴史を振り返って初めて、現在の欧州の安全保障の悲劇の根本的原因を理解し、欧州と世界の安全保障の将来の方向を正しく展望することが可能となる。

米露欧の関係は、フリーフォールのように急激に悪化したのではなく、下方スパイラルのように今日の状態にまで悪化した。米国は、真に完全で不可分の欧州安全保障システムを構築する機会を一度ならず「逸してきた」。なぜ、米国は「機会を逸してきた」のか? 結局のところ、冷戦後のNATOの東への拡大の根本的原動力は、中・東欧諸国の安全保障上の必要性ではなく、いわゆる自由民主主義政体と新自由主義経済システムを拡大して、自らの世界覇権を固めようとする米国の政治的衝動にあったのである。クリントン時代からNATOの東への拡大の理論的根拠となった「民主的平和論」は、カーター、レーガン時代からの東欧に対する「和平演変」(社会主義体制の平和的手段による崩壊)という米国の政治戦略の論理的延長線上にあるに過ぎない。

冷戦後、NATOは安全保障上の必要性をイデオロギー上の必要性に置き換え、欧州の長期的安全保障を犠牲にして「自由民主主義を強固にし、広め」、ロシアにとって譲れない一線を幾度も越え、ロシアの周辺や核心的利益に関わる地域において「カラー革命」を幾度も策動し、NATO加盟基準を全く満たさぬ国々にまで実現できない加盟約束をした。そして最終的に、ロシア・ウクライナ紛争の悲劇を引き起こしただけでなく、全欧州と他の地域を制裁戦や金融戦に引きずり込み、全世界をエネルギー・食糧安全保障の連鎖的リスクにさらしたのだ。

NATOの拡大は、単なる地政学的拡大では断じてなく、同盟の目標と戦略的手段の拡大でもある。軍事同盟の地理的・質的拡大は、競争相手との間の安全保障のジレンマを不可避的に増大させる。米国の政治エリートは、「ロシアへの刺激を自制し、避けるように」という専門家の声に耳を傾けず、一方ではNATOを域外への武力介入の道具とし、バルカン、中東、アフガニスタンで同盟国を米国の従者にし、ユーラシアの内陸部と周縁部への覇権拡大を企て、もう一方ではNATOの東側の国々にミサイル防衛システムを積極的に配備して、地域と世界の戦略的安定性を損なってきた。

NATO加盟によって自国の安全を確保しようとする国々は、最終的に同盟政治と安全保障のジレンマに陥る。NATOに傾斜するほど、自国の安全保障環境は悪化し、安全性が下がるほど、NATOという戦車に縛られ続けるしかなくなるのである。欧州の一部の国々が、制裁、インフレ、軍事費の増大という代償に耐えながら、逆に「安全保障を強化してくれた」とNATOに感謝していることが、こうした状況をありありと示している。イデオロギー的対立やブロック対立の論理から脱却し、幻の道徳的優位性や絶対的安全保障の追求を放棄して初めて、全ての人々に普遍的な安全、平和、繁栄をもたらすことができるのだ。

NATO内の構造的矛盾が、対露制裁で示した短期的な結束力によって解消したわけではない。制裁の長期化、難民問題、インフレ危機、景気後退などの圧力が激化するに従い、地政学的リソースや産業構造の異なる加盟国の間に「苦しみの偏在」という相対的被剥奪感が生まれる。そして、いわゆる「中国の脅威」「中露枢軸」をでっち上げ、NATOの焦点をロシア封じ込めから中国封じ込めへとシフトする米国の近年の企ては、なおさらに、欧州の多くの国々が中米間の陣営選択を望んでいないという事実を無視し、NATO内の亀裂を拡大させるものである。(編集NA)

「人民網日本語版」2022年4月19日

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