5月10日、国家発展改革委員会は「第14次五カ年計画バイオエコノミー発展計画」を発表して、国のバイオテクノロジー戦略の科学技術力を構築し、バイオテクノロジー発展のボトルネックのブレークスルーを加速し、科学技術の自立自強を実現するとの方針を明確に打ち出した。同時に、第14次五カ年計画期間にバイオエコノミーの付加価値額が国内総生産(GDP)に占める割合を安定的に上昇させることを要求しただけでなく、年間の売上高が100億元(1元は約18.9円)を超える企業の数を大幅に増やす方針も打ち出した。
これからの5年間で、バイオエコノミーは注目分野になるだろうか。
バイオエコノミーとは何か?
バイオエコノミーとは、生命科学、バイオテクノロジーの発展・進歩、普及・応用を基礎とした新しい経済の形態で、国民経済の重要な構成部分でもある。
全体的に言えば、バイオテクノロジーを運用して各種のバイオマス(生物資源)を開発・利用することはいずれもバイオエコノミーの範疇に入り、具体的には肉類・家禽類・卵類・乳製品、穀物、野菜、食用キノコなど、亜麻や生糸などの材料で作られた衣類、遠隔診断に用いられるスマートウェアラブル製品などが含まれる。
バイオエコノミー発展の重要な意義は?
現在、ヘルスケアの分野は、新たな科学技術革命と産業変革において革命的なブレークスルーを実現する可能性が最も高い重点分野の1つであるとみられている。新型コロナウイルス感染症の打撃と影響を受けて、主要国の政府と各大手バイオ医薬品メーカーがそろってバイオセーフティーやワクチン、医薬品の研究開発などへの投資を拡大しており、客観的な意味でバイオエコノミーが加速的発展段階へ進むことを促している。
世界の中でバイオマスが非常に豊富な国の1つである中国は、バイオ産業の種類がそろい、体系が整い、バイオエコノミーを加速的に発展させる有利な条件は備わっているものの、発展のグランドデザインと統一的な計画はまだ空白の状態にある。
同委イノベーション・ハイテク発展司(局)の王翔副司長(局長)は、「この計画は、バイオエコノミーの供給側と需要側が協調的に発展し、バイオマスの保護、開発、配置、使用を基礎として、生命科学とバイオテクノロジーが国民経済における医薬品、ヘルスケア、農業、エネルギー、環境保護などの分野へ広く浸透するよう体系的に推進し、現代型バイオ産業体制の構築を加速させ、バイオエコノミーの急速で健全な発展に向けて着実な基礎固めをすることを重視している」と説明した。
バイオエコノミーの発展目標
同計画は、2025年にはバイオエコノミーが質の高い発展を推進する強靱な原動力になり、バイオエコノミーの全体的規模とバイオテクノロジーの総合力が新たな段階に進み、バイオ産業の融合発展が新たな飛躍を遂げ、バイオセーフティーの保障能力が新たな水準に到達し、バイオ分野の政策環境が新たな局面を切り開くことを目指すという目標を明確にした。
また2035年までには、社会主義現代化を基本的に実現するとの要求を踏まえ、中国のバイオエコノミーの総合力が世界のトップクラスの座をキープし、トップレベルの技術水準、充実した産業力、幅広い融合応用、力強い資源保障、コントロール可能な安全リスク、整った制度体系を基本的に実現することを目指すとした。
利益を受ける分野とは?
業界専門家の説明によると、この計画は中国初のバイオエコノミーの五カ年計画であり、バイオエコノミーが今や新しい経済形態の1つになったことを示しており、人々の「衣」、「食」、「美(素晴らしい生活)」、「安(安全)」に直接寄与するバイオ経済が今後爆発的な成長を遂げ続けることが予想されるという。
バイオテクノロジーとバイオマスはバイオエコノミーの中核的要素であり、将来のバイオエコノミーにおいては、バイオ医薬品、バイオ農業、グリーン・低炭素のバイオマスによる代替、バイオセーフティーのリスク対策・ガバナンスシステムの4大分野が重点的に発展するとみられ、発展の可能性は非常に大きい。
同計画は具体的に次の内容を打ち出した。
(1)「病気の治療が中心」から「健康が中心」へと転換する新たなトレンドに従って、国民のヘルスケアのためのバイオ医薬品を発展させる。遺伝子検査、バイオ遺伝学などの先進技術と疾病の予防との深いレベルでの融合を推進し、ワクチンの研究開発製造技術の世代交代と高度化を加速させ、疾病の早期発見・予防をサポートする。バイオテクノロジーと精密機械、新型材料、付加製造などの最先端技術との融合・イノベーションを推進し、疾病の診断能力を向上させる。ゲノムの編集、マイクロ流体チップ、細胞の自動培養などの先端技術とバイオ医薬品の研究開発との融合を推進し、臨床医療の水準を引き上げる。
(2)「衣食問題の解決」から「栄養と多様化」へと転換する新たなトレンドに従って、農業現代化のためのバイオ農業を発展させる。全ゲノムシーケンシング、システム生物学、人工知能(AI)などの生物育種技術を秩序よく発展させ、穀物などの重要な農産物の生産力と品質を高める。グリーン農業を発展させ、最先端のバイオテクノロジーが農業分野に融合するよう促進し、中国の農業生産の効率を高める。
(3)「生産能力と生産効率の追求」から「生態環境の優先を堅持」へと転換する新たなトレンドに従って、グリーン・低炭素のためのバイオマスによる代替・応用を発展させる。高性能の生物由来環境保護材料と生物学的製剤、機能型微生物、酵素製剤を発展させ、環境保護と汚染対策をサポートする。新型のバイオマスエネルギー技術の研究開発と育成を展開し、化石エネルギーからグリーン・低炭素・再生可能エネルギーへの転換を推進する。
(4)「受け身の防御」から「主体的な保障」へと転換する新たなトレンドに従って、国のバイオセーフティーのリスク対策・ガバナンス体制の構築を強化する。AI技術、生物医学、健康のビッグデータ資源を活用して、スマート化された決定サポートによるナレッジモデリングとアルゴリズムを発展させ、個性化した新薬の研究開発をサポートする。5G、ブロックチェーン、モノのインターネット(IoT)などの先端技術を利用して、医薬品・ワクチンの製造から使用に至る全ライフサイクルの管理を実現する。
バイオエコノミーをどのように発展させる?
この計画は、「イノベーションによる駆動を堅持する」ことを第14次五カ年計画におけるバイオエコノミー発展の5つの原則の筆頭に置き、バイオエコノミーのイノベーション能力を複数の面から計画・配置し引き上げようとしている。重点分野に照準を合わせて国の重要科学技術プロジェクトと重点研究開発計画を実施し、リードする役割を担う国の重要科学技術インフラを先取りして計画・配置し、バイオ分野の国家戦略における科学技術力を構築することを打ち出すとともに、企業のイノベーション主体としての役割を強化し、リーディングカンパニーが牽引とサポートの役割を発揮し、細分化された分野での個別項目におけるチャンピオン企業を育成し、リーディングカンパニーが先頭に立ってイノベーション連合体を構築することを支援するよう求めてもいる。
ここ数年、バイオ分野が人気の投資先になり、ハイテク企業向けの株式市場「科創板」に上場する企業の中でバイオ関連が3分の1に達した。第13次五カ年計画期間(2016-20年)には、一定規模以上の医薬品企業(年売上高2000万元以上の企業)の研究開発投資年平均増加率は約8%だった。また、バイオ製造の規模がさらに拡大し、現代のバイオ技術を駆使した発酵製品で中国は世界シェアの70%以上を占めている。
中国のバイオエコノミーは科学技術のブレークスルーを次々と達成し、産業のイノベーションも活発な状態が続いている。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2022年5月17日