「健康中国」や「国民健康づくり計画」を国家戦略とする中国では、高齢者ケアに対する関心もますます高まっている。今年の第5回中国国際輸入博覧会(以下、輸入博)でも、日本貿易振興機構(JETRO)が展開するジャパン・パビリオンの医療機器・医薬保健分野で、介護用品の体験コーナーを設ける取り組みが行われている。今回はその体験エリアに出展する株式会社ヤマシタの中国現地法人・山下福至(上海)健康管理有限公司の横山輝総経理に輸入博出展と中国における事業展開などについて、インタビューを行った。
輸入博の介護用品体験コーナー(写真提供・ジェトロ)。
輸入博は「中国が世界市場に開放する積極的で重大な活動」
株式会社ヤマシタは、2020年1月に上海で日中合弁会社の「山下福至(上海)健康管理有限公司」を設立したが、事業の立ち上げとコロナの影響などから、輸入博への出展は今回が初めてとなる。今回の初出展について、横山総経理は、「輸入博は中国が世界市場に開放する積極的で重大な活動。中国の高齢化は急速に進んでおり、介護制度の確立や介護サービスの充実、介護人材の育成などが課題として挙げられている。また中国の高齢者人口は巨大な市場なので、介護技術の先進国ともいえる日本が、積極的に中国の介護市場へ参入し、ウィンウィンの関係を築いていければと思っている」とその意気込みを語った。
輸入博のジャパン・パビリオンに設けられた介護用具体験コーナーで車椅子の使用方法をデモンストレーションする様子(写真提供・ジェトロ)。
来場者が「目で見て、手で触って、体で体験する」空間づくり
今回、同社は日本の介護用品メーカー十数社の展示協力のもと、ジャパン・パビリオンに介護用品の総合展示ブースを設け、介護ベッドや車いす、排泄・入浴用品、生活用品、住宅改修など介護全般に関わる製品を実際に体験できるコーナーを設けている。横山総経理によると、来場者が「目で見て、手で触って、体で体験する」ことを通じて、日本の介護製品やサービスを中国の政府関係者やユーザーにアピールするのだという。
輸入博のジャパン・パビリオンに設けられた介護用具体験コーナーで介護ベッドの使用方法をデモンストレーションする様子(写真提供・ジェトロ)。
介護の認知度や重視度が年々向上している中国での事業展開
中国における介護への関心は年々向上しているとする横山総経理だが、中国の介護市場開拓を横山総経理が最初に担当した2008年当時、中国には「介護」という概念はほとんどなかったという。その後、2013年に「中国介護の元年」が到来し、2018年に「リハビリ器具の社区レンタルサービス試点による通達」が出されると、上海市はこの通達に積極的に取り組み、2019年から上海市戸籍の75歳以上の高齢者向けに、介護用品レンタル費用の50%を政府が負担する政策を打ち出した。
山下福至(上海)健康管理有限公司ではこのような背景と市場性を見据え、上海市を中心に介護用品のレンタル事業を展開。現在、そのレンタルの市場シェアは約8割以上を占めている。また、上海市で初の、そして唯一となる広さ500平方メートルの介護用品消毒センターを設立し、すべての消毒設備を日本から輸入して、レンタル製品のメンテナンスを行っているという。
そんな中国における事業展開について横山総経理は、「介護は制度があってのビジネス。中国においては現時点では段階的に導入されてはいるものの、医療保険の延長線上に位置付けられているため、制度が完備されるようになるには、時間と過程が必要だろう。しかし、レンタル補助金政策など近年の中国の介護政策の動きをみていると、介護制度作りへの試みではないかと感じる。これを受け、中国では介護の認知度や重視度が毎年上がっている」との見方を示している。
そして今後の展望について、「中国の介護市場の将来性を信じて、根気強く頑張っていきたい。最近、中国では認知症が大きな問題となっているので、日本企業でこの分野における中国進出に興味を抱いている企業があれば、是非、協力関係を結びたいと思っている」と語った。(文・玄番登史江)
「人民網日本語版」2022年11月8日