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【中国キーワード】「危機」には「チャンス」あり 戦「疫」で進化する中国ニューエコノミー

丸わかり!中国キーワード

人民網日本語版 2020年02月18日16:21

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人類は災難が降りかかるたびに、いつも社会の進歩によってその損失を埋め合わせてきた。現在、新型コロナウイルス感染による肺炎が中国経済を直撃しているが、危機の中にはチャンスも潜んでいる。

インターネットとビッグデータの技術に支えられて、この思いがけない感染拡大の中でも、人々のデジタル化へのニーズに火が付き、一部のオフラインの生産活動、生活スタイル、消費のシーンがオンラインへと急速に移行し、ネット関連企業は流れに乗って業績を上げ、デジタル経済をはじめとするニューエコノミーが感染による「穴」を急速に埋めていき、経済を力強く担うとともに強いパワーを示した。

生活スタイルが全面的に「オンライン化」 、ニューエコノミーが急速に「穴埋め」

感染拡大が多くの人の消費習慣を変え、オンラインショッピング、オンライン診療、オンラインレッスン、テレワーク、オンラインエンターテインメントといったデジタル経済の新業態が、感染対策の時期における中国国民の日常生活になった。

家に閉じこもっているため、食品デリバリーとECのニーズが増大し、中でも生鮮食品を扱うECの受注量の増加ペースが最も速い。過去数年間のデータでは、生鮮ECの春節(旧正月)連休期間の売り上げは普段よりもやや減少するのが常だったが、今年は感染状況の影響で、同時期の受注量が一気に増加し、「野菜のオンライン購入」の人気が急上昇し、真夜中に争うように購入したり、予約注文がすぐにいっぱいになったりする現象が起きた。そこでプラットフォーム側は企業間で人的資源を分け合う「ワークシェアリング」、時間帯別の受注、在庫の大量準備などの手段を駆使して対処せざるを得なくなった。

感染が拡大する中、医療・ヘルスケア分野は動きが最も速く、需要増加の最も直接的な起爆点にもなっている。武漢協和病院や上海同済病院などによるインターネット病院プラットフォームが、オンライン受診サービスを開通した。ネット医療関連企業、たとえば阿里健康、平安好医生、丁香医生などのプラットフォームもオンライン公益受診サービスを開通した。阿里健康のデータでは、1月30日までに、オンライン公益受診の累計訪問ユーザー数は280万人を超え、協力する医師は1千人以上となり、オンライン公益受診を担当した医師1人の1日あたり受け入れ患者数は100人を超えた。

各地で大学、高校、中学校、小学校の授業再開が延期され、「授業はなくても勉強をやめるわけにはいかない」という理念に基づき、多くの学校や教育機関がオンライン教育産業の企業との新たな提携を探る方針に転換し、オンラインで授業をライブ配信するモデルを相次いで打ち出した。子どもを教育機関に連れて行くことができずに「焦り」を感じている親たちがオンライン教育に次々と切り替えたため、オンライン教育の顧客獲得コストが大幅に低減される結果になった。

春節が終わり、企業は相次いで業務や生産を再開したが、再開にあたっては「オンライン会議」や「テレワーク」を真っ先に選んでいる。阿里釘釘が発表したデータでは、春節後に企業活動が再開されてから数日間で、200万社を超える企業がオンラインでの健康情報管理を実施するようになり、約2億人が阿里釘釘のプラットフォーム上で仕事をしたりビデオ会議を開催したりしたという。協同オフィスや遠距離会議を可能にするため、華為(ファーウェイ)、Welink、騰訊(テンセント)会議、会暢通訊などの企業は感染対策期間には関連サービスを無償で提供するとしている。

感染対策期間には人が集まることをなるべく避けるよう奨励されているため、ゲームがオフラインの娯楽の重要な代替品になり、「春節ゲーム特需」の様相を呈している。中でもSNSで競い合うゲーム、将棋やトランプなどのゲーム、ミニプログラムのゲームが明らかに恩恵を被った。オフライン娯楽産業はショート動画共有アプリの「TikTok」と「快手」とも提携し、娯楽シーンの転換を通じて、その場で娯楽コンテンツを楽しみたいというニーズに応え、ネット上でのチップ支払いによる利益はオフラインでの損失をある程度埋め合わせてもいる。また快手は一線都市・二線都市のナイトクラブや音楽大手企業と提携して、「クラウド・レイヴ(クラウド上で行うオンライン音楽イベント)」のライブ配信を始めた。

オフラインへの依存度が高かった一連の産業、たとえば不動産や自動車、飲食、観光、オフライン娯楽などは、オフラインシーンが大きな打撃を受けるこの特殊な時期にあって、ライブ配信などの方法を相次いで利用して、オンラインへのモデル転換を図っている。不動産分野では、不動産コンサルタントがライブ配信パーソナリティに早変わりし、物件情報のライブ配信をして不動産を売っている。外食分野では、イートインビジネスが打撃を受けたが、デリバリーはものすごい人気だ。多くのオフライン飲食ブランドが、ライブ配信方式を選択して、ブランドイメージを形成し、感染対策期間に消費者の信頼を得ようとしている。観光分野では、オンラインで観光気分が味わえる「クラウド観光」が流行し始めており、観光プラットフォーム上で旅行先のガイド情報や動画を見るのが人気だ。

多くの業界のアナリストが、「今回の新型肺炎をめぐる状況は、まるで外からの力に迫られて、社会や人々がデジタル経済を全方位的に受け入れ、デジタル経済の行動や習慣が育成されたようなものだ」との見方を示した。

新技術に支えられ、高度化と進化を迎える新業態

中央財経大学の孫宝文教授は、新型肺炎をめぐる事態が収束後、「現代化ガバナンス」が「従来型ガバナンス」に急速に取って代わり、スマートシティの建設が加速していくと見ている。たとえば、交通管理や物流供給チェーン、救急・災害対応、情報トレーサビリティなど各システム構築が加速され、都市管理の全面的デジタル化が進み、データに基づいた主張・方針決定・管理が行われ、都市管理と社会のガバナンスが従来の「フォーマット思考」から「ビッグデータ思考」へと進化し、一部の都市では、人工知能(AI)に基づく災害予測を展開し、ビッグデータを運用した感染状況の分析・研究・判断、感染対策の計画、都市間移動者のモニタリングも可能になるという。

今回の新型肺炎の予防・抑制において、科大訊飛股フン有限公司(フンはにんべんに分)の提供するスマート教育やスマート医療補助が大きな役割を果たした。同社の関係責任者は、「感染予防・抑制の期間に、当社は教育や医療、国家機関、プロバイダーなど多くの分野でAIにビジネスチャンスがあることに気づいた。たとえば教育分野なら、膨大な数の小中高校にスマート教育や遠隔オンライン教育のニーズがある。医療分野なら、未知のウイルスによる感染症が発生した場合に基層レベルから上級機関への迅速な報告をどうやって実現するか、感染抑制措置を取る場合にどのようにして迅速に症例を分析して患者をスクリーニングするか、治療に当たる場合に対面しないで診療する方法やスマート看護師の利用方法をどうするかなどの課題があり、感染が拡大すれば、スマート医療の構築を強化することが硬直的需要になる。また今回の新型肺炎はAIによる政務補助システムの発展を加速させ、たとえばマスクの登録・割り当てシステムや、携帯電話網を利用した自動通報システムなどが急速に増加し、事態が収束した後には、電子政府に新たなチャンスが到来するだろう」との見方を示した。

ウイルスと闘ううえで情報・方針決定サービスを提供する科大国創軟件股フン有限公司の董永東会長兼社長は、「今回の新型肺炎は一連のオンライン産業を活性化し、その背後にはビッグデータとの切っても切り離せない関係がある。将来はビッグデータが支えるオンラインモデルが新たな経済の形態になり、人々は家を出なくても衣食住・移動など各方面の問題を解決できるようになる。これは緊急時のニーズに応じた爆発的増加であるとともに、デジタル経済が迎える新たなチャンスでもあると言えるだろう」と述べた。

安徽睿極智能科技有限公司の王大勇会長は、「5G時代の訪れにともない、オンラインサービスの体験がどんどんよくなっていき、たとえば5Gライフの娯楽シーン、5Gテレワークのシーン、5G遠隔教育のシーンなどは、高精細の動画と相まって、ますます精細でスムーズになり、より多くの利用者を獲得するだろう。デジタル経済も川上から川下に至る各産業の共同発展を牽引することになる」と述べた。

安徽大学商学院の劉暁雲教授は、「今回の感染状況の中で登場したさまざまなインターネットの応用は緊急時だけの一時的なものには決してならないだろうし、こうした応用の発展プロセスにおける重要な促進のプロセスになり、一連の応用の爆発的な発展をもたらすとみられる。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の時には、阿里巴巴(アリババ)が打ち出した淘宝(タオバオ)が飛躍的発展を遂げた。今回の感染拡大によって、人々は中国デジタル経済の将来性を知ることにもなった。これまでずっと今ひとつ人気に火が付かなかったオンライン教育、遠隔協業オフィスなどのオンラインサービス・モデルが、今回の感染状況の中で重要な役割を発揮し、より多くのネットユーザーが実際に体験するようになり、ユーザーの間ではこうしたサービスを購入・利用する習慣が知らず知らずのうちに育成され、これまでの習慣が変わりつつあり、これからさらに多くのビジネスチャンスがやって来ることが予想される。今回の事態が収束した後には、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、5Gなどのデジタル産業がさらに高度化し、進化を遂げていくことだろう」と述べた。(人民網日本語版論説員)

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「人民網日本語版」2020年2月18日 

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