数人の友人と連れだって街中の歩行者天国をそぞろ歩き、久しぶりに「小店」(小規模店舗)を見て回る。近くの横丁からは何かを炒める良い香りや蒸しあげている熱気が漂ってくる。あちらこちらから聞こえてくる客引きの声からそんな「小店経済」の復活を実感することができる。新型コロナウイルス感染症が落ち着きを取り戻すのに伴い、大通りや横丁にも日々の営みが戻りつつある。
商務部(省)など7当局がこのほど共同で通達した「小店経済の推進行動の展開に関する通知」は、「2025年をめどに、小店経済モデル都市(区)を100ヶ所を育成し、サービス企業100社を支援し、人気が高く、生活密着型の小店集積エリア1千ヶ所を形成し、『百都市千エリア一億店舗』の目標を達成する」ことを提起した。小店経済の活性化は、なぜそれほど重要なのだろうか。
「小店経済」とは?
「全国小店経済発展の手引き」は小店を、「小店とは小型店舗であり、登記・登録の形式では自営業者と零細企業を中心とする」と明確にしている。
同局の「統計上の大・中・小・零細企業区分規定(2017年)」は小店についてより詳細な定義を打ち出しており、「小店とは通常は個人消費向けの卸売、小売、宿泊、外食、家事サービス、クリーニングサービス、美容院・エステサロン、修繕、撮影・印刷、配送サービスなどの業界の自営業者、従業員10人以下または年間売上高100万元(約1516万円)以下の零細企業、および年間売上高1500万元(約2億2740万円)以下のネット店舗を指す」としている。
小店経済はなぜ重要か?
小店経済は雇用の重要な供給源となっている。データによると、2019年末現在、全国で登録された小店は8千万店を超え、約2億人の雇用を生み出した。このように小店経済は軽視できない重要な力となっている。その規模・数量が大きく、受け入れ雇用が多く、産業のカバー範囲も広く、サービスと業態が多様で、その集積発展は市場に活力を与え、商業文化を豊かにしている。
特殊な状況にある今年、小店経済が極めて強い強靱性と活力をみせている。小店はその開店も雇用のハードルも相対的に低いため、経済の活力の回復を促進する重要な役割を担っている。同時に、取り扱う商品の価格も相対的に安く、現段階での人々の消費ニーズに合致しており、消費者には小店で消費する力があり、消費する意欲もある。小店は「小規模・零細企業」の中でもより小さな規模であるため、市場経済における「毛細血管」であり、下は億単位の消費者に関わり、上は複雑な産業チェーンに関わる存在だ。小規模商店であれ、小規模雑貨店であれ、小規模レストランや小規模理髪店であれ、こうした非常に小さな市場主体はどれも、億単位の人々の仕事と生活に欠かせないものとなっている。
小店経済は都市経済の中における非常に小さなパーツであるものの、全局に対してもつ意義はとても大きい。通り沿いや横丁に分布する特色ある小店は、経済の基本面を支える重要なミクロの力だ。先ごろ開かれたショッピングイベント「第1回五五ショッピングフェスティバル」は、都市に潜む原動力を再起動させ、都市の「ナイトタイムエコノミー」を活性化し、大量の小規模ビジネスも活性化し、それによってもたらされた好材料は、人々がその目で見てきた飲食、レジャー、観光、ショッピング、娯楽など街角の小店の再度の発展であり、また目には見えないところで最先端のサプライチェーンを供給する一連の実体ある企業につながっている。
新型コロナウイルス感染症が中小零細企業にもたらした対外貿易の受注減少、物流の人件費高騰、キャッシュフローの逼迫など多くの難問は、まさしく実際の国内消費1つ1つによって解決されなければならない。こうした点から言えば、小店経済が好転することの意義は、単にこうした小店が企業として維持できるということだけにとどまらず、より多くの雇用を維持すること、さらには産業チェーンを維持することにもつながる。現在とポストコロナの時代の中で、小店に対する一見ごくごく小さな関心と支援は、実は一連の企業を救い、業界に恩恵を与え、よりスムーズな経済循環を形成する可能性を備えている。
科学技術が小店経済にエネルギーを注入
またデジタル情報技術が小店の組織化によって経営水準を向上させる契機をもたらしたことは注目に値する。阿里巴巴(アリババ)と京東はそれぞれ「零售通」と「新通路」という事業部門を立ち上げ、小売分野の小店に店舗管理、オンラインでの発注・決済のツールを提供している。小店はデジタル化プラットフォームに接続することで、大手ブランドメーカーやサプライヤーとのマッチングの機会を得る。また「ネットを利用する」小店の数が徐々に増加するにつれて、そのフロー効果が現れ始めている。ブランドメーカーは小店を取り込んで販売促進キャンペーンを展開することや、試供品や新製品を提供することを考えるようになる。アリババが構築したビジネス生態圏の中で、庶民的な小店は対外貿易加工企業の質の高い商品に「輸出から国内消費への転換」のためのルートを提供することもできる。京東金融や支付宝(アリペイ)の機能をよりどころに、小店には暮らしの中の様々な料金支払いの窓口を手にし、セルフプリンターや家事サービスの予約、宝くじ購入などの機能も実現し、より全面的なサービスを提供する「コンビニ」的存在になっている。
公開されたデータによると、デジタルライフプラットフォームの食品デリバリー・配達サービス、オンライン販売促進キャンペーンなど柔軟な経営手法を通じ、小店は順調にその業務や操業を再開している。4月下旬以降、毎週平均で100万軒の自営業者や夫婦で営む商店などの小店がアリペイプラットフォームを利用してQRコード決済を行い、デジタル化モデル転換を模索し、これまでに1200万軒の小店が収入の前年同期比増加を達成した。
小店は新技術や新モデルをよりどころに収益力を増強すると同時に、小店が担うべき役割もよりしっかりと担っている。安くて質の高い商品や豊富で便利なサービス、より開拓が進んだ機能がもたらす「サプライズ」は、小店の近所に住む人々の暮らしの中の幸福感を高めることにつながる。電子製品に不慣れな「シルバー族」も、家の近くの小店を通じて実店舗のサービスモデルとデジタル時代の効率の高さや便利さを味わうことができる。
小店は規模こそ小さいが、小店経済の発展には中国経済の強靱性の強さ、活力の豊かさという大きなロジックが体現され、民生を保障・改善し、デジタル化建設を進め、調和的で住みやすい都市を建設するという大きな筋道が内包されている。ポストコロナ時代には、中国は小店経済の強靱性と活力によって、経済の強靱性と活力をより充実させ強固にし、消費、経済、社会生活の全面的な回復をサポートすることになる。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2020年7月27日