8月1日、五輪の男子100メートル決勝のスタートラインに立った蘇炳添選手は、他の決勝進出選手たちの中で一際違って見えた。蘇選手は五輪の男子100メートル決勝に進出した初の中国人となった。
「この瞬間をずっと待っていた」。蘇選手は試合後、涙にむせんだ。
東京五輪の100メートル決勝に進出した「飛人」蘇選手がスタジアムに姿を現すと、全てのアジア人記者から歓声が沸き起こった。ある日本人記者はこう言った。「彼は全アジアの夢を担っている」。
準決勝で蘇選手は世界を驚かせる走りを見せ、9秒83でこのコースを走り抜けた。蘇選手はパーソナルベストを更新しただけでなく、アジア記録も塗り替え、準決勝を1位で通過して決勝に進出した。
この五輪の100メートルコースを走るまで、蘇選手は10年近い歳月をかけた。準決勝でタイムを見た瞬間、蘇選手はコースに膝をつき、カメラに向かって雄たけびを上げ、全ての感情をその瞬間に爆発させた。外部の人は想像できないかもしれない。今年、蘇選手は32歳になる。30歳を過ぎても全盛期の状態を保っている中国の短距離選手は、今に至るまで彼一人なのだ。
男子100メートルでは、10秒というタイムがずっとトップ選手が突破しなければならないハードルとなってきた。2012年頃、すでに10秒の関門に迫りつつも、なかなか越えることができずにいた蘇選手は、この関門を越えるためには短距離走の技術面で改良を行わなければならないことに気づいていた。2015年、彼は劉翔の経験を参考にして、スタートの足を右足から左足に変えた。そして同年のダイヤモンドリーグで9秒99というタイムを叩き出し、アジア人選手で初めて10秒の壁を越えた。
そして今、五輪100メートルの決勝で、蘇選手はついに9秒98というタイムで6位入賞を果たした。
「今日は一生で最良の記憶になるだろう。今日の成績は皆さんを失望させるものではなかったはずだ」。五輪100メートル決勝の場に立った蘇選手は、すでにその目標を達成したと言えるだろう。(編集AK)
「人民網日本語版」2021年8月2日