次のようなシーンを想像してほしい。地震もしくは落盤後、視界が遮られ、瓦礫の中に閉じ込められながら、砂埃が舞い、視線が遮られ、極めて危険な状況だ。一方で、瓦礫、コンクリート、鉄筋などの物体により現場の状況がより複雑になる。ロボットアームを研究開発し、現場でそっとタッチするだけでスピーディに物体と人を感知するとともに、使用の際にレスキュー隊員が自ら現場に入らなくても現場の状況を判断できる上、物体を掴み取り移動するといった動きを行うことは可能だろうか。科技日報が伝えた。
当紙の取材によると、中国科学院上海マイクロシステム・情報技術研究所の陶虎研究員のチームが、応急管理部(省)上海消防研究所、中国科学院自動化研究所、蘇州慧聞ナノテク有限公司などと協力し、国家科学技術イノベーション2030次世代人工知能重要プロジェクトにより、「触覚・嗅覚一体型生態模倣スマートロボットアーム」を研究開発した。人が瓦礫の下敷きになっている時に、このロボットアームは緊急救援をサポートできる。救援状況のシミュレーションで、スマートロボットアームは人体を含む11種の典型的な物体を識別した結果、その正解率は96.9%にのぼった。関連研究はこのほど「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
この「手」は掴むだけでなく匂いを嗅ぐこともでき、さらに2種のセンサー情報を結びつけ周辺環境を判断できる。触覚センサーは接触における圧力の変化を感知し、物体の硬度、輪郭、局部の外観の情報を採取できる。そして嗅覚センサーには特定のガス感受性材料が使用されており、特定のガスに触れると電気抵抗の変化が生じる。特定のガスの組み合わせは特定の物質、例えば硫化水素やアンモニアなどの特殊な匂いを示す。これらの匂いは人の名刺のように、他の物体と明確に区別できる。レスキュー隊員はロボットアームを操作し触れるだけで、センサーが集めた情報を結びつけると、被災者の位置とロボットアームが触れた人体の部位をスピーディに判断できる。
さらにこのロボットアームはセンサーが壊れた場合も高い精度を持つ。災害時には機械が壊れやすい。感度が人間を1桁上回るシリコンMEMSガスセンサー及び検出限界が人間を1桁上回る圧力センサーにより、ロボットアームは人の手のよりもはるかに感度が高い。生態模倣スマートロボットアームはセンサーの損壊率が50%以内であれば、アルゴリズムのスピーディな調節により、80%を超える精度を保てる。
チームは親指1本に4本指を合わせた5本指構造を選択し、可動する多くの関節を設計した。論文の筆頭著者で、中国科学院上海マイクロシステム・情報技術研究所の博士課程在学中の劉孟瑋氏は、「チームは設計当初、その細長い構造により瓦礫の中に楽に入れる、センサーを搭載したヘビ型ロボットも考えに入れた。しかし人の手の生理的構造の方が速やかな救援の展開に適していた。ロボットアームは現場の環境を判断すると直ちに運び、掴み取ることができる。しかもロボットアームは人が操作し、人の体に似ていることから、人の操作ロジックにより合致する」と説明した。(編集YF)
「人民網日本語版」2022年2月11日