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【中国キーワード】中国中央銀が預金準備率引き下げで8000億元の資金放出 どんな影響与える?

丸わかり!中国キーワード

人民網日本語版 2020年01月06日11:35

中国人民銀行(中央銀行)は1日、金融機関から資金を預かる預金準備率を6日から0.5ポイント引き下げると発表した。人民銀行の関係責任者は、今回の預金準備率引き下げについて、「今回は全面的な引き下げ。この反循環的調整により市場に8000億元(1元は約15.5円)以上の長期的資金を放出できる」と説明した。では、中国人民銀行はなぜこの時期に預金準備率引き下げを実施したのだろうか?そしてこれによりどんな影響がもたらされるのだろうか?

なぜこの時期に預金準備率引き下げ?

中信証券研究部固定收益首席アナリストの明明氏は、「2020年の春節(旧正月、今年は1月25日)は例年よりも早く、流動性環境が、資金満期圧力の小幅上昇や現金の需要急増、納税、財政支出、特定項目債券の発行などにおける力加減やテンポが不確定などの多くの要素の影響に直面している。中央銀行が預金準備率引き下げに踏み切ったのは、春節の時期の流動性に合わせたもので、これにより資金利率を安定させることができる」との見方を示している。

中国民生銀行首席研究員の温彬氏は、「1月に6000億元のリバースレポが次々満期を迎えるほか、納税や地方政府の特定項目債券発行、春節期間の現金需要などの要素が加わり、流動性に圧力がかかる。そのため、預金準備率を引き下げることで、8000億元の資金を放出し、上述した流動性の需要に対応することができる」と分析している。

人民銀行は、預金準備率の引き下げにより、金融機関が実体経済を支える安定した資金源を効果的に増やし、金融機関が実体経済を支えるための資金コストを低減し、実体経済を直接支えることができると説明している。

どんな影響がもたらされるか?

〇株式市場

これまでの預金準備率引き下げにより、株式市場が受けた影響を見てみると、預金準備率引き下げは株式市場に好影響を与えてきたと言える。ある歴史的統計データによると、中央銀行が預金準備率引き下げを実施してから1ヶ月以内、3ヶ月以内、半年以内、A株市場では株価上昇が多く、下落は少ない。英大証券首席経済学者の李大霄氏は、「今回の預金準備率引き下げは全面的で、政策的方向性がはっきりしている。市場の利率の引き下げにプラスで、『恵みの雨』となるだろう。春節期間の資金の需要への対応や経済成長の安定という面において、非常に重要な役割を果たし、市場の景況感も向上し、株式市場にも大きなメリットがあるだろう」との見方を示している。

預金準備率引き下げの各区分や概念株(中国の企業が海外で発行している株)に対する影響はそれぞれ異なり、通常、金融や不動産など、資金密集型の業界が益を受けることになる。

〇債券市場

債券市場について、中国銀行業協会業界発展研究委員会の連平主任は、「今回の預金準備率引き下げは、債券市場を活性化させ、同市場のリスクを抑制する点で積極的な役割を果たすだろう。今後、さらなる預金準備率引き下げが実施される可能性もあり、今後の債券市場が一層安定し、良好な運営状況を保つために、積極的な影響を与えるだろう。また、預金準備率の引き下げの直接的影響は限定的だ」との見方を示している。

〇不動産市場

不動産市場について、易居研究院智庫センター研究ディレクターの厳躍進氏は、「今回の預金準備率引き下げ後、いくつかの積極的な影響があるだろう。まず、不動産金融環境がさらに緩和される可能性がある。2019年に3度にわたり実施された預金準備率引き下げをベースに、2020年における1回目の預金準備率引き下げが実施されると、金融環境の緩和傾向が一層強まると見られる。実際の状況を見ても、不動産金融環境も緩和される必要がある。特に不動産開発融資や個人の住宅抵当貸付けなどの分野で、積極的な改革実施が必要だ。今回の預金準備率引き下げは、的を絞った預金準備率引き下げではないため、客観的に見ると、多くの銀行が資金融資を行うようになると見られ、不動産の分野にも積極的な影響があるだろう。次に、預金準備率引き下げにより、ローンプライムレート(LPR)利率が引き下げられ、LPRの基礎利率が下がるにつれて、銀行の不動産の分野への融資業務も調整され、不動産ローンの利率も下がる可能性がある。それにより、不動産購入コストが低下し、2020年3月から始まる既存の融資をLPRに基づく新しい金利ベースに転換する業務も展開しやすくなる」と分析する。

〇資産運用

個人の資産運用を見ると、預金準備率引き下げにより、市場に資金が放出され、通貨の流動性が強まり、マネーファンドの收益率がまず影響を受けると見られる。支付宝(アリペイ)などの資産運用による年間收益率は既に約2.5%まで下がっており、今後さらに下がる可能性もある。一方で、銀行の資産運用商品の收益率も下方傾向が続く可能性がある。

中国の通貨政策の方向性は変わる?

世界各国の中央銀行が緩和政策を実施している中で、中国の中央銀行が預金準備率の全面的引き下げを発表したのは、中国の通貨政策の方向性が変わったということなのだろうか?

これについて中国人民銀行は通貨政策の方向性が変わることはないと強調している。

人民銀行は、「今回の預金準備率引き下げは、春節前の現金需要に対応するもので、銀行体系の流動性総量は依然として安定しており、適度な柔軟性を保っている。そして、全面的な緩和を実施するのでは決してなく、科学的で安定的に通貨政策の反循環的調整の度合いを体現しており、安定的な通貨政策の方向性が変わることはない」としている。

中国は今後も、安定的な通貨政策を実施し、適度な柔軟性を保ち、全面的な緩和を実施することはなく、内外のバランスを取り、十分に合理的な流動性を保ち、現金貸付や社会融資の規模の拡大と経済発展のバランスを取り、市場の主体の活力を喚起し、質の高い発展や供給側の構造改革に適した通貨・金融的環境を作り出すことに疑いの余地はない。

預金準備率引き下げにより金利も下がる?

預金準備率引き下げが実施されると、金利も下がるのだろうか?業界関係者は、すでに利下げ周期に入っていると見ている。

2019年11月5日、人民銀行は1年物中期貸出ファシリティー(MLF)を使った公開市場操作(オペ)を実施して金融機関に4000億元を供給した。同日に満期を迎えたMLF融資とほぼ同じ額で、金利は5ベーシスポイント引き下げられて3.25%となった。人民銀行のMLFを使った公開市場操作は約4年ぶりだった。

この金利引き下げについて、中国民生銀行首席研究員の温彬氏は、「2019年、世界の経済成長が鈍化するにつれて、多くの国の中央銀行が金利を引き下げて対応してきた。米国連邦準備制度理事会は2019年に金利を3回連続で引き下げ、中国と米国の10年ものの国債收益率の差はさらに拡大した。対ドル人民元レートは安定して回復しており、中央銀行に金利引き下げの余地を与えている」と分析している。

2020年について、中信証券は、「コスト低下が依然として金融政策の一番の目標。量と価格のバランスを取るための余地が依然として残っており、2020年も引き続き金利が引き下げられるだろう」と展望している。

ミニ知識

〇預金準備率引き下げとは?

「預金準備率」を簡単に説明するならば、預金の一定比率以上の金額を中央銀行に預け入れる比率のことだ。準備金としての準備預金が銀行の預金総額に占める割合が預金準備金率となる。中央銀行が銀行に対して、一定のお金を預けるよう求めている理由は、商業銀行がむやみに融資を行い、預金者に返す十分な現金が足りなくなるという状況を回避するためだ。中央銀行が預金準備率を引き下げることで、銀行業の流動性が強まり、市場により多くの現金が流れることになる。

〇預金準備率引き下げと金利引き下げの違いは?

金利引き下げとは、銀行の貸付利息を下げることで、市場の資金量が増えることはないものの、資金の流れを変えることができる。その主な目的は、企業の投資を刺激することで、それにより必ずしも通貨の流通量が増えるわけではない。

金利引き下げの主な効果は2つある。

1、中央銀行に預金するメリットを減らすことで、通貨を銀行以外の市場に流し、取引のアクティブ度を向上させることができる。

2、借入コストを下げて、商品の競争力を向上させることができる。

つまり簡単に説明すると、預金準備率引き下げは通貨を放出するのに対して、金利引き下げは投資を刺激することになる。(人民網日本語版論説員)

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「人民網日本語版」2020年1月6日 

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