日本では2018年頃から生じたタピオカミルクティーブームが今年に入って下火になり、新型コロナの影響も重なり、東京・原宿界隈から次々とタピオカ専門店が姿を消しつつある。一方の中国でも新型コロナの影響は避けがたく、一時期ほどの熱狂的な人気は見られなくはなっていたが、ここにきて「秋入りして1杯目のミルクティー」というネタがきっかけとなり、再びタピオカミルクティーへの注目が集まっている。今回はそんな中国のミルクティー事情について紹介していこう。人民網が伝えた。
中国におけるタピオカミルクティーブームも実は初めてではない?
中国では台湾地区から生まれたタピオカミルクティーが1990年代後半頃に大陸部に進出し、ちょっとおしゃれな香港・台湾地区資本系のカフェなどを中心に流行し、次第にドリンクショップや屋台村などにも登場して、全国的に広がっていった。その後は、目立った盛り上がりは見せなかったものの、スイーツやミルクティーにおけるトッピングとしての地位を守り続け、SNSなどで「写真映え」しやすいアイテムとして再び注目を集めている。その後、ミルクフォームティーやチーズティー、フルーツなどが入ったフレーバーティーといった様々な種類のティードリンクが登場し始めても淘汰されることなく、ミルクティー店の一角を担うメニューであり続けた。さらにここ数年は日本でのタピオカブームが反映される形で、中国でもその人気を再び盛り返しつつあり、タピオカミルクティーアイスなどの派生商品も登場している。
お茶発祥の国・中国におけるミルクティー
中国各地には実は様々なミルクティーが存在する。内モンゴルの「スーテーツァイ」は紅茶ではなくプーアル茶にヤギなどのミルクと岩塩を加えたしょっぱいミルクティー。またチベットで飲まれているバター茶はこれにヤクなどの乳で作られたバターが入り、こちらもコクのあるしょっぱいミルクティーとなる。海南島では牛乳の代わりにココナッツミルクを使った「椰香ミルクティー」が飲まれており、香港式ミルクティーは濃いめに入れた紅茶にエバミルクを加えた濃厚タイプ。香港式としてはこのほかに滑らかな味わいの「シルクストッキングティー」やコーヒーと紅茶にエバミルクを加えた「鴛鴦茶」もある。台湾式ミルクティーはタピオカミルクティーに代表される甘みの強いタイプで、茶葉には紅茶の他、ウーロン茶やジャスミンティーなどが使われている。
中国ではミルクティーが話題になることがしばしば
タピオカミルクティーだけでなく、「ミルクティー」自体がたびたび話題になっている中国。古くはミルクティーを片手に持った写真で「奶茶妹妹(ミルクティー娘)」と呼ばれて一躍人気を集めるようになった章澤天さん。この他にも、次々登場する新商品に並んで飲むのは大変だという人々のために、代わりに並んで購入するだけでなく、代わりに飲んで写真撮影までしてくれるといったミルクティー代行サービスや、昨年は、ミルクティー・ソムリエという新たな職業も話題となった。
また今年に入ってからは秋分だった9月22日を境に、「秋入りして1杯目のミルクティー」というネタがたちまちネットで話題となり、彼氏から彼女に52.0元(「520」の中国語の発音が「愛してる」と似ていることから)のWeChatお年玉を贈ったり、ミルクティーのデリバリーを注文して彼女に贈ったりしたため、注文が殺到したミルクティー店のデリバリーが一時混乱をきたしたほどだった。さらにはこの「秋入りして1杯目のミルクティー」を使って、警官が自殺しようとしていたティーンエイジャーを思いとどまらせた事件まで報道されるなど、話題は事欠かない。
このように中国において、ミルクティーはすでに単なる飲み物ではなくなってきていると言ってもいいかもしれない。SNSなどの「写真映え」による爆発的な人気を維持しつつも、そうした見た目だけでなく、健康志向を意識したメニューや厳選された原材料にスポットをあてたり、中国伝統の要素を取り入れた「国潮」風のパッケージや地方色といったブランドの個性を際立たせるなどの努力も見られるようになっている。秋も深まる今日この頃、ひとまず、「秋入りして1杯目のミルクティー」を飲んでみてはどうだろうか?(文・イラスト・玄番登史江、袁蒙)。
イラストで知ろう!イマドキ中国
人民網ではもっと身近なスタイルで今どきの中国を読者の皆さんに知ってもらうため、「つるにはまるまるむし爺さん」と「へのへのもへ郎」、「へめへめくつ美」の3人が流行語やカルチャー、時事問題など幅広いジャンルにおける「イマドキ」を紹介。中国ってこんな国なんだ!と興味を抱き、理解を深めるきっかけにしてみてください。
「人民網日本語版」2020年10月21日