今年の春節(旧正月、今年は2月12日)は、常態化した新型コロナ対策が講じられる中で迎える初めての春節となる。そして、例年とは異なる春節で、中国が「今いるところで年越し」を呼び掛けているのを背景に、オンラインでギフトを購入して親戚に郵送したり、オンラインで年越し用品を購入したりする人が増えているほか、一人前の年越し料理が人気になるなど、新たな春節の過ごし方や消費現象が登場し、際立つようになっている。
若者が年越し用品消費の中心に
例年であれば、春節前になると、中年の男女がスーパーに押し掛け、年越し用品をたくさん買い込むというのが恒例だったが、新型コロナ対策の影響で、ネットショッピングが大人気となり、今年の年越し用品消費の中心層の年齢層も下がっている。特に、若い消費者が年越し用品により強い興味を示している。中国の検索エンジン・百度が最近発表した「2021年越し用品検索ビッグデータ」の年越し用品に注目している人の年齢層別割合を見ると、90後(1990年代生まれ)と00後(2000年以降生まれ)が44%と、過去最高となっている。
ネットユーザーは、今年の春節をユーモラスに「活動半径が最も小さい春節」と呼んでいる。中国の各地域が「今いるところで年越し」するよう呼び掛けているのを背景に、若者のグループが次第に年越し用品の消費の中心層になり、年越し用品市場では新しい消費の特徴が現れるようになっている。
例年なら年越し用品を購入する人はコストパフォーマンスの高さを求めていたのに対して、若者たちは消費の品質や生活体験を重視している。アリババグループ傘下の生鮮スーパー「盒馬鮮生」の関連統計によると、若者の間では「チェリー、酒、シーフード」が「年越し用品3点セット」となっている。百度の搜索ビッグデータがまとめた若者たちの年越し用品リストを見ると、電子機器が1位、テーブルゲーム・カードゲームが6位となっている。
若者層の「入場」により、年越し用品市場の商品の品目が増えているものの、ショッピングサイト・天猫の統計によると、ドライフルーツ、キャンディー、中国式ペイストリーが依然として、多くの人が選ぶ年越し用品の「3点セット」となっている。ショッピングサイト「淘宝」の「丑年の大人気年越し用品トップ10」を見ると、ヒマワリの種、ピーナッツ、ピスタチオが一番人気となっている。「年越し用品セール」には、1日当たりの売上高が昨年同期比で3割増以上となっている。
ネットショップでギフト購入して家族・親戚に郵送するのがトレンド
帰省しない場合、どのように目上の家族や親せきにお祝いの気持ちを伝えればいいのだろう?調査によると、今年、多くの若者はネットショップで年越し用品を購入して、実家に郵送したり、ギフトを郵送したりして、春節を祝っている。多くのネットユーザーは、このような新年の祝い方を、「淘宝式新年の挨拶」と呼んでいる。
淘宝の統計によると、「年越し用品セール」の初日、プラットフォーム上の「年越し用品」の検索回数が240%増となった。「90後」も初めて、上の世代からバトンを受け、年越し用品購入の新たな中心となり、天猫の年越し用品セールにおける購入に占める割合は6割以上となっている。
多くの若者は、ミニ家電を購入し、両親の家事が少しでも楽になるようにしているようだ。EC大手・蘇寧易購の統計によると、電気鍋、オーブンレンジ、ノーオイルフライヤーなどの商品の検索回数が、それぞれ200‐800%増になっている。天猫でも、ネット上の年越し用品セール実施期間中、製麵機、床洗浄機、食器洗い機などの売上高が100%増以上になっている。
今年の春節、親孝行するためにヘルス関連商品を購入する若者も増えている。京東のプラットフォームの統計によると、ネット上の年越し用品セール実施期間中、健康食品・用品のギフトセットの売上高が前年同期比69%増となり、体験関連セットの売上高も上昇の一途をたどっている。
「一人前」の需要が急増
中国が「今いるところで年越し」を呼び掛けているのを背景に、今年は普段仕事をしている場所で、一人で春節を迎えるという若者が多く、「一人前の料理」が年越し用品消費の人気商品となっている。うち、若者の消費者に人気なのは、タニシ麵やインスタント火鍋セットなどの、インスタント・即席食品で、「丑年の大人気年越し用品トップ10」にランク入りしている。うち、タニシ麵の売上高は昨年の春節期間に比べて1500%と激増している。
また手軽に楽しめる軽量化された「一人前」の即席年越し料理が、各スーパーお勧めの商品の一つとなっている。多くのコンビニチェーンストアも、数量限定の弁当のほか、少量のおかず、さまざまな地域のご当地グルメの総菜などを用意している。アリババ傘下のスマートコンビニ「便利蜂」の広報部のスタッフ・王さんは、「1人で春節を過ごす人が、おいしい年越し料理を食べることができるように、華東地域や華北地域の店舗に、注文してその場で作る料理のサービスを提供している。24時間、少量の料理を注文できる。例えば、上海の葱烤大排(スペアリブの炒めもの)、東北地域の鍋包肉(豚の唐揚げの甘酢あんかけ)、北京の炒合菜(豚肉入り五目炒め)、山東の糖醋魚塊(揚げ魚の甘酢あんかけ)などを注文できる」と説明する。
春節期間中もデリバリー利用が可能に
フードデリバリーサービス「美団外賣」の関係責任者によると、「例年は、春節の時期はデリバリーの繁忙期ではなく、飲食店の営業率も低い。しかし、今年は異なり、たくさんの飲食店が春節期間中も営業する計画で、営業率は約70%になりそうだ。一部の高級レストランもバラエティーに富んだ年越し料理のデリバリーを打ち出している」と説明する。「美団外賣」によると、新型コロナウイルス感染が発生する以前と比べると、今年の春節期間中、「美団外賣」を通して商品を販売する計画の山東省済南市の飲食店はかなり増え、営業率は大幅に上昇しそうだ。
「今いるところで年越し」の呼び掛けで春節消費が伸び悩み?
今年、中国が呼び掛ける「今いるところで年越し」という政策が、経済にマイナスの影響を与え、春節の消費が伸びないのではという分析もある。では、この政策は春節経済にどれほど影響を与えるのだろう?
中国国家発展・改革委員会の秘書長を務める趙辰昕報道官は、「今年、中国が初めて呼び掛ける『今いるところで年越し』の影響は多方面に及ぶだろう。例えば、長距離旅行や交通・輸送、宿泊などの業界に影響が出ると考えられる。しかし、『今いるところで年越し』には、プラスの促進的役割もある。例えば、人の流動や人が集まる状況が大幅に減少する。そのため、新型コロナ対策にとっては有益で、経済の継続的回復を促進する。また、帰省やUターンの時間、新しい仕事を探す時間などを節約でき、春節後の企業活動再開・操業再開なども促進できる」との見方を示す。
ある専門家は、「今いるところで年越し」は、オンライン経済や無接触経済、ライブコマースなどの発展にも有益との見方も示す。
人が集まる状況を減らすために、1月20日、中国商務部(省)などの関連当局による「全国オンライン年越し用品セール2021」の実施が始まった。そして、イベント初日の売上高は363億元(1元は約16.3円)に達した。
ライブコマースを見ると、「抖音(Tik Tok)EC」が発表した年越し用品セールの統計によると、1月4日から1月20日までの17日間の売上高が208億元に達した。年越し用品セール実施期間中、抖音のライブ配信ルームの視聴者数は累計で143億人、やり取りされたコメント数は19億件以上、交流した人の数は延べ3億2000万人に達した。
「今いるところで年越し」が呼びかけられ、地元旅行や周辺旅行が人気になっている。各大手旅行プラットフォーム、景勝地なども、集客のためにあの手この手を使っている。携程や同程、馬蜂窩、去哪児、美団などのオンライン旅行プラットフォームも、地元旅行に力を入れ、新商品や新キャンペーンを打ち出している。
また、「今いるところで年越し」が呼び掛けられ、「おうち経済」に再び火が付いている。そして、デリバリーやゲーム、ショート動画、オンライン教育、オンライン医療・問診などを代表とする新興業態が今後、新たな発展のチャンスを迎えそうだ。また、「今いるところで年越し」により、春節期間中の人口分布も変化し、多くの人が流入する低リスク地域では、映画や飲食などのオフライン消費、ショッピングセンター、スーパーなどのオフライン購入の消費が伸びると期待されている。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2021年2月10日