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【中国キーワード】野菜や牛乳などの「ゼロカーボン食品」登場 食べてCO2削減がトレンドに

丸わかり!中国キーワード

人民網日本語版 2022年07月18日14:15

100%再生可能なクリーンエネルギーを利用し、パッケージのふたや付属のスプーンに植物由来素材を使用し、サイクル全体にわたってカーボンフットプリント(CFP)を算出し、温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)を達成し、第三者認証機関に認証を申請する……こうしたさまざまな関門をクリアしてやっと「カーボンニュートラルの粉ミルク」が誕生する。

今年は「ゼロカーボン食品」の人気が高まりを見せ、年初以来、カーボンニュートラルの牛乳、カーボンニュートラルのアイスクリーム、カーボンニュートラルの粉ミルク、ゼロカーボン野菜などが次々に登場している。業界では、2022年を「ゼロカーボン食品」元年と見ており、トップ食品メーカー同士の競争はすでに環境保護をはじめとした社会的価値の分野へと広がっている。

「ゼロカーボン食品」とは何か?

食品における二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロは、研究開発、栽培・飼育・養殖、収穫、加工、流通、小売、貯蔵のさまざまなプロセスに関わるものだ。「ゼロカーボン食品」とは、生産プロセスにおける温室効果ガスの排出量がマイナスかゼロの食品を指す。

国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2021年に発表した研究報告書「企業のカーボンニュートラルルートマップ」によると、食品は食卓に並ぶ前に研究開発、栽培・飼育・養殖、収穫、加工、流通、小売、貯蔵というさまざまなプロセスをたどり、どのプロセスでも温室効果ガスが排出される。人口が増加し飲食の構造が肉類へ傾斜するのに伴って、これからの数十年間に世界の食品消費成長率は70%に達することが予想される。そうなると、人類の基本的なニーズを満たすと同時に、農業と食品業界のCO2排出削減を推進することが非常に難しくなる可能性がある。

自社の食品をきちんとした「ゼロカーボン食品」にするのはたやすいことではない。世界で通用しているやり方では、カーボンニュートラルやゼロカーボンを達成するには、CO2排出量削減かカーボンオフセットを通じた実現を目指すことになる。まず生産サイドが工場の設備を改造しなければならず、原材料、輸送サイド、販売サイドなども一定の要求に対応する必要があり、認証機関に認証を申請するために資金を投じることも必要になる。

「ゼロカーボン食品」がやって来た!

北京市の盒馬、イオン、物美などのスーパーでは、乳製品大手の伊利集団の「ゼロカーボン牛乳」が売られている。豊台区の盒馬では、ゼロカーボンの有機野菜がオーガニックコーナーの棚に並んでいる。一般的な有機野菜と異なり、ゼロカーボンの有機野菜には「ゼロカーボン農産物」と書かれた丸い認証マークが貼られている。

年初以来、伊利は「ゼロカーボン牛乳」、「ゼロカーボンヨーグルト」、「ゼロカーボン有機粉ミルク」、「ゼロカーボンアイスクリーム」など5品目を相次いで売り出した。「アイス」を例にすると、製品の原料の入手から生産、加工まで、パッケージから輸送まで、サイクル全体でネットゼロが実現し、パッケージには「カーボンニュートラル」のマークが貼ってある。総合的な試算によると、このアイス20個につきCO2排出量を9.7キログラム相殺したことになるという。

同様にカーボンニュートラルの製品を打ち出したところには、多国籍食品大手のネスレもある。ネスレは6月17日、中国市場初となるカーボンニュートラルの粉ミルクを発売した。これを1缶買うと、14.2キログラムのCO2排出量相殺をサポートしたことになるという。

農産物の分野では、盒馬の有機野菜が他社に先駆けて南京国環有機製品認証センターの「ゼロカーボン農産物」認証を取得した。このゼロカーボンの有機野菜の第一弾は6月9日に全国の盒馬直営店で発売された。

パッケージに採用された画期的な技術

食品をめぐるカーボンニュートラルと認証は、製品の全サイクルの各プロセスにわたっており、中でもパッケージのソリューションが欠かせないものとなっている。

フランスの多国籍食品企業ダノンの中国における飲料の環境保護・健康・安全業務を担当する龍瀚林シニアマネージャーは、「ペットボトルの主な原料は石油で、製造過程でエネルギーや高圧ガスも消費する」と説明した。

今年4月、ダノンは湖北省武漢市と四川省邛崍市にある脈動ブランドの生産工場で、いち早くカーボンニュートラルを実現した。それから2ヶ月もたたないうちに、ダノンは二酸化炭素貯留(カーボンキャプチャー、CCS)技術を持つイノベーション企業のランザテック社との提携を発表し、化石燃料をベースにしたパッケージ材料への依存度を徐々に引き下げるため、新しいパッケージ材料製造技術に投資することを明らかにした。

中国市場に進出して30年以上になるネスレも、コーヒー製品をめぐって低炭素と環境保護を探求している。コーヒーマシンブランドのネスプレッソの林上明・中華圏ゼネラルマネージャーは、「ネスレは製品とパッケージの循環可能性を高め、コーヒーマシンでは再生材料の使用を増やし、コーヒーカプセルでも再生アルミや低炭素の非再生アルミの使用を増やして、製品の循環可能性を高めている。現在、ネスプレッソは世界にコーヒーカプセル回収スポットを10万ヶ所以上設置し、18ヶ国では訪問回収も行なっている」と説明した。

回収した材料をどのように再利用するかについては、ネスレ、ダノン、飲料品大手のペプシコがそろって、R-PET(リサイクルポリエステル)素材のペットボトルを挙げた。ネスレの説明では、ペットボトルの回収再生率は90%を超えるという。

「食べることでCO2削減」がトレンドになる

20年9月、中国は第75回国連総会で、2030年までにCO2排出量ピークアウトを達成し、2060年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標を打ち出した。21年にはCO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルが初めて政府活動報告の中で言及された。ゼロカーボンの道のりには数々の困難が横たわるが、トップ企業はすでにこれを将来の競争の重点と見なしている。

国際的認証企業のSGSの知識・管理サービス事業群リスク管理プランセンターの岳慶松ゼネラルマネージャーは、「20年にCO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの目標が提起されるまで、当社にカーボンフットプリントの認証を依頼する中国の食品メーカーの数は1けたか2けたにとどまっていたが、今は3けたに達した」と振り返る。岳氏は政策が打ち出された後の中国食品・飲料品業界の変化を「まるで『雨後の筍』のよう」と形容した上で、「今年はコーヒーメーカーや乳製品メーカー、さらには飲料品メーカーの工場でのカーボンニュートラルとカーボンフットプリントの認証作業を行なっている」と述べた。

専門家は、「これはチャンスでもあり挑戦でもある。チャンスというのは、当社の過去から現在に続く努力を見てもらうチャンス、消費者と市場に見てもらうチャンスがあるということだ。挑戦というのは、カーボンゼロがもたらすサプライチェーンの高度化と製品の変革をどうすれば理解してもらえるか、市場に受け入れてもらえるかということだ」との見方を示した。

市場に受け入れられるということは、企業がCO2削減の成果をどのように製品の競争力に転換させるかという課題に向き合うことを意味し、消費者が「カーボンニュートラル」にお金を出したいと思うかどうか、さらには金額を余計に払ってもいいと思うかどうかにも関わってくる。

CO2排出削減の難しさはサプライヤーのコストをどうやって削減するかにあり、とりわけ一部の中小企業には牽引のプロセスが必要だ。農業と食品業界のCO2排出問題をどうするかについて、蒙牛集団で持続可能な発展に関する業務を担当する林笛シニアマネージャーは、「企業は技術イノベーションを積極的に展開してCO2を削減するべきである一方で、省エネ・CO2削減を奨励するメカニズム『カーボン包摂』のプラットフォームを消費者に向けて構築し、個人の炭素資産の取引き窓口となる消費者向け『炭素口座』を開設するべきでもある。消費者は『カーボン包摂』プラットフォームで、脱炭素ポイントの双方向取引や商品との交換などを行なうことができ、奨励策を利用して低炭素の消費を促進し、消費者に低炭素の食品やカーボンニュートラルの食品を購入するよう奨励することが可能だ」と提案した。

盒馬は今、奨励メカニズムの構築を試験的に進めているところで、将来的には、消費者は「ゼロカーボン商品」を購入すると、一定の「盒花ポイント」を獲得でき、定められたポイント数に達すると盒馬アプリで有機野菜などに交換できるようになる。このような方法で、より多くの消費者が炭素削減の行動を起こすよう奨励するという。

■炭素に関する知識

カーボンシンク(炭素吸収源)

カーボンシンクとは、植樹・造林、植生の回復などの措置によって、大気中のCO2を吸収することにより、大気中の温室効果ガスの濃度を低下させる過程、活動、メカニズムを指す。

カーボンフットプリント(CFP)

カーボンフットプリントのコンセプトは「エコロジカル・フットプリント」から来たもので、人類が生産・消費活動の過程で排出した温室効果ガスの総排出量をCO2排出量に換算して示している。

炭素固定

炭素固定とは大気に含まれるCO2を固定する技術を指す。物理化学的な固定方法と生物学的な固定方法がある。生物学的な固定方法では、無機的に存在する炭素である大気中のCO2を有機物質である炭水化物に変換し、植物体または土壌の中に固定する。

炭素算定(温室効果ガス排出量リスト作成)

炭素算定とは、地方政府や企業などを単位として、それらが社会活動や生産活動の中の各プロセスで直接的または間接的に排出する温室効果ガスを算定することであり、温室効果ガス排出量リスト作成とも言われる。(人民網日本語版論説員)

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「人民網日本語版」2022年7月18日

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