日本人ボランティア、学生の故郷を訪れて
田舎 |
江西省といってもピンとこない方が多いと思いますが、中国の南の方、福建省の西隣にあります。景徳鎮や廬山といえばご存知の方も多いのではないでしょうか。私は現在、省都の南昌市にある江西青年職業学院(高校卒業後に通う三年制の職業専門学校)という所で日本語教師として活動しています。中国へ赴任して、まもなく半年になろうとしています。
日本語科の学生は全員江西省出身ですが、今までに四ヶ所五人の学生の故郷を訪れました。その中で、一年生の実家を訪問した時のことをご紹介します。
学生の故郷は上高県という所で、いわゆる農村です。清明節で三連休だったので、四月三日-五日の三日間、お世話になりました。お母さんは遠くで仕事を、お姉さんも遠くの大学で勉強していましたが、私が来るというのでわざわざ帰って来てくれました。
食事はお父さんが作ります。一番の得意料理は「紅焼肉」という豚三枚肉の醤油煮で、毛沢東の大好物だったそうです。どれもとてもおいしかったです!
ところで、清明節とは日本でいう墓参り、お盆のようなものです。私も家族と一緒に、山にある三ヶ所のお墓を回るため、約三時間歩きました。身長より高い草や木を掻き分けながら進まなければいけない所もあり、辿り着くまでに一苦労。墓参りの仕方は日本とは異なります。まず雑草を刈り、お墓に土をシャベルで盛ります。その上に「紙銭」というお金をかたどった紙を並べ、その上に土の塊を載せます。紙銭は、あの世でもお金に困らないようにという意味があるそうです。その後線香(日本のより長いです)を立て、紙銭を焼き、最後はさすが中国、爆竹!こんな所でも爆竹を鳴らすとは…。本当に中国人は爆竹が好きです。しかし、あの音にはまだ慣れません…。
学生の家の造りは簡素で、お世辞にも生活環境がいいとは言えません。お父さんは一日中農業を、お母さんは遠くに働きに出ています。洗濯も少し離れた所にある川でします。実はお母さんは汽車で帰ってくる途中、四千元盗まれてしまいました。朝五時から夜九時まで休みなく辛い仕事をして稼げるのが一ヶ月二千元。つまり二ヶ月汗水垂らして稼いだ給料が一瞬にして水の泡に…。わざわざ私のために戻ってきてくれたので、何だか申し訳ない気持ちでした。
そして、学生が農村の現状についていろいろ話してくれました。貧しいが故に子供は教育の機会が与えられないこともしばしば。また、「重男軽女」(読んで字のごとく、男を重んじて女を軽んずる、男尊女卑)の考え方があり、女の子には教育を受けさせないことも。お父さんの弟もそういう考え方があり、長女は十二歳ぐらいから働かせているということです。向かいに住んでいるのに、学生のことも女の子ということで相手にしないそうです。なお、大学入試は点数によって上から一・二・三とランク分けされ、ここまでが四年制の大学(本科)に入学できます。本科に入れなかった人が行くのが三年制の専科。私の学校はこの専科です。農村ではランクが二までに入れないと高校卒業後、学校には行かせてもらえません。学生は「入試に失敗してしまったが、お父さんが教育を重んじているので学校に通わせてもらっている。お父さんに感謝している。だから、勉強を頑張らなくてはいけない」と。とても重い言葉です。
南昌はどんどん発展してきています。しかし、他の学生の故郷でも感じたのは、中国には非常に大きな「貧富の差」が存在するということです。いくらGDPが世界二位になろうとも、実際に国の実態を表しているわけではないということを強く感じました。ただ、みなとても明るく親切で、出会ったすべての方が歓迎してくれました。また、普通の家庭の雰囲気を味わうことができ、とても貴重な経験になりました。
22年度3次隊 江西青年職業技術学校 日本語教師 岡田麻衣
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