米国防総省は昨年発表したサイバー空間戦略で「Defense forward」という考えを強調した。外部はこれを米軍が米本土ではなく他国でサイバー攻撃・防御活動を実施するものと解釈している。米大統領も以前、阻まれることなく先進的サイバー兵器を配備する自由を軍に与えている。米国は現在、サイバー戦争への積極的な備えを通じて、勝者のいないサイバー戦争に全世界を引きずり込む動きを加速している。
米国の政治屋たちは長年、「サイバー真珠湾攻撃」に遭う危険性を鼓吹し続けている。だが、世界で初めてサイバー兵器を使用して他国の施設を攻撃したのは米国だ。米国は、サイバー戦争の最強国であるだけでなく、サイバー戦争の発動回数が最も多い国でもある。
2004年に米国の発動したサイバー攻撃で、リビアのトップレベルドメインは麻痺した。2010年、米国とイスラエルが共同開発した「スタックスネット」ウイルスがイランの核施設を攻撃。イランの遠心分離機1000台が廃棄処分される事態となり、同国の核開発計画はほぼ「停滞」に追い込まれた。2016年に米国のカーター元国防長官は、米国がサイバー手段を使用してシリアのISIS組織などを攻撃したことを初めて認めた。作戦手段としてのサイバー攻撃を米国が公にしたのは初めてだった。2019年3月初め、ベネズエラ全土で大規模な停電が発生。全23州のうち18州が影響を受け、交通、医療、通信、インフラが直接麻痺した。マドゥロ大統領は、同国の電力システムに対する「サイバー攻撃」を画策したと米国を非難。全国規模の大停電によって混乱を引き起こし、政府を退陣に追い込むことが目的だとした。直接的または間接的な軍事介入ができない中、ベネズエラに対するサイバー攻撃は米国にとって最良の選択肢だろうと分析される。
米国はサイバー空間での戦争に備える計画を停止したことがない。2016年末、米国はサイバー戦争の戦略的地位と作戦価値をさらに引き上げ、戦略軍隷下に置かれていたサイバー軍を統合軍に格上げし、大統領―国防長官―作戦軍司令官というサイバー戦争指揮系統を構築した。現在米軍は133のサイバー戦争部隊を擁する。2006年から2016年までの10年間、米軍は相次いで大規模演習「サイバーストーム」やサイバー宇宙戦演習を計7回実施。うち3回は中国を念頭に置いたサイバー攻撃・防御作戦活動だった。
米国のこうしたやり方について、コロンビア大学の研究者でサイバーセキュリティー専門家のJason Healey氏は「すでに米国は永久のサイバー戦争に滑り込んだ。そこに真の勝者はいない」と非常に憂慮する。
米国は自らのサイバー戦争能力を強化し続けることで、世界に悪い手本を示した。もし他の国々または米国と敵対する組織も米国を真似てサイバー戦争能力の整備と手段運用を強化すれば、米国だけが被害を受けずにいることは絶対に不可能であり、反対に真っ先に攻撃目標となる可能性が高い。攻撃し合うことでサイバーセキュリティーを実現するのは不可能であり、サイバー空間が対抗をエスカレートし続ける後戻りのできない道を歩むことになるだけだ。(編集NA)
「人民網日本語版」2019年6月14日