3月12日、米国証券取引所の3大株価指数は大幅に下落し、ダウ平均株価は1987年以降で最大の単日の下げ幅を記録し、恐怖指数(VIX)は70を超えて、2008年の金融危機以来の最高を更新した。大まかな統計によれば、12日には11ヶ国の株式市場で取引が一時停止したという。
米国のトランプ大統領は「金融危機ではない。乗り越えられる一時的なものだ」と繰り返し強調したが、市場は評価しなかった。恐慌に陥ったのは米国株だけではなく、新型コロナウイルスによる肺炎が重要な時期にさしかかると、世界の株式市場は取引停止によって経済の見通しに対する不安を示した。
金融危機が訪れるのだろうか。中国のA株は避難港になることができるだろうか。
12日は世界の株式市場が取引を停止
米国株式市場で相場を安定させるために取引を強制的に停止するサーキットブレーカーが発動されたのは3回で、そのうち2回が今週中のことだった。
まず9日に発動され、それから3日後の12日、米国株式市場は再び歴史的な日を迎えた。12日の取引開始から6分で、3大株価指数が全体で7%以上低下して、サーキットブレーカーが発動され、取引は15分間停止した。前回からわずか3日後のことだ。
取引再開後、3大株価指数は低下を続けた。大引けにはダウ平均は9.99%低下、ナスダック総合指数は9.43%低下、S&P500は9.51%低下した。ダウ平均とS&P500は、1987年のブラックマンデー以来で最大の単日の下げ幅を記録し、3大株価指数はすべて弱気相場入りした。VIXは40%上昇して終値は75.47となり、08年金融危機以来の最高を更新した。
米5大テクノロジー企業のアマゾン、アップル、アルファベット、フェイスブック、マイクロソフトの時価総額は、一夜にして4166億3千万ドル(1ドルは約105.1円)目減りした。
世界各国の株式市場も米国株と運命を共にし、欧州株式市場も同じく急落した。ストックス欧州600指数は下げ幅が10%に拡大して、史上最大の単日での下げ幅となった。ドイツ株価指数(DAX)とフランスのCAC40指数も下げ幅が10%を超え、英国のFTSE100指数は10%の下げ幅に迫った。
3月12日は世界的な取引停止の日とされる。大まかな統計によると、同日にはタイ、フィリピン、韓国、パキスタン、インドネシア、ブラジル、カナダの株式市場でも取引が停止された。このうちブラジルではブラジルボベスパ指数(IBOVESPA)の下げ幅が15%にも達して、今週3回目の取引停止となり、レベル2だった。カナダは株価指数の下げ幅が9.2%に達し、市場全体の取引が停止されるレベル1となって、トロント証券取引所は取引が一時停止され、市場再開後には下げ幅が一時10.5%まで拡大した。
リスク回避資産の金にも危機は及んだ。同日の金現物価格の下げ幅が一時3%を超え、1オンス=1600ドルの水準を割り込み、同1574ドルに低下して、年初以来の上げ幅をほぼ相殺した。
問題はどこにあるか?
問題はやはりトランプ大統領にあるようで、有効な措置を講じてないと見られ市場を大いに失望させた。3月11日夜、トランプ氏は全国に向けてテレビ演説を行い、新型肺炎の拡大を防止するため、欧州から米国へのすべての入国を30日間制限するなど、一連の措置を発表した。また政府が500億ドルの低利融資を拡充して、中小企業が困難を乗り越えられるよう支援することも打ち出した。
しかしこれまで約束するとした「極めて実質的な問題解決措置」に比べて、打ち出された内容は微々たるものだった。トランプ氏は株式市場暴落について、「金融危機ではない。乗り越えられる一時的なものだ」と繰り返し強調したが、市場は評価しなかった。
金融危機が訪れるのだろうか?
実際、取引停止だけでなく、世界の主要株式市場が持続的な下落の影響を受けており、MSCIワールド指数は2月の最高値より20%以上低下し、テクニカル分析でいう弱気相場に突入した。MSCI指数は世界のポートフォリオマネージャーが最も多用するベンチマーク(基準となる指標)だ。
市場アナリストは、「これから市場はさらに乱高下するだろう」と警告し、「私たちは今、市場の強気相場の終わりを見守っているところだ」と述べた。
米連邦準備制度理事会(FRB)の元副議長で経済学者のアラン・ブラインダー氏は、「新型肺炎の影響により、米国経済は衰退に陥ったのかもしれない。後々データを振り返り、経済の衰退は3月に始まったと最終的に確定されたとしても、自分はちっとも驚かない」と述べた。
現在、米株の下げ幅は20%を超え、技術的弱気市場に突入した。これについて、「米国株の11年の長きに及んだ強気相場が終わりを迎えるのでは」との見方がある。投資家の間では、「市場の下げ幅20%は米株市場の弱気相場突入の指標であり、こうした動きには往々にして長期的な悲観的ムードと一層の下落がついてくる」との見方が広がる。
ウォール街のベテラン評論家でユーロ・・パシフィック・キャピタル社の最高経営責任者(CEO)を務めるピーター・シフ氏は12日、「新型コロナウイルスは2008年の金融危機を上回る規模の衰退を引き起こす可能性があり、その根源は債務水準が高すぎることにある」との見方を示した。
今、よりはっきりとしたロジックが見えてきた。金融市場の動揺に対し、世界に広がる感染症、サウジアラビアとロシアの石油価格戦争は、いずれも導火線に過ぎず、真の問題は米国株式市場や米国経済そのものに存在しており、感染症の拡大はバブルを崩壊させる最初の一撃に過ぎないということだ。シフ氏は、「2008年の金融危機は不動産価格の下落によって引き起こされ、今回の危機は新型コロナウイルスによって引き起こされた。危機を招くのはバブルを破る針ではなく、バブルそのものであり、債務だ。08年に米国は債務によって危機を経験することになったが、今はもっと多くの債務があり、このことがさらに大規模な金融危機を招くことになる」と述べた。
実際、金融危機が終息してから、米国経済の回復ぶりはそれほど堅固なものではなく、FRBの超緩和政策に寄りかかって危機を回避してきたに過ぎない。5年間で、FRBのバランスシートは5倍拡大し、9千億ドルから4兆5千億ドルへと一気に増大したが、投入された「資金」が実体経済に流れ着くことはなく、金融市場に逆流することになり、米国の大手企業は無秩序に社債を発行し、研究開発への投資は行わず、それどころか自社株を買い続け、こうして土台が高くなり株価も自ずから上昇した。こうした虚構の中で、米国株のバブルはどんどん膨らんでいった。わかりやすく言えば、感染症は表面的なこと、株式市場のバブルも表面的なことであり、債務こそが真の本質だ。
このたびの感染症が本当に新たな金融危機を引き起こすかどうか、今はまだ結論が出せない。トランプ氏は、「金融危機ではない」とし、銀行と金融機関には十分な資本があり、実力は高いと繰り返し強調する。またトランプ氏は、米国政府は経済振興措置を取り、現在の状況が経済危機には発展しないようにするとしている。
A株は避難港になれるか?
国際株式市場が暴落する中、中国のA株市場が独自に好調を維持できるかどうかが、中国の投資家が今最も関心を寄せる問題だ。
3月12日、上海総合指数は1.52%低下して2923.49ポイントで引け、深セン成分指数は2.31%低下して1万941.01ポイントで引け、創業ボード指数は2.64%低下して2045.93ポイントで引けた。
新時代証券の潘向東チーフエコノミストは取材に対し、「中国経済は海外のエコノミーに比べて相対的に好調であり、人民元建て資産は一定のリスク回避先の特徴を示している。これにはA株を含む中国資本市場の動きが海外市場よりも好調になると予想されることも含まれる。しかし警戒も必要で、もし海外経済が大幅に低迷すれば、中国の産業チェーンや輸出にさらなる損失が出て、中国経済やA株に打撃を与える可能性もある」と述べた。
華■(品の口が金)証券は、「企業活動や生産活動が再開されるのにともない、中国は世界に先駆けて経済復興を果たすだろう。A株市場の避難港としての機能も長期的な配置の中で発揮されるだろう。3月はシーソー相場になる見込みで、これは中国を取り巻く市場に高い不確定性があることが理由だ。1日のうちに市場がパニック状態に陥る可能性もあるが、これは長続きせず、むしろ次の配置のチャンスだといえる」との見方を示した。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2020年3月13日