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熱乾麺、会いに来たよ!

人民網日本語版 2021年04月29日10:50

新型コロナウイルス感染が爆発的な広がりを見せていた2020年の2月、武漢がロックダウンし、中国全土が湖北省と武漢市に思いを寄せていた頃、あるイラストが人々の胸を熱くさせた。そのイラストには、病床に臥す武漢名物の熱乾麺を、中国各地のご当地グルメが隔離病室の外から「熱乾麺、がんばれ!」と応援するシーンが描かれていた。当時、このイラストに感動し、励まされた人は多いだろう。

私もその1人だった。感染者の回復を祈り、第一線で医療にあたる人々の無事を祈った。そして私は「熱乾麺、きっと会いに行くからね!」という文章を書き、「感染拡大がおさまったら必ず武漢に行き、熱々の熱乾麺を頬張りながら、『熱乾麺、会いに来たよ!』と言おう」と綴った。

■そして武漢へ

武漢のロックダウンが解除されてから1年ほど経った4月下旬。「中国有約 A Date with China」という取材活動に参加した私は、初めて武漢の地を踏んだ。高速鉄道で長江を越え、武漢の街に入ると、新緑に包まれ、花々が咲き乱れ、鳥たちがさえずる美しい都市が私を迎えてくれた。

武漢を象徴する歴史的建造物の黄鶴楼には、多くの観光客が訪れ、最上階からの眺めを楽しみ、黄鶴楼を象ったアイスをかじり、楚の文化をモチーフにした古代楽器のショーを楽しんでいた。2020年1月23日、新型コロナウイルス感染の拡大を受け、黄鶴楼は閉鎖。それから3ヶ月以上経った4月29日、感染症の拡大がおおむね抑制されてきたため、観光客の受け入れを再開した。取材の時点で、今年4月に受け入れた観光客数は2019年の67%まで回復。現在、1日あたりの観光客数は約1万1千人にのぼる

武漢を象徴する歴史的建造物の黄鶴楼(撮影・勝又あや子)

飲食店にも客が戻ってきている。漢口地区にある日本の焼き鳥店では、12時近くになっても多くの客が焼き鳥に舌鼓を打っていた。また、若者に人気のスポット・花園道のバーは、深夜1時になっても多くの若者で賑わっていた。

新型コロナウイルス感染対策はすでに常態化している。建物に入る際にはゲートのような形の自動体温検知器で体温を測定するところも多い。マスクについては、屋外では着用必須ではないが、博物館など公共施設や駅など多くの人が利用する施設では着用がかなり厳しく求められた。また、鉄道駅への出入りの際には、「健康コード」をアプリで読み取り、個人の健康状態と移動歴に基づいて与えられるコードを係員に提示することが求められ、このコードが緑色でないと「正常通行可」にならない。また、ワクチンの接種も進んでおり、街のあちらこちらでワクチン接種のために列を作る人々の行列が見られた。湖北省衛生健康委員会によると、この日の武漢市の感染者数は0人だった。

武漢駅の入り口に掲示された「健康コード」。何も問題のないことを示す緑色のコードでないと構内に入ることができない(撮影・勝又あや子)

■本場の熱乾麺

熱乾麺は、蔡明緯という人物が作り出したものだという。その蔡明緯が1928年に創始した蔡林記で、念願の本場の熱乾麺を食べた。太めの麺に黒胡麻ダレと醤油ダレがかかっており、大根の漬物が乗っている。トッピングコーナーに行けば、ササゲの漬物「酸豆角」など好きな具や、香菜やネギなどの薬味も好きなだけ入れられる。

武漢の戸部巷で食べた熱乾麺と蛋酒(撮影・勝又あや子)

本場の熱乾麺は、北京で食べるものより麺が硬くないし、ポソポソもしていない。タレも麺によく絡み、混ぜるのに苦労することもなかった。黒胡麻の風味も豊かで、地味深い味わいだ。熱乾麺と合わせるのは蛋酒と呼ばれるスープ。酒粕の風味が豊かな甘酒にふんわりかき卵という意外な組み合わせだが、慣れると意外とクセになる。この蛋酒は熱乾麺と「絶配」(これ以上ない最高の組み合わせ)なのだ。

地元の人によると、長江の水運が発達した武漢には水運関係の肉体労働者が多かったので、朝からしっかり食べる習慣があるのだという。麺が硬めなのも、腹持ちがいいようにということらしい。

■熱乾麺への思い

「熱乾麺は武漢名物。本場の味です」。市内の繁華街、漢街の熱乾麺店「蔡明緯」の店長を務める王倫炎さんは、自分でも「熱乾麺が大好き!」だという。新型コロナ感染症の拡大が最も深刻だった頃は、王さんも外の店で食べることができなかった。「どうやって作るかは分かっているので、家で自分で作って食べていた」そうだが、外の店で食べることができるようになった時の気持ちを聞いてみると、「あの感じ、あの味が戻ってきた!うれしかったですよ!それにとても美味しかった!」と目尻を下げた。マスクで口元は見えなかったが、きっと満面の笑顔だったに違いない。

「熱乾麺は武漢名物」と言う熱乾麺店の王倫炎さん(撮影・勝又あや子)

「武漢が大好きになってしまったんですよ」と話すガーナ人のロバート・ナニさんは、武漢で暮らして12年になる。そんなロバートさんは、「想念」という言葉でロックダウン中の熱乾麺への思いを表現した。「熱乾麺が恋しくてたまらなかった」という意味だ。熱乾麺は武漢で暮らす外国人までも魅力してしまったようだ。蔡林記で熱乾麺を食べながら、「インスタントもあるけど、やっぱり違うからね」とロバートさんは笑顔で言った。

「想念」という言葉でロックダウン中の熱乾麺への思いを表現したガーナ人のロバート・ナニさん(撮影・勝又あや子)

武漢の街は思っていたより大きく、広く、美しく、武漢の人々は活力と自信に満ちているように感じられた。その自信は、未曾有の災難を耐えしのび、感染をほぼ抑え込み、感染症対策を常態として続けたことで、コロナ前とほぼ変わらない日常を取り戻し、「英雄」と中国国内で称えられたことと関係があるのかもしれない。熱乾麺と蛋酒という武漢ならではの「絶配」を楽しみながら、武漢の力強さを噛みしめた。(文・勝又あや子)

「人民網日本語版」2021年4月29日

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