広く注目を集めていた第7回全国国勢調査の主要データの結果がこのほど発表された。それによると、中国の総人口は約14億1千万人で、人口増加の情勢には多くのプラス面の変化が見られたが、一連の構造的矛盾も顕在化した。特に、出産年齢にある女性の数が減り、合計特殊出生率が低下し、出生数が減少している。こうした背景の中、中国は「低出生率の落とし穴」にはまってしまったのだろうか。
若者はなぜ子どもをほしがらないのか?
国家統計局が発表した第7回国勢調査のデータによると、2020年の中国の総人口は14億1千万人に達し、世界の総人口の約18%を占め、依然として世界一の人口大国となっている。しかしデータからもわかるように、人口増加率は鈍化している。過去10年間の年平均増加率は0.53%となり、その前の10年間に比べて0.04ポイント低下した。
国勢調査データによれば、中国では二人っ子政策がスタートしてすぐの16年と17年は出生数が大幅に増加し、16年は1800万人、17年は1700万人を超えた。しかし18年以降は低下に転じている。20年は約1200万人まで減り、16年に比べて3分の1減少した。
北京、上海、広州などの大都市以外でも、子どものいる世帯には「家計」の負担が重くのしかかる。さまざまなコストが積み重なって、若者は子どもを持つ前に、昔よりもずっと複雑になった「帳簿」をしっかり計算しなければならなくなった。南開大学人口・発展研究所の原新教授は、「これまでは、子どもを一人多く生むことは『箸が一膳』加わるだけに過ぎなかったが、今ではこの箸はまるで『純金製』に変わったようにお金がかかるものになった」と述べた。
「子どもの世話をしてくれる人がいない」、「仕事が中心」というのも、多くの人が二人目を望まない主な原因だ。二人目を産むことで、女性は健康リスクも考えるようになる。年齢が上がると、出産は老化を加速させ、高血圧や出産後の血栓など合併症のリスクを増大させる可能性もある。
また、子どもを産み育てることのコストはすでに経済的要因だけとは限らず、時間的コストもあれば、社会的コストもある。女性の教育レベルと社会的地位が上昇するのに伴って、出産への意欲がどんどん低下し、子どもを産む時期が先送りされていく。
中国は「低出生率の落とし穴」にはまり込んだか?
国務院第7回全国国勢調査指導グループ弁公室責任者は、「『低出生率の落とし穴』にはまったかどうかは、特定の条件に合致しているかで判断される。中国がこの条件に合致しているかどうか、しばらく観察する必要がある」と指摘した。
同責任者は、「現在、中国の人口増加には一部の新しい状況や新しい変化が見られ、人口の主要な問題点が総量によるプレッシャーから構造的な課題へと変わっている。第7回全国国勢調査の結果によると、2020年、中国の出産年齢にある女性の合計特殊出生率は1.3で、すでに低い水準となっている。二人っ子政策が全面的に実施されて、出生数は短期的には回復したが、その後徐々に低下し、今は低水準で推移している。同時に、昨年の出生率低下は新型コロナウイルス感染症とも一定の関係がある」と述べた。
世界では一般的に、合計特殊出生率は1.5前後が「高度警戒ライン」とされ、一度このラインを割り込むと、「低出生率の落とし穴」にはまり込む可能性があると言われている。同責任者は、「『低成長率の落とし穴』にはまったと判断するには、2つの条件を見る必要がある。まず、合計特殊出生率が1.5以下になること。次に、低い出生率の時期がある程度持続することだ。試算によれば、2010年に行われた第6回以来となる今回の国勢調査の結果、中国の合計特殊出生率が初めて1.5を割り込んだ。1.5以下が続くかどうか、観察を続ける必要がある」と述べた。
また同責任者は、「注目すべきは、出生率の低さは世界的な現象であり、今後は経済社会の発展、特に工業化と都市化がもたらすライフスタイルや出産に対する見方の変化に伴って、出生率の低さとそれによってもたらされる少子化と高齢化が世界各国の共通の問題になるとみられることだ。中国は人口そのものの増加法則と人口と経済社会発展との相互連動の関係を全面的に把握することを基礎として、出生数の変動の流れを密接にフォロー・モニタリングしていく。また、関係当局は新たな状況や新たな変化を速やかに反映し、計画出産政策を最適化するために統計情報による有効なサポートを提供していく」と述べた。
低出生率の問題をどうやって解決するか
適切な出生数の実現を推進し、出産への意欲を高めるにはどうすればよいか。
復旦大学社会発展・公共政策学院社会学部の王豊特任教授は、「明確にしておかなければならないのは、出産は家庭のプライベートな問題だということだ。私たちがより議論すべきなのは、どのような社会に暮らしたいかということであり、この点を出発点としてより広義の社会政策を議論・策定し、人々がより生きやすい社会環境を作り出し、ジェンダー平等がより進んだ社会を実際に構築することが必要だ。人々のニーズを出発点として問題を検討すべきだ」との見方を示した。
王氏は、「私たちができることはたくさんある。比較的容易なものとしては、育児サービスを増やして充実させること、女性に産休を保障することだ。現在、男性にも育児休暇を与えるべきだという議論をする人もおり、こうしたことはいずれも容易に改善できる。より深いレベルの、より複雑な改善点、例えば不動産価格の抑制、医療サービスの質と効率の向上、性別の面で不平等な観念や制度設計の変更といったものはそれほど簡単で容易なものではない。まず簡単なところから着手し、複雑なことはよく考えて一歩ずつ改善すればよい。社会を変えるには長期的な努力が必要だ」と述べた。
中国・グローバル化シンクタンクの特別招聘上級研究員で「人口と未来」サイト共同創設者の黄文政氏は、「個人のレベルでは、すべての人に自分のライフスタイルを選択する権利がある。結婚したいと思う人もいれば、子どもがほしくないという人もいるし、子どもは1人でいいという考えも理解できる。出産の奨励は、生まない人や1人だけ生みたい人に対して決して懲罰的であってはならない。社会が持続可能な発展を遂げ、民族が代々続くようにするため、複数の子どもを産み育てる家庭の社会への貢献を補償し、子育ての負担を減らすことが必要だ」と述べた。
また黄氏は、「具体的な方法はたくさんある。たとえば税還付や現金による補助金支給などの方法で、複数の子どもがいる家庭に累進制の奨励策を適用し、公的な普恵型幼稚園を大規模に建設し、保育所サービスを行き渡らせ、学制の期間を短縮し、複数の子どもがいる家庭の住宅購入に際して土地使用権譲渡金を還付し、子どもの数と年金額が連動するようにし、『子育てデー』を設定するなどだ。もちろん、こうした出産奨励措置すべての前提は、低出生率の危機を直視することにある」と述べた。
国務院第7回全国国勢調査指導グループの副代表を務める国家統計局の寧吉■(吉へんに吉)局長は、「党の第19期中央委員会第5回全体会議で、出産政策を最適化し、出産政策の包括性を増強することが明確に要求された。第14次五カ年計画綱要でも、出生率の適切な水準を実現し、家庭の出産、育児、教育コストを軽減し、出産政策の潜在力を発揮させるよう推進することが明確に打ち出された。国家統計局の関係調査によると、中国の出産年齢にある女性が希望する子どもの数は1.8人で、相応の支援措置を着実に実施すれば、こうした出産の潜在力は十分に発揮されるだろう」と述べた。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2021年5月18日