中国情報通信研究院クラウドコンピューティング・ビッグデータ研究所の何宝宏所長は23日に行った「メタバースのユートピア」と題した講演の中で、「メタバースをめぐる一部の言説や野望は技術の現状を超えており、メタバースの目標は段階を追って実現するしかない。さらにインターネットの終点はメタバースになる可能性はなく、将来のインターネットは必ずユビキタス(至る所に存在する)になる」と述べた。中国新聞社が伝えた。
何氏は同日に行われた2022年(第12回)中国インターネット産業年次総会の席上で、長年にわたりネットを研究してきた何氏は今、最も話題の概念「メタバース」に言及して、「ネットの発展の中で、多くの技術やデバイスがネットにアクセスする入り口の座を争っている。ウェアラブルデバイス、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーンなどで、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)デバイスを入り口とするメタバースもそのうちの1つだ。ただこれまで10数年に及ぶ入り口争奪戦の中では、スマートフォンが現世代のネットの中心の位置にどっしり座っていた」と述べた。
何氏は、「メタバースの概念の出現には、合理的な一面があり、たとえば人類には新しい体験、新しい美意識が必要というのがそれだ。しかしメタバースを取り巻く目下の一部の野望や言説は、技術の現状を超えてしまっている」との見方を示した。
たとえば、メタバースのコアデバイスとしてのVRゴーグルは、現時点では普通の眼鏡の10倍から20倍の重さがあり、こんな重いものは長くかけていられない。重さが今の10分の1になればかけていられるが、そこにたどり着くまでどれくらい時間がかかるかわからない。
また、VR/ARゴーグルのバッテリー持続時間は、今は大体30-40分ほどで、画質や解像度をさらに上げると、もっと短くなる。人には五感——視覚、聴覚、嗅覚、触覚、感覚などがあり、VRゴーグルはこのうち視覚と聴覚しか伝えることができず、想定されているような没入式の体験を提供することはできない。そのためコアデバイスとなるためには、ゴーグルに大きな技術改良を加えることが必要だ。
ハッシュレート(演算速度)もボトルネックだ。メタバースは仮想と現実が融合した3Dインターネットの時代に入り、ハッシュレートが指数関数的に上昇しなければならない。何氏は米半導体メーカーのNVIDIAの専門家が試算した内容を引用し、「メタバースの構想に基づけば、少なくとも現在の10の6乗倍のハッシュレートが必要になる」と述べた。
何氏によると、今はメタバースの一部分しか実現できず、今後5年間でゲーム、エンターテインメント、教育、文化、芸術などの分野で一部の幅広い応用が実現するだろうが、他の分野についてはまだしばらく時間がかかり、関連技術をさらにプラットフォーム化、汎用化、工程化する必要があるという。
また何氏は、「将来のインターネットの終点も決してメタバースではなく、デジタルトランスフォーメーションがますます広がりをみせるのに伴って、インターネットが各業界に浸透し、形のないものになる。ここにこそ真の偉大さがある」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年12月24日