動画配信サービスの愛奇芸(iQIYI)が15日、今月16日からゴールドVIP会員の会費を値上げすることを発表すると、たちまち注目が集まった。「羊城晩報」が伝えた。
2018年に愛奇芸が上場した時、龔宇最高経営責任者(CEO)は「愛奇芸がベンチマークとしているのは米国の大手コンテンツプラットフォームのネットフリックス(Netflix)だ」と言ったが、今では「ネットフリックスのようになる夢」から一歩遠ざかった。そのネットフリックスは引き続き常勝街道を歩んでいる。
21年第3四半期(7-9月)にネットフリックスの営業収益は前年同期比16%増の74億8300万ドル(1ドルは約113.4円)、世界の有料ユーザー数は438万人純増し、純利益は同83.4%増の14億4900万ドルに達し、1株あたりの収益は3.19ドルで、ウォール街の予測の2.56ドルを上回った。
設立から20年、DVD宅配レンタル事業からスタートしたネットフリックスの収益モデルのどのような点が参考になるだろうか。
「堀」を作り、キラーコンテンツで勝負をかける
ネットフリックスと言えば、一連の大人気ドラマの名前が人々の頭に浮かぶだろう。
13年に初のオリジナルドラマの「ハウス・オブ・カード 野望の階段」が放送され、1話あたりのコストは400万ドルにも上った。試算によれば1年で有料ユーザーが100万人増えなければコストは回収できないということだったが、放送されるや大成功を収め、ネット配信ドラマとして初めてエミー賞にノミネートされただけでなく、13年第1四半期(1-3月)には新たに300万人のユーザーを獲得した。
21年9月に放送された「イカゲーム」も世界中で大人気だ。ネットフリックスの決算によると、このドラマは同社始まって以来、最大の視聴規模を記録したものとなり、放送開始から4週間で世界の1億4200万人が視聴した。ネットフリックスの現在の世界有料ユーザー数は2億1400万人で、ユーザーの約3分の2がこのドラマを見たことになる。このドラマの制作コストは全体でわずか2140万ドルで、1話あたり240万ドルになる。ネットフリックスの内部は、「イカゲーム」がコストの40倍以上にあたる約8億9100万ドルの収入をもたらすと見込んでいる。
「オリジナルコンテンツで『堀』を固めるのが、ネットフリックスの成功の秘密の1つだ」といえる。
ユーザー体験を重視 コンテンツにお金を出す習慣を育成
中国の長編動画コンテンツプラットフォームにあふれるおびただしい数のCM、しょっちゅう値上げされる会費、プレ放送などのさまざまな収益モデルが視聴者から絶えずツッコまれ、時には消費者の権利保護の訴訟に発展することもあるという時に、一方のネットフリックスは良好なユーザー体験を非常に重視してきた。
20年のネットフリックスの業績報告を見ると、収入の99%は会員が納める会費で、1%はDVDサービスだ。ネットフリックスのドラマを見たければ、会費を払って会員になるしかない。会員が支払った会費に見合うようにするため、ネットフリックスはドラマの第1シリーズを一気に放送するという放送モデルを打ち出し、会員を大いに満足させるようにする。ネットドラマの持つ短い、小規模、選びぬかれているといった特徴(大体10話で終わる)により、ユーザーは数日で最終回まで見ることができ、これは優れた作品を世界規模で急速に拡大させ、話題性や注目度、話に上る回数を押し上げる上で有利であり、また海賊版を防ぐ上でも効果がある。
北米を出て世界化戦略のカードを切る
単一の市場のユーザーの増加はいずれ天井にぶつかるとして、ネットフリックスは16年からグローバル化戦略をスタートし、北米地域から外へ出て、世界中の観客を囲い込もうとした。2017年第3四半期、ネットフリックスの世界のプレミアムユーザー数は米国本土のプレミアムユーザー数を超えていた。
新市場の開発にはチャネル、運営、協力などの問題を解決することが必要なだけでなく、ユーザーごとに全く異なるコンテンツの好みを研究し、現地のコンテンツチームと競争しなければならないが、ネットフリックスはすでに相当の成果を収めている。異なる地域のクリエイターやチームとの協力を選択することも、模索の末にたどり着いた近道だ。「イカゲーム」はこうした背景の下で成功した実践例であり、その名に恥じない世界的大ヒットドラマであり、ネットフリックスのグローバル化戦略の成功・推進の様子を示している。
ネットフリックスの決算によると、同社はすでに世界45ヶ国・地域で現地化されたテレビドラマや映画を制作しているという。ネットフリックスは世界各地の優れた人材を囲い込み、自社のために優れたコンテンツを提供してもらうようにすると同時に、世界各地の視聴者からの会費を自社の懐に収めることにも成功したといえよう。
多様化した経営 新たな競争の道を模索
コンテンツだけでなく、ネットフリックスは新たな競争の道も絶えず模索している。
年初以来、ネットフリックスはゲームの分野でいろいろな動きをしてきた。11月3日にはモバイルゲーム5種類をリリースした。EC分野も新しく力を入れる点で、すでに16年に米国の若者向けのファッションブランドのホットトピックとコラボしてドラマ「ストレンジャーシングス」のグッズを売り出した。今年の中ごろに、独自のECプラットフォームであるNetflix.shopを開設すると発表し、傘下の人気ドラマの関連グッズを販売しようとしている。
特筆すべきなのは、「ゲーム+EC」は中国の動画サイトもかなり早くから試してきた多様化経営の道でもある。将来、世界の大手と中国の大手とどちらがこの新たな道の上で勝利を収めるか、今はまだわからない。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年12月21日