「人間として嘘を言うのは嫌だし、嘘の歴史がまかり通るようになってはいけない。社会が事実をごまかした場合は、間違った道を歩むことになる。それは戦前の教訓だ」。南京大虐殺問題を研究する日本の専門家で、都留文科大学名誉教授の笠原十九司氏はこのほど、山梨県の自宅で単独インタビューに応じた際、こう語った。新華社が伝えた。
山梨県の自宅でインタビューに応じる笠原十九司氏(撮影・楊光)
笠原氏(78)は、1980年代初めから40年近くにわたり南京大虐殺の歴史を研究してきた。南京大虐殺の惨事の発生から、今年で85年になる。笠原氏は「日本の政治家や国民にもっと南京を訪れて真実を知り、過ちの歴史を反省し、正しい歴史教育を通じて戦争の惨劇が二度と起こらないようにしてほしい」と語った。
笠原氏が南京大虐殺の歴史を研究し始めたのは、大学時代の恩師である家永三郎氏が起こした「教科書裁判」がきっかけだった。著名な歴史学者である家永氏は、自身が編纂した高校教科書『新日本史』の中で南京大虐殺に言及した。だが日本の文部省は教科書検定で、複数の記述について家永氏に修正や削除を要求した。家永氏は妥協を拒み、教科書検定は憲法と教育基本法に違反するとして、日本政府を提訴した。法廷で恩師を支援するため、笠原氏は自ら南京を訪れて現地調査を行い、法廷で証言し、最終的に家永氏の一部勝訴に寄与した。
笠原氏は長い間、緻密な姿勢で研究・著述活動を行い、中国侵略日本軍による南京大虐殺の歴史の真実を暴き出してきた。笠原氏は現在までに、南京大虐殺の歴史に関する専門書を単著10冊以上、共著30冊以上出版した。
インタビューの際、笠原氏は著書を何冊か見せてくれた。笠原氏は赤い表紙の本を手に取り、「これは私が1997年に出版した『南京事件』で、今でもまだ売られている。累計で10万部以上売れた」と語った。
絶えず研究を続け、声を大にして訴えてきたため、笠原氏はしばしば日本右翼の批判にさらされてきた。一部の右翼は、ネット上への書き込み、あるいは直接メールやファクスを送りつけて笠原氏を脅迫してきた。これに対し、笠原氏は「多くの人は脅されたら黙ってしまうが、脅されて黙ってしまうことが一番危険だ。だから私は執筆や講演を続けている。私の力は限られているが、声を上げることができる間は、できる限り声を上げることを選ぶ」と笑顔で述べた。
脅迫を受けても、笠原氏は自分が孤立無援だとは感じることはなかった。「私を講演会などに呼んでくれる人もいるし、私の本を読んでくれる人もいる。南京大虐殺85周年の記事で私に原稿を頼んでくる新聞社もある。多くの人たちは黙っているけれど支持はしてくれているという信頼はある。孤立はしていないという自信はあるし、そういう実感もある」と笠原氏は言う。
南京大虐殺の歴史問題は、長い間「世界が注視し、日本は沈黙する」状態にある。笠原氏一人の力では、誤った歴史観を完全に変えることはできない。日本の右翼保守勢力が苦心してきた結果、第二次世界大戦の歴史に関する日本社会のナラティブはますます歴史の真実からかけ離れ、日本の戦争犯罪をなかったことにするものとなっている。
これについて笠原氏は、歴史問題を解決し、中日関係を真に改善するためには、日本社会全体のレベルで歴史教育を強化しなければならないとの認識を示した。「間違った歴史を反省して、教育によって理性的思考を身につけてこそ、戦争の悲劇を繰り返さないことができる。幸い、現在の日本の若者はインターネットなどを通じて、真実の歴史を知ることができる」と笠原氏は言う。
笠原氏は、日本の一部政治屋が依然として日本の侵略戦争を真に反省していないことを指摘。彼らが勇気を奮い起こして、南京を訪れて歴史の真実を知ることを望むとした。「ドイツ連邦共和国の首相であったヴィリー・ブラント氏のような人物が日本にも現れることを期待する」と笠原氏は語った。(編集NA)
「人民網日本語版」2022年12月14日