香港地区の俳優・梁家輝(レオン・カーフェイ)の初監督作品となる映画「深夜食堂」が7月3日、深夜の食堂で出されるさまざまな料理が登場する予告編と「不打烊(店を閉めずにお待ちしています)」という内容のポスターを公開し、8月30日公開を発表し、ハートウォーミングな本場の中国の味で観客の味蕾を刺激する。
「深夜食堂」の原作は安倍夜郎が描いた癒し系の連載漫画で、2009年から日本で何度も同名のドラマが放映され、中国にも多くのファンがいる。ネットユーザーから最も「マスター」を演じるのにふさわしい俳優の一人に選ばれている梁家輝は、初の監督主演作品の題材にこの名作を選んだ。そして、「中国らしさにあふれた深夜食堂を作り上げ、中国の料理を作り、中国の普通の人々の物語を描きたい」と語っている。
撮影中から、ネットユーザーらは次々と「梁家輝版『深夜食堂』で中国らしさあふれる深夜食堂を見たい」とのコメントを寄せていた。予告編では、お湯でゆでた麺や手作りのワンタン、油で揚げたエビなどが順に登場し、どれも観客におなじみの家庭の味で、見た瞬間たちまち食いしん坊たちに家庭の味にまつわる暖かな記憶をよみがえらせている。
失敗作続きの日本人気ドラマのリメーク版
近年、中国国内のテレビではリメークドラマが引っ張りだことなっている。リメークドラマが人気なのは、視聴率至上論と密接な関係がある。プロデューサーの大楠氏は、「『ドラマ1本にスター2人』政策が打ち出されたことで、もともと熾烈だったテレビドラマ市場争奪戦がいっそう白熱化した。テレビ局の資源もますますひっ迫したため、自局が高い値段を払って買ったドラマをほかの衛星テレビ局とも『共有』することを望むようになり、これがリメークドラマ流行の伏線となった。テレビドラマを自前で制作しようとした場合、リメークドラマはすでに市場基盤があるため、ますます多くのテレビ局やウェブサイトがリスクを軽減できることに気づいた」と語る。映画・テレビ業界関係者の張嘉埔氏によれば、こうしたリメークドラマは「万金油」のようなもので、多くの投資元が、リメークドラマはうまくいけば知名度も利益も上がり、うまくいかなくても話題になった分だけ元は取れるので、「儲けはあっても損をすることはない」と考えているという。
残念なことに、リメークドラマの視聴率は悪くないが、大多数のリメークドラマの質はオリジナル版には遠く及ばない。
前回の黄磊(ホァン・レイ)版「深夜食堂」は放送後に低評価が相次いだ。コミュニティサイトの「豆瓣」では、オリジナル版は13万人近くが評価し、ポイントは依然として9.2にも達しているのに対し、リメーク版の評価人数は10万人以上で、ポイントはわずか2.8となっている。黄磊の弟子・張芸興(ジャン・イーシン)が監督した中国版「求婚大作戦(プロポーズ大作戦)」の評価も低く、オリジナル版は豆瓣の評価が8.8と高評価であるのに対し、リメーク版はわずか3.8だった。学園純愛ドラマの「一吻定情(イタズラなKiss)」はオリジナル版の評価が8.4なのに対し、リメーク版はわずか4.6だった。
リメークドラマの立て直しは「ローカライズ」がカギ
リメークドラマで失敗が続いている原因を突き詰めると、主にはリメーク作品の「中国化版」が形のみで中身を伴っていないことが挙げられる。つまり、オリジナル版の作品をなんら創造性を発揮することなく貼り付け、コピーしているのだ。大きくはシーン設計、小さい点では登場人物のセリフや演出に至るまで、オリジナル版と完全に一致している。
当時から、黄磊版「深夜食堂」の最大の問題は「ローカライズ」にあると指摘する評論があった。完全に日本のスタイルを模倣し、外形をほとんどそっくりに模倣し、店の内装やマスターのいでたち、食べる料理、さらには起こる出来事に至るまでほぼ全て引き写しにし、料理から派生する精神はほとんど飾り物と化し、ストーリーのためのストーリーとなり果て、完全に本来の意味から乖離していた。ドラマの中の「老壇酸菜麺(高菜スープ麺)」で多少は親しみやすさを感じられたほかは、人物設定やストーリーがどっちつかずの得体のしれないものになってしまい、最終的に評判が落ち、視聴率もふるわないという決まりが悪い局面となってしまった。もともとは大衆的で日本の現状に合ってたために多くの人から共感されていた日本の物語を、そっくりそのまま中国という大きな背景に当てはめたことで、視聴者がドラマに入り込むことができなくなり、物笑いの種になってしまったのだ。
視聴者はしばしば、リメーク後の中国版ドラマのほとんどが新鮮さに欠き、オリジナル版をなぞるか新しさを創作するかの間で逡巡しており、その結果往々にしてオリジナル版の味わいを失い、そのくせ新しい境地も生み出せず、視聴者にパクりだという印象を与えていると感じている。現在ほとんどのリメークドラマは上っ面の段階にとどまっている。映画・テレビ評論家の「牛角尖」さんは、「単に乱暴に役者を交換し、物語の背景を変えることが、リメークの過程においてできる最大のアクションになっているように見える。本当の意味で中国の事情に合わせたアレンジをするレベルにはまだ遠く及ばない」と指摘する。ある専門家は、「リメークは一種の映画・テレビ作品の翻訳であり、正確さだけを求めるのであれば、最も良いのは優秀な機械翻訳だろう。本当の意味でオリジナル版の内包するものを理解した上で有機的な置き換えと改編をして初めて、『信・達・雅(偽りがなく、意を尽くし、表現が優雅)』なリメーク作品を作ることができる。もしこの点を理解できないのであれば、リメーク版が失敗する決まりの悪い局面が今後も続くだろう」としている。(編集AK)
「人民網日本語版」2019年7月9日