中国と米国が第1段階の貿易合意文書をめぐり一致してからというもの、中国内外の世論はこのことに非常に注目し、次のような興味深い状況もみられる。
第1に、中米双方とも世論では「自分たちが損をした」という声が主流で、米国の上院民主党議員総会のチャック・シューマー議長をはじめ、「トランプ大統領が米国の国益を売り渡し、中国に降参した」と怒りに震える人々もいる。するとトランプ氏は「泣いたって無駄だよ、チャック」とツイッターでやり返した。
合意に不満な人が双方にいるということは、双方とも妥協せざるを得なかったということで、言い換えれば合意が相対的に公平だということになる。なぜこのような結果になったのか。つまるところ、交渉当事者双方の実力のぶつかりあいと利益のせめぎ合いが根本的な原因だ。
第2に、特別な立場にいる人々の態度に変化がみられた。これまでコメントを出し渋ってきた米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表が、最近はしきりにメディアの取材を受けるようになり、合意や交渉の中身について意見を発表しただけでなく、公開の場で、「私たちは自由市場システムであり、彼らは国有社会主義システムだ。私たちは2つのシステムが一緒にやっていける方法を見つけなければならず、その試みは始まったばかりだ」、「私たちがともに豊かになる方法を見つけ出すことを願う」と述べた。
中米貿易交渉において人権の問題を話し合ったかどうかと聞かれたライトハイザー氏は、「自分は貿易についてのみ責任を負う。全ての問題を一緒くたにしようとするなら、何事も成し遂げられないだろう」と述べた。
どのような目的であれ、どのような判断であれ、ライトハイザー氏の中国に対する評価の変化から、中米経済運営制度の「調和はするが同じにはならない」という実際の状況に対する米国上層部の態度がうかがえ、これまでずっと対抗する態度だったのが(時には一方的に中国を変えようとしてきた態度だったのが)徐々に調和を求める態度へと転換していることがわかる。「2つのシステムが一緒にやっていく」ためには、調和こそが新たな中米経済貿易関係が順調に発展するための実務的な前提条件になる。
第3に、メディアの視点と言い方にも変化が起きた。
例えば、米CNNの専門家は次のような論考を発表した。
「中国の貿易活動はトランプ大統領などが批判するほどひどいものではなく、中国の知的財産権保護は進歩を遂げ、外資系企業が新たに設置された知財権保護裁判所に提起した訴訟68件はすべて勝訴した」。
「中国のパワーは常に内向的であり、世界2位のエコノミーとして、中国の影響力が国外に波及することは避けられないが、中国はいつも防御のためや受け身のやり方でパワーを使用し、中国の台頭は必ずしも国際システムの安定を破壊するとは限らない」。
米経済誌「フォーブス」は次のように述べた。
「この40年間に中国が経済と科学技術の分野で驚異的な進歩を遂げることができたそのカギは、市場の力と国家による干渉とを巧みに結びつけたことにある。米国が中国に求めるのはこうした経済構造を放棄することだ。中国が米国の要求に絶対に応じないとことは容易に想像できる」。
口で筆で中国の経済制度を批判し、海外企業が中国で受ける不公平な待遇に不満を抱え、中国を世界貿易機関(WTO)に加盟させた後で思惑通りに中国を変えることができなかったと米国政府を批判していたのが、中国の着実な進歩を認め、中国の経済運営にみられる構造的な違いを認識し、現実の問題から逃げて自分も他人も欺こうとする米国の態度を反省するようになった。米国主流メディアがこのように変化した最も直接的な推進要因は、この20ヶ月あまりに及ぶ貿易戦争で勝敗がつかなかったことだ。この戦争を発動した当初、米国は自信満々で、「貿易戦争はよいものだ、すぐに勝てる」としていたのが、その後、「タイムテーブルは設けない」に変わり、さらに「話し合い」と「攻撃」がくるくる入れ替わる中で、中国の攻撃に耐える力と対抗策の効果がはっきりと現れてきた。このことは米国人に中国を認識し直すよう1万回叫ぶよりも効果的だった。
国の実力が国際的な発言権を決定する。中国の総合的国力はまだ米国とは大きな開きがあるが、現実に即して言えば、今の世界では、中国以外のどの国も米国の2年に迫る猛攻撃に抵抗できない。しかし中国は対抗しただけでなく、引き続きどっしりと立ち続けた。これこそ米国に驚きの目を見張らせ、中国に近づいて詳しく見てみたいと思わせた根本的な原因だ。
また長引く対立の中で、米国の政府関係者、メディア、国民はここ数年来みられなかった密度と熱意で情勢の変化に注目するようになり、現実と仮定の中の米国のライバルに注目するようになった。そうして中国がこれまで抱いていたイメージとは異なることに気づいたのかもしれない。
ジョン・キング・フェアバンク氏からヘンリー・キッシンジャー氏、ビル・ゲイツ氏からピーター・ウォーカー氏を含む数多く米国のエリートたちが、米中は理解を増進し、理性的・実務的で、一時的な感情にまかせて事態に対処しないということをして初めて、溝を管理・コントロールでき、協力を促進できると強調してきた。
中米が第1段階の経済貿易合意で一致したからといって、これから永久に問題が起こらないというわけではないが、少なくともエスカレートし続ける貿易摩擦にブレーキをかけることはでき、それぞれに仕切り直しする時間と空間を提供し、双方は静かになり考えることができた——
相手の自分と異なる点を受け入れ、変化を強要しないことこそ、成熟した健全な関係を結ぶための認識の前提だ。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月23日