11月11日午前0時に、ダブル11(ネット通販イベント)が開幕し、ECサイト・天猫(Tmall)の取引額はわずか96秒で100億元(1元は約15.6円)を突破した。これは去年より29秒も速い100億元達成だった。そして同イベントは12日午前0時に閉幕し、総取引額が2600億元の大台を超えて、2684億元に達した。ECサイト・京東の売上高も絶好調で、今月1日から11日にかけて、取引額が累計で2044億元以上に達し、昨年の1598億元と比べて約28%増となった。
11月11日はもともと、1が4つ並ぶため、恋人のいない中国の大学生が「バレンタイン」に対抗して「独身の日」としたのが始まりだった。阿里巴巴(アリババ)集団はそこにビジネスチャンスを見出し、「独身の日」をネット通販イベントの日にした。そして、各大手ECプラットフォームが同イベントを開催するようになり、多くの消費者が事前に商品を「買い物かご」に入れておき、ダブル11の開幕を待つようになっている。
「爆買い」が「ダブル11」の永遠のテーマだが、2009年からこれまでの11年の間に、消費者が買う商品に大きな変化が生じており、中国の人々の消費理念や消費ニーズの変遷をも反映している。「安い商品を買う」から「高品質の商品を買う」へ、「値段重視」から「個性重視」、「サービス重視」へと変化しており、「買い物かご」に入っている商品を見ると、中国の商業消費の高度化、世代交代が反映されている。>>>ダブル11に何か買わないと「損」?
▽購入商品の変化が消費の高度化を反映
11年前、中国の消費者がECで購入するものと言えば、主に衣食住交通関連の商品だった。現在、中国人の「買い物かご」に入れられている商品を見ると、有名ブランドの商品もあれば、個性的なオリジナル商品、健康用品・食品、エコ・環境保全関連製品、中国国産の定番商品、海外の高品質商品、中国の農家が生産した新鮮な野菜・果物、海外の特色ある生鮮食品などもある。
以前、「買い物かご」の主役というと、食品や衣類だったが、今はそれが旅行やスポーツ関連の商品になっている。多くの消費者は、「ダブル11」にレストランや旅行の予約をしたり、各種教室やジムなどの申し込みをしている。京東のライフサービスが発表した統計によると、今年11月1日から10日にかけて、オーダーメイド旅行系の売上高が前年同期比で6倍増となり、中国国内のビーチリゾートのホテルの取引額が前年同期比360%増となった。その他、京東の「1時間で届く花」の注文数が前年同期比10倍増となった。
またこれまでの「ダブル11」では、業者が売る商品を消費者が買うというスタイルだったのに対して、今の「ダブル11」は、消費者が必要としているものを、業者が作るというスタイルに変化している。
浙江省慈溪市の販売業者である余雪峰さんは取材に対して、「健康、軽食などの観念がトレンドになっているのを背景に、各企業は若い消費者のニーズにターゲットを絞り、手軽なトースターを打ち出し、1時間で2500台以上売れた」と説明する。
今年の「ダブル11」に、天猫では、出張美容サービス、ぜいたく品や家電のメンテナンスなどサービス商品55種類もリリースされた。「居然之家」と「紅星美凱竜」は、「家の内装デリバリー」を打ち出し、北京、上海、重慶など、15キロ以内の場所であれば、家具をデリバリーのように届けてもらうことができる。
▽中国商品だけでなく輸入商品も人気に 高い市場のポテンシャルを反映
開放が深さと広さにおいて拡大し続けている上、スマート物流が高度化しているのを背景に、消費者は自宅にいながら世界中から商品を取り寄せることが普通のことになってきている。今年の「ダブル11」の予約販売の時点で、越境ECサイト・考拉海購では、マタニティ・ベビー用品とスキンケア用品の売上高が137%増と163%増に達し、デジタル製品、健康食品、家具などの売上高も100%近くの増加となった。第2回中国国際輸入博覧会では、スペインの本マグロ、イタリアのオリーブ油などの輸入品が並んだ。
同博覧会初日の今月5日、京東は、今後3年の輸入商品の仕入れ額目標が4000億元であることを発表した。
天猫における輸出入事業の責任者である劉鵬氏によると、同博覧会に出展したブランドのうち、新ブランド113社が越境ECサイト・天猫国際に進出し、中国市場に初めて参入する。現時点で、78ヶ国・地域の2万2000ブランド以上が同サイトに進出し、4300種類以上の商品を販売している。
今年、海外ブランドは天猫国際への進出の足並みを早め、300%増を実現した。そして、売上高が1億元の大台に達したブランドは80以上に達した。
中国市場の非常に旺盛な購買力を目にして、アマゾンも「指をくわえて見ているわけにはいかない」とばかりに、「ダブル11」に参戦した。今年参戦したのは、アマゾン米国、アマゾン英国、アマゾン日本、アマゾンドイツで、特設コーナー「ダブル11」を打ち出して、人気国際ブランド60ブランド以上が、特別割引を実施した。
統計によると、EC浸透率が高い中国と比べて、浸透率が10%にも達していない先進国も一部ある。
▽農村部の購入者が増加中 新たな活力注入
今年の「ダブル11」を通して、農村部に住む若者の高い購買力が再び示された。ECサイト・拼多多の統計によると、11日午前、長安、五菱宏光、観致、名爵、宝沃などの自動車メーカー5社が「ダブル11」に販売した車両は全て完売となった。購入者の多くが、三・四線都市の消費者だった。
趙萍氏は、「都市化が継続的に進み、都市部の住民と農村部の住民の収入格差が縮小し、中所得層の人々の消費のポテンシャルが大きくなっており、これらの要素は今後、消費市場の安定した発展を強く支えるだろう」との見方を示す。
▽「売り方」も大きく変化 ライブコマースがトレンドに
今年の「ダブル11」の「最大の主役」となったのは、ライブ配信で商品を説明、販売するライブコマーサーたちだ。「ダブル11」においてライブコマースはその実力を存分に発揮し、各大手ECの重要なマーケティング手法となり、淘宝、京東、快手、抖音、蘑菇街、網易考拉などが続々とその手法を採用した。
2018年、淘宝ではライブコマースを通じた売上高が1000億元を超えた。今年の「ダブル11」は、予約販売の段階で、淘宝に進出している1万7000ブランドがライブ配信を行い、予約販売高が1億元を突破した商品も多い。ある自動車の予約販売高はわずか6分で1億元を突破し、1秒で55台売れた。多くのショップがライブ配信を今年の「ダブル11」の最大の成長源と見なしている。
阿里研究院が会計事務所・デロイト・トウシュ・トーマツなどと共同で発表した「中国輸入消費市場研究報告」によると、ライブコマースは集客力が高く、輸入新消費形態を牽引するようになっている。2019年、ライブ配信を採用した各種輸入消費品の閲覧回数は激増し、それにより購入した人の数や購入額なども爆発的な増加を見せた。例えば、19年7月から9月にかけて、天猫国際においてライブ配信を採用した商品の閲覧回数は2018年同期の855万回から3503万回に増加、誘導した支払金額も6159万元から4億7000万元に激増した。うち、コスメ、健康用品・食品業界の成長が特に著しかった。
ライブコマースがこれほど人気となっているのはなぜなのだろう?その理由の一つは、芸能人やモデルと比べると、ライブコマーサーのほうが庶民的で、彼らが勧めたほうが説得力があるという点だ。
中国EC協会の上級専門家・荘帥氏は、「ライブ配信のほうが、直観的にライブコマーサーとユーザーが信頼関係を築きやすい。また、ライブ配信による販売の場合、ショップのイメージをデザインしたり、写真を撮影したりする必要がないため、販売のハードルが低く、業者はすぐにインターネットを通じて商品を大量に販売することができる」と説明する。
その他、以前のような画像+文字での説明では、商品の細かい点までを説明することはできないのに対して、ライブ配信なら、消費者は商品の形態や機能などを網羅的に知ることができる。そして、なんといってもライブ配信の最大のメリットは「インタラクティブ性」だ。
▽買う方法にも大きな変化 テクノロジーの進歩を反映
ビッグデータを使ったプッシュ通知、偽物商品防止のためのブロックチェーン技術のトレーサビリティへの応用、AIスマートカスタマーサービスなど、技術の「超進化」により、ユーザーに全く新しいショッピング体験がもたらされている。
以前はパソコンでUSBセキュリティキーを使って決済を行っていたが、今は顔認証システムや指紋認証システムなどを使ってあっという間に決済が行えるようになっている。中国ではモバイル決済が早くから人々の普段の生活にも広く浸透し、今やオンラインビジネスでは不可欠な一環となっている。そして、決済の過程で生まれる大量のデータが、社会信用体系を構築するための重要な情報の出所となっている。今年の「ダブル11」では、音声によるショッピングが現れた。「天猫精霊」に向かって「○○が買いたい」と言うだけで、注文が完了するのだ。声紋認証の手続きを済ませておけば、音声決済も行える。
ライブ配信を行っているアカウントには数え切れないほどのネットユーザーが出入りし、いろんな質問が飛び交うが、ライブコマーサーがてんてこ舞いになってしまうことはないのだろうか。そんな時に活躍するのが「AI秘書」だ。ライブコマーサーをサポートし、代わりに商品やクーポン券に関する質問に答えるなどは朝飯前。つまり、ライブ配信アカウントへの問い合わせのほとんどに「AI秘書」が答えているのだ。
世界中に商品を売る時、言葉が通じないという問題はどうすればいいのだろうか?「ダブル11」開催までに、機械翻訳技術がレベルアップし、対話ロボットが世界中の中小業者の通訳となり、製品の詳しい状況やレビューを自動的に現地の言語に翻訳する。また、リアルタイムAI言語翻訳によるカスタマーサービスや業務の問い合わせが実現し、すでに64言語をカバーしている。
物流の進歩により、中国の宅配効率も大きく向上している。全自動化ピッキングライン、ARを活用したサイズ測定技術、管理システム「物流天眼」など、小さな荷物一つを配送するのにも、その背後で多くの画期的な技術が駆使されるようになっている。宅配会社に目を向けると、順豊は、全フローにおいてスマート化管理を実施し、中通快逓は、ダイナミックステアリングなどの機能を搭載した輸送量の多いトラックを導入し、申通快逓は、AIスマートカスタマーサービスロボットを採用した。また、圓通速逓は、都市配送及び集中梱包センター約60ヶ所を設立し、中継や操作のプロセスを簡素化。韻達快逓は配達員がスムーズに荷物を配送できるように専門アプリをリリースした。
「ダブル11」が開催されるようになってからの11年間、中国経済の供給側(サプライサイド)は非常に活力にあふれ、成長を続けてきた。オンラインとオフラインの融合が加速し、伝統的な消費が新しく生まれ変わり、サプライチェーンとテクノロジーが成長をバックアップし、新消費と新小売りは高いポテンシャルを秘めている。巨大な市場を前に、「ダブル11」は既存の市場のポテンシャルを引き出しながら、新たな市場を活性化している。中国経済における消費の牽引力が絶えず高まり、中国経済を力強く押し上げ、世界のECの発展に中国の経験を提供している。(編集KN・張靖)
「人民網日本語版」2019年11月14日