2021年3月1日、「中華人民共和国と欧州連合の地理的表示の保護と協力協定」(以下「中国・EU地理的表示協定」)が正式に発効した。協定は2011年に交渉が始まり、22回の正式交渉と100回余りの非公式協議を経て、8年後の2019年11月6日に妥結を発表。2020年9月14日に正式に署名された。
商務部国際貿易経済協力研究院欧州研究所の姚鈴所長は人民網の取材に対し、「中国・EU地理的表示協定は中国が外国と締結した初の全面的で高水準の地理的表示協定であり、中国とEUの利益の結び付きを強め、経済貿易協力を深めるうえで一里塚的な意義を持つ」と指摘する。
■保護水準が高く、保護産品が多い
EUは産品の地理的表示の保護に長い歴史があり、これまでにカナダや日本を含む多くの貿易パートナーと地理的表示産品の保護を相互認証している。姚氏によると、EUの他の貿易パートナーとの相互保護と比べると、中国・EU地理的表示協定は保護水準が最も高い。まず産品の種類においてブレイクスルーを遂げ、従来のワイン、蒸留酒、農産物から四川省特産の絹織物や安徽省特産の宣紙など工芸品にまで拡大しており、保護分野がより広い。次に、保護する産品の数が最多だ。協定の発効日から、双方は各々約100品目の産品を地理的表示保護の対象とする。発効後4年以内に、さらに各々175品目の地理的表示産品を加え、各々の保護する産品の数を約275品目にまで増やす予定となっており、中国とEUの貿易に新たな原動力をもたらすだろう。
また、中国・EU地理的表示協定は中国とEUの間の知的財産権保護の強化に立脚し、双方間貿易における地理的表示産品の詐称を効果的に阻止し、双方の特色ある産品がそれぞれの市場に進出する際の懸念を解消し、中国とEUの農産物貿易秩序の一層の維持に寄与し、中国・EU貿易が数量面での成長から質的な成長へ向かう後押しをし、その質の高い発展を導くだろう。協定はまた、双方の多国間レベルでの知的財産権保護協力の強化にも資する。
■中国とEUの農産物貿易の潜在力を一層引き出す
2020年、中国・EU貿易は逆風の中でも成長し、中国はEUにとって最大の貿易相手となった。地理的表示協定の効果に先導される形で、中国とEUの農産物貿易は目を引くものとなった。統計では、2020年に中国・EU間の農産物貿易は283億9000万ドルに達し、前年比で18.8%増加した。
姚氏によると、協定の発効によって、中国とEUの農産物貿易の潜在力が一層引き出されることが見込まれる。また、中国・EU地理的表示協定の発効は関係企業による双方の地理的表示産品への投資も刺激するだろう。協定によって、地理的表示保護対象産品は相手側の正式な表示を用いて市場に進出できるようになった。現時点ではEUの地理的表示産品が優位にあるが、中国の特色ある産品も同様にEUの地理的表示の正式表示を用いることが可能だ。これは、中国の産品がEUの消費者に認められ、EU市場を切り開き、関係企業の投資を拡大する助けとなる。
■中国・EU双方の人々に幸福をもたらす
中国は14億人の巨大な消費市場を擁する。このうち4億人は中所得層であり、地理的表示があり質の高い欧州の農産物へのニーズが高い。姚氏によると、中国で最初に保護を受けるEUの地理的表示産品100品目は蒸留酒、ワイン、チーズなど農産物が中心で、対象はEU加盟21か国に及ぶ。スペインのスパークリングワイン、チーズ、フランスのシャンパン、ギリシャのチーズ、アイルランドのウイスキー、ドイツのビール、ポーランドのウォッカ、イタリアのハム、ポルトガルのポートワインなどだ。うちフランスとイタリアの産品が各25品目、中・東欧諸国の産品が14品目で、その多くが中国の消費者に馴染みのある美食品であり、協定によって品質が保証される。
また、EUで保護される中国の地理的表示保護産品は27省・直轄市に及ぶ。郫県豆板醤、安渓鉄観音、安吉白茶、煙台リンゴ、山西老陳醋、庫爾勒香梨、婺源緑茶、呉川月餅、柴達木クコ、盤錦米などだ。EUの地理的表示産品と比べると中国の地理的表示産品のEUでの知名度はまだ高くないが、協定の発効が中国の農産物がEUや世界に進出する助けとなり、さらに多くの国外の消費者の目に触れる機会を得て、その選択肢を増やすことは間違いないだろう。
「中国・EU地理的表示協定の発効を契機に、中国とEUの経済・貿易制度建設は重大な一歩を踏み出す。双方がより緊密な経済貿易関係を構築する基礎は次第に強固なものになっていくだろう。中国とEUの経済貿易協力の未来に大きな自信を抱くだけの理由が我々にはある」と姚氏は指摘する。(編集NA)
「人民網日本語版」2021年3月2日