「緑が立山連峰、白が雪、青が日本海を表現している」といううっすらと三色に色づけされた和紙が窓際のスペースに天井から何枚も吊るされ、ビッグテーブルと呼ばれる木製のテーブルの上には富山県を代表する高岡銅器や井波彫刻、高岡漆器、越中和紙などの伝統工芸品が並べられている。これは現在、北京市前門にあるMUJI HOTEL 北京で開催中の富山県の「匠」展 in 北京の展示会場の様子だ。人民網が伝えた。
「見つけて、大事にしていく」を実践
昨年から計画していたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年から本格的に動き出したというこの「匠」展。MUJI HOTEL 北京の濱岸健一総経理は、「暮らしにとって、良いと思えるものを、探しだそうという『Found MUJI』の考えからだけでなく、社会貢献と世の中や地域に対して支援したいという願いから、今回は後継ぎ問題や高齢化が原因で、その技術を後世になかなか伝えられないような危機に瀕している伝統工芸にフォーカスを当て、そういった大切な文化を皆さんに広く知ってもらい、後世に残していきたいと考え、それが今回の企画の発端となった」としている。そして今回は上記のような問題を抱えている富山県にスポットをあて、工芸品展を開催することになったという。
ものづくり県・富山の魅力
日本海側屈指の「ものづくり県」である富山県には、銅合金の鋳物では日本のトップシェアを誇る「高岡銅器」、ヤスリを使わず、ノミの彫りあとだけで仕上げるという高い技術で作品を作り出す「井波彫刻」、貝を使い繊細で華やかさな絵柄を作る青貝塗などの技法を生み出した「高岡漆器」のほか、「越中和紙」、「庄川挽物木地」、「越中福岡の菅笠」という6品目の国が指定している伝統的工芸品がある。富山県商工労働部の吉田泰介主任によると、今回の「匠」展にはこうした伝統工芸に携わる19事業者・個人が出展し、同県が開催した中国における展示会としては過去最多の約230点を展示。いずれも優れた技術やデザインを誇る伝統工芸品となっている。そして伝統的な趣のある作品だけでなく、現代的にアレンジされた作品が多いこともその特徴だ。
例えば、高岡銅器のブランド・山口久乗は「f分の1のゆらぎ」で、人をリラックスさせ、癒し効果もある美しい音色を奏でる仏具の「おりん」を、小鳥やゾウといったシンプルで可愛らしいデザインにすることで、富山の「音」のブランドとして、新たな境地を拓いている。
また越中和紙のブランド・桂樹舎は、江戸時代には薬を包む薬包紙として用いられていた和紙に防水加工を施し、鮮やかな色合いのペンケースや小銭入れといったオシャレな小物に加工することで、日本国内でも若い女性を中心に多くの人を魅了しているという。
このような伝統の中に現代の息吹を吹き込もうとする試みはここ数年、中国でも盛んに進められている。日本の伝統工芸の多くは中国から伝来したものであるため、その共通点は極めて多く、中国人にとっても、日本人にとっても、互いの伝統工芸は身近な存在と言える。そして相手を知ることで実は自国の伝統工芸をより知ることになるきっかけにもなっている。MUJI HOTEL 北京では今年、今回のような展示だけにとどまらず、展示されている工芸品の一部を購入できる販売会や、中日両国の伝統工芸関係者による講演、体験イベントなどを通じて中日文化を「接触」させることで、より多くの中国の人々に見て、触って、体験してもらい、中国と日本の伝統工芸を広く知ってもらう計画だという。
富山県の「匠」展 in 北京の販売会は3月5日から14日まで、展示は6月30日までの開催を予定している(文・玄番登史江)。
「人民網日本語版」2021年3月5日