ロングスカートに、温もりのある色合いのストールをまとい、カメラの前で落ち着いた様子ながらも少しはにかみながら話す陶丹丹さんは、黒竜江省無形文化遺産伝承プロジェクトの樺樹皮制作技術伝承者だ。陶さんのアトリエは、中国の東北地域に位置する黒竜江省黒河市のある現代的なショッピングセンターの中にある。こじんまりしたアトリエには、陶さんの樺樹皮工芸作品と収蔵品が並べられている。
黒竜江省無形文化遺産伝承プロジェクト樺樹皮制作技術伝承者の陶丹丹さん(撮影・羡江楠)。
樺樹皮文化は中国北方狩猟民族の伝統的な民間手工芸で、中国の非常に重要な無形文化遺産の一つだ。陶さんは満州族の家に生まれ、樺の木の樹皮に親しんできた。「私は幼い頃から樺の樹皮と接してきた。家には樺の樹皮を使った器がたくさんあった。私は内気な性格だったので、物を手作りするのが好きだった。その後だんだんと、樺の樹皮という素材はとても加工しやすく、私のような女の子にとっては、木彫りや木の根の彫り物より扱いやすいと思うようになった。そして大好きになっていった」と陶さんは話す。
樺の樹皮そのものの模様を活かした絵画作品(撮影・羡江楠)。
樺樹皮工芸は決して習得しやすいものではない。天然の樺の樹皮はとても硬く、制作前に手で一層ずつ皮を剥ぐ必要があり、樹皮がやわらかくなって初めて手工芸品を作ることができるようになる。陶さんは、「樺樹皮工芸をするには、技が優れていて、仕事が細やかなことが一番の基礎になる。さらに重要なのは、一定の粘り強さと忍耐」と言う。そして、「制作にとても長い時間がかかる作品もある。小さいものだと数時間、2-3時間でできるがが、長い場合は数年かかるものまである」と語った。
長年樺樹皮手工芸を続けてすっかり荒れてしまった陶丹丹さんの両手(撮影・羡江楠)。