最近微信(WeChat)で読んだある文章に思わず笑い、うなずいてしまった。それは30歳以上の「中年の人々」の学習能力の高さを称賛した文章で、30歳を過ぎて、子どもができてからというもの、子育ての中で国語や算数はもちろんのこと、英語やスポーツ、楽器、絵画に料理まで、なんでもこなせるようになってしまったというオチになっている。さすがにこれは大げさに過ぎる向きもあるが、中国の親たちが子供に注ぐ情熱は確かに半端ない。今回はそんなイマドキの中国の親たちに迫ってみよう。人民網が伝えた。
中国の「突っ走る」親たち
中国の親たちはとかく「突っ走る」系の親が多いように思われる。それは13億もの人口の中で繰り広げられる競争のスケールと厳しさからして日本とは段違いだからだろう。そんな熾烈な競争を勝ち抜き、大学を卒業し、さらに戸籍や学歴、経済力など日本以上に様々な縛りのある中で結婚相手を探し、子どもを産み・・・と、もうここまでで息切れがしそうだが、本当にエンジンがかかるのは、実はここから。前述した文章の作者はそんな子育ての中で、一つの結論に達している。それは「勉強というのは、親が子供にやらせるより、子供のために親がやらされる方がむしろ効果的」ということ。そこには「わが子のために」という大義名分のもと、走り続ける中国の親たちの姿が見え隠れしている。
【初級編】バイヤー能力問われる幼稚園
ほとんどが共働きの中国の親たちにとって、子供が幼稚園に上がったら、ようやく手がかからなくなるのではないかと、淡い期待を抱いてしまうのも無理はない。しかしそんな期待はあまりにもはかないものだったとすぐに気づくことになる。まず中国の幼稚園において「お知らせ」というものが事前に届くことがまず無い。たいていその締め切りは「明日までに」だ。さらに準備しなければいけない「ブツ」がまたすぐには揃えられないものだったりすることもしばしば。親たちはこうした「お知らせ」におびえながら、クライアント(幼稚園)の要求を満たすバイヤー能力を磨いていく。そして空き箱、空き瓶類はとにかく捨てずにとっておくという素晴らしいエコ精神もこの幼稚園時代に養われる。
【中級編】親が、全面的に学習能力を向上させ、心身の限界に挑戦する小学校
小学校では幼稚園のような「お知らせ」は少なくなるが、「宿題」という大きな試練がやってきて、親と子供の「仁義なき戦い」の火ぶたが切られる。日本の親の場合、せいぜい「宿題をやりなさい」の一言だが、中国の親たちは「結果(宿題を提出する)」を重視するが故、「過程(宿題を自分でやる)」は二の次になり、つきっきりで一緒に宿題をすることになる。もちろんそうしなければ終わらないほどの難しさと量の多さもその原因の一つであることは否めない。そんな教育制度の問題はさておき、宿題は国語に算数、英語の3教科はもちろん、作文や手抄報 (1枚の紙にイラストや文で作成するレポート)、様々なテーマの資料集めなど全面的な学習能力とリサーチ能力が問われることになる。親たちは検索エンジンの「百度」を駆使することを覚え、家にはプリンターを常備し、スマホには次々と宿題お手伝いアプリがダウンロードされていく。「最低限、宿題だけでも終わらせる」ということがどれだけ苦しみに満ちたものなのか、子供も大変だが、親も心身の限界に挑戦することになるのが小学校時代だ。
【上級編】どこで手を引けばいいのかわからなくなる親たち
中学校に上がったら、いくら何でも子供らが自分でいろいろやるのだろうと思っていたが、中学生になってもクラスの親たちは「お知らせ見ました」確認メッセージを担任に送らなければいけなかったり、なかなかの干渉っぷりが続く。ただ中学以降は学習内容が格段に難しくなるので、小学校時代のようにつきっきりで教えられる親はまれで、塾に通い始める子が増える。
毎年、大学の入学シーズンに両親が子供に付き添って大きな荷物を持ち、大学の寮にまでやってくるというのは中国恒例のニュースのようになっていることを見ても、親離れができない子供に、子離れができない親がまだまだ「中国の親」のオーソドックスな姿なのかもしれない。
先ごろ、第91回アカデミー賞で「Bao」が短編アニメーション映画賞を受賞した。トロント育ちの華人女性が監督を務めた同作品では子供が成長し、寂しさを感じていた華人の母親が中華まんを子供のように大事に育てあげるストーリー。これを温かい愛ととらえるのか、煩わしい干渉ととらえるのかは人それぞれだが、それを客観的に表現できる若者たちが出てきていることをみても、いわゆる「中国の親」たちも今後その姿を次第に変えていくことになるのではないだろうか。(文・イラスト・玄番登史江)
イラストで知ろう!イマドキ中国
人民網ではもっと身近なスタイルで今どきの中国を読者の皆さんに知ってもらうため、「つるにはまるまるむし爺さん」と「へのへのもへ郎」、「へめへめくつ美」の3人が流行語やカルチャー、時事問題など幅広いジャンルにおける「イマドキ」を紹介。中国ってこんな国なんだ!と興味を抱き、理解を深めるきっかけにしてみてください。
「人民網日本語版」2019年4月10日