ソフトウェアとシステムの脆弱性を突き、トロイの木馬を開発し、サイバー攻撃、さらにはサイバー戦争に使用する。米国の軍と情報機関は現在、核兵器にも比肩する世界最大のサイバー兵器庫を構築しており、世界規模のサイバー軍拡競争を引き起こしている。(文:史往生。人民日報掲載)
冷戦時代の米国とソ連は狂気じみた軍拡競争にふけり、地球を数10回壊滅するに足る核兵器を開発・配備し、全世界を核戦争の暗雲で覆った。インターネットの時代において、米国はその技術的優位性、及びネットインフラにおける自国企業の独占的地位を利用して、サイバー兵器を大量に開発し、軍拡競争を引き起こし、全世界のサイバーセキュリティーを深刻な脅威とリスクにさらしている。
2017年5月12日にランサムウェア「WannaCry」が全世界に拡散。150余りの国と地域、10数万の組織・機関及び30数万台のコンピュータに波及し、損害額は合計500億人民元(1元は約15.7円)以上に上った。病院、教育機関、政府当局多数が攻撃を受けた。
このランサムウェアが深刻な損害をもたらした重要な原因として、米国家安全保障局(NSA)の開発したサイバー兵器「EternalBlue」が民間に流出し、ハッカーに利用されてランサムウェアが「ワーム式」に拡散したことが挙げられる。マイクロソフトのスミス社長兼最高法務責任者(CLO)は、このランサムウェア事件において逃れられない責任を負うとNSAを非難し、この「サイバー兵器庫が盗まれた事件」をトマホークミサイルが盗まれることと同列に論じさえした。
NSAの開発したこのサイバー兵器「EternalBlue」は、NSAの「Equation Group」が使用する多くのサイバー兵器の1つに過ぎない。
2017年4月14日、ハッカー集団「Shadow Brokers」が「EternalBlue」を含む「Equation Group」の使用する極めて破壊力のあるサイバー攻撃ツール多数を公開した。こうしたツールを利用すれば、インターネットでつなぎさえすればコンピュータに侵入し、「WannaCry」のように一夜のうちに深刻な損害をもたらすことができる。「Shadow Brokers」の暴露したNSAのサイバー攻撃資料には、ブラウザ、ルーター、携帯電話を標的にするサイバー攻撃ツール、Windows 10のゼロデイ脆弱性を標的にするもの、各国の中央銀行及びSWIFTシステムへの侵入記録などもあった。
同じ年、 ウィキリークスがコード名「Vault 7」の機密文書8761点を公開して、米中央情報局(CIA)が2013年から2016年の間に実施した極秘で世界規模のネットワーク侵入活動を暴き出した。内容は攻撃手法、攻撃目標、会議記録、海外での行動記録、使用した攻撃ツール、7億行のソースコードに及んだ。これでもまだCIAによる「サイバー戦争」の内幕の氷山の一角に過ぎないと専門家は見る。
報道によると、2016年末時点でCIA直属のサイバー情報センターは5000人以上の職員を擁し、1000以上のトロイの木馬、ウィルス、その他「武器化した悪意のあるコード」を設計してきた。NSAとCIA以外に、米サイバー軍も独自のサイバー兵器を開発している。2015年にウィキリークス創設者のアサンジ氏は「米国は2000種以上のサイバー兵器を開発しており、世界最大のサイバー兵器大国だ」と述べた。
サイバー兵器は核兵器や生物・化学兵器にも匹敵し、全世界のインフラ及び各国の正常な生産・生活に深刻な破壊をもたらしうる。サイバー兵器を大量に開発する米国の軍と情報機関の行為は、サイバー軍拡競争を引き起こし、全世界のサイバーセキュリティーを直接脅かしている。(編集NA)
「人民網日本語版」2019年6月13日