「月探査機『嫦娥5号』の任務で展開された月面離陸、軌道上のドッキング、再突入・帰還などはいずれも、未来の有人帰還に必要な技術だ」。国家航天局副局長を務める月探査事業副総指揮の呉艶華氏は、17日に行われた国務院新聞弁公室の記者会見で、「こうした技術検証により、未来の有人月面着陸の基礎を固めることにもなる」と述べた。科技日報が伝えた。
◆中国の有人月面着陸について
呉氏は人々が関心を寄せる中国の有人月面着陸計画の問題について、「中国の有人宇宙事業の現在の任務は、地球周回軌道における宇宙ステーションの建設の完了だ。中国政府の現時点の意向によると、まずキーテクノロジーの研究開発に取り組み、中国の近地球周回軌道における宇宙ステーションを建設してから、有人月面着陸計画を実施するか否かを検討・論証することになる」と述べた。
呉氏はまた、「中国政府の目的は、当時の米国の有人月面着陸と異なる可能性がある。当時の米国とソ連は宇宙競争を展開し、どちらが先に着陸するか、どちらがより多く着陸するかを主な目的としていた。中国の有人月面着陸は、科学研究に寄与し、未知の探査に寄与することに決まっている」と述べた。
◆嫦娥5号、5つの「中国初」を達成
呉氏によると、嫦娥5号任務の成功は、中国の宇宙事業発展の歴史における節目となる新たな飛躍だ。これは中国が地球・月往復能力を備えており、「周回・着陸・帰還」という3ステップ計画の完璧な終了を実現したことを意味する。中国の今後の月・惑星探査に向け確かな基礎を築いた。
嫦娥5号任務は5つの「中国初」を達成した。(1)地球外天体での試料採取と密封保存。(2)地球外天体における点火・離陸、正確な軌道投入。(3)月周回軌道における自動ドッキング、試料の移動。(4)月試料を携え第2宇宙速度に近い速度での再突入・帰還。(5)中国の月試料の保存、分析、研究システムの構築。
月探査のテーマをめぐり、中国の基本計画は月探査事業4期を確定した。これには4つの任務が含まれる。
一番目は嫦娥4号による月の裏側の着陸、巡回探査の実施で、すでに成功している。
二番目は嫦娥6号任務だ。中国はプロジェクトの目標と科学目標をさらに最適化し、論証する。例えば月の極地もしくは月の裏側のどちらでサンプルリターンするかを論証中だ。
計画にはさらに、嫦娥7号、嫦娥8号の任務が含まれる。中国はこれを契機とし、関連国と国際機関と協力し、月科学研究拠点の初期段階の建設の基本的な能力を共に論証するか、コア技術を検証する。
国家航天局の許洪亮報道官は、「嫦娥7号任務は月の南極の探査を行う。ロシアにも『Luna Resource-1』と呼ばれる探査計画がある。中露両国政府間の協力メカニズムのもと、双方は関連協力を展開中だ。同時に他の国が我々と共に国際月科学研究拠点などの協力を展開することを歓迎する」と述べた。
◆惑星探査、火星の他に木星も探査へ
呉氏によると、中国の惑星探査計画の最初の任務はすでに実施中だ。それは初の火星探査任務「天問1号」で、今年7月23日に文昌で打ち上げに成功した。探査機のコンディションは現在非常に良好で、すでに累計約3億7000万キロメートル飛行し、地球から1億キロメートル以上離れている。計画によると、天問1号は来年2月中旬に火星に到着し、火星周回探査を開始する。5月中旬には火星に着陸し、巡回探査を行う予定だ。
他にも3回の惑星探査任務を計画している。これには小惑星探査と試料採取、火星のサンプルリターン、木星系周回探査と惑星間通過探査任務が含まれる。呉氏によると、任務計画は現在ほぼ明確になっており、国の審査・承認を待っている。
呉氏は未来の宇宙探査について、「個人的には、主に探査、建設、活用の3つと理解している。探査とは月とその他の星の環境の探査で、これには宇宙環境、地質環境及び人類が注目する各種放射線などが含まれる。これは探査の最も主要な目的だ」と述べ、次のように説明した。
「建設は、一定のインフラ能力を形成する。嫦娥4号任務における中継通信衛星「鵲橋」のように、月・地球間の測量・制御・通信能力を持続的に提供できる。インフラ能力には他にも長期給水・給電の能力などが含まれる」
「活用の目的は、主に地球外資源を人類の利用と開発に役立てられるか否かと関わる。世界各国はこの目的をめぐり宇宙探査活動を展開しているはずだ」(編集YF)
「人民網日本語版」2020年12月18日