華為(ファーウェイ)技術有限公司は今週、開放原子開源基金会にオープンソースの独自開発基本ソフト(OS)「欧拉(Euler、オイラー)」を寄贈した。同じく独自開発OSの「鴻蒙(Harmony、ハーモニー)」に続き、ファーウェイはOSをめぐり再び重要な一歩を踏み出した。中国新聞社が伝えた。
「Euler」はなぜ重要なのか?
OSは基礎的なソフトウェアであり、情報技術(IT)の数十年にわたる発展の中、異なる分野で異なるOSが形成されてきた。例えば、サーバーのOS、PCデスクトップのOS、スマートフォンのOS、モノのインターネット(IoT)のOS、通信デバイスの組み込みOS、パブリッククラウドのOS、工業設備の組み込みOSなどがあり、ソフトウェア・ハードウェア技術は共有が難しく、業界内で、業界間で、それぞれ孤立した「煙突」が立ち並ぶ状況だった。
ファーウェイが2019年に発表した新オープンソースOS「Euler」は協同の問題解決を狙いとしていた。鄧泰華副総裁(コンピューター製品ライン総裁)の説明では、「『Euler』はインフラのフルシーンを対象にしたOSで、南は多様なデバイスに対応し、北はフルシーンの応用をカバーし、横方向ではHarmonyOSと連携し、能力を享有することで生態圏の相互接続を実現した」という。
「Euler」はマルチデバイスとされ、これは「Euler」がサーバー、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、組み込み型デバイスなどさまざまな形態のデバイスを広く対象とすることを指している。利用シーンにはIT、通信技術(CT)、操作技術(OT)が含まれる。
「Euler」は「Harmony」と相乗効果を上げることも可能だ。たとえば産業シーンの中で、「Euler」は信頼性が高く、確実性の高い産業用デバイスに利用でき、「Harmony」は互換性が高い産業用端末に利用でき、「Euler」と「Harmony」のマッチングによりフルスタックの産業シーン向けソリューションをよりよく提供することが可能になる。
同基金会の楊濤理事長は、「将来はデバイス、エッジ、クラウドの協同がますます重要になるだろう。いくつかの大型OSが絶えず協同することで、非常に大規模なイノベーションの時代が始まる」と展望を語った。
オープンソース産業の発展に力を入れる中国
同基金会は中国初のオープンソースを支援するための基金会であり、運営開始から1年あまりの間に、中国国内のリーディングカンパニーの10数件のオープンソース重要プロジェクトを吸収した。
現在、世界のオープンソースプロジェクトは主流の技術分野をほぼカバーした。オープンソースは今や技術生態圏を構築するための重要な手段であり、新たな技術生態圏を構築するためには、ほとんどと言っていいほどオープンソース方式を採用して構築することになる。
前出の鄧氏は、「中国のオープンソースシステムの基礎能力はリードしている国と比べればまだ大きな開きがある。しかし中国には最も大きなオープンソース応用市場があり、ソフトウェア関連の人材供給が最も多く、中国はオープンソース強国になる条件を最もよく備えている」と述べた。
中国工程院の廖湘科院士は、「ソースコードの開放はOS類の基本ソフトを発展させる重要なルートだ。現在、中国国産OSのほとんどが海外の川上のオープンソースコミュニティに基づいた二次開発であり、中国の大量のソフト開発者が海外のオープンソースコミュニティに貢献している。そこで中国に根を下ろしたオープンソースコミュニティを構築することが喫緊の課題となっていた」と述べた。
世界のコンピューター産業がアーキテクチャのイノベーションの10年に及ぶ黄金時代を迎えるのに伴って、かつてのインテルやAMDが主導した汎用計算の時代から人工知能(AI)に基づく多様性ある計算力の時代に移り、AIチップの多様化が進む中、中国は今、国産OS生態圏を構築する「黄金の窓口の時期」を迎えつつある。
工業・情報化部(省)の王志軍副部長は、「『Euler』というOS分野の重要オープンソースプロジェクトが基金会に寄贈されて孵化が行われるのは、中国が万物のインターネット(IoE)時代の発展の機先を制し、オープンソースを手がかりに次世代OSを構築し、経済社会発展における堅牢な『デジタルの台座』を構築するための有益な試みになる」との見方を示した。
デジタル経済の発展には基本ソフトという台座が必要だ。鄧氏は、「これまでは通信・コンピューター、AI、基礎的ソフト・ハードをめぐる生態圏の構築で、米国企業が先頭を走っていた。これからはデジタル経済の発展に伴って、中国のIT産業は発展に向けて地面に根を下ろさなければならず、自身の基礎的ハード・ソフトのプラットフォームを持つ必要がある」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年11月17日