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新たな中日青年学生友好事業を立ち上げた若者たち

中日青年「パイオニア」(五)

人民網日本語版 2022年12月30日13:37

2022年9月29日、中日国交正常化50周年を迎えた。この記念すべき日に、NPO法人日中青年学生友好協会が設立された。この協会の設立に尽力したのは、日本で暮らし、働いている中国の若者たちだ。この3人の若者は自発的に中日両国の学生をサポートし、相互理解を深める活動を行う過程で知り合った。協会の設立は、彼らが進む道の新たな出発点となっている。

この3人の若者の名は、江蘇省南京市出身の陳佳嶸さん、上海市出身の李顥淳さん、そして江蘇省揚州市出身の姜伝超さんだ。

NPO法人日中青年学生友好協会の今後について話し合う陳佳嶸さん、李顥淳さん、姜伝超さん(写真左から、スクリーンショット)。

青年学生交流の意義を感じ、積極的かつ自発的に活動を組織

陳佳嶸さんは高校卒業後、早稲田大学に留学するため来日した。陳さんが中日青年学生交流活動に携わる最初のきっかけは、一つには周りの多くの留学生が様々な困難に直面しているのを見聞きしたからだったという。例えば日本では部屋を借りる際、連帯保証人が必要という日本ならではの手続き上の習慣があるが、来日したばかりの留学生は右も左もわからず、途方に暮れてしまうケースがほとんどだ。こうした状況を目にした陳さんは、中国人留学生向けの賃貸物件を取り扱う不動産会社の情報をまとめ上げた。そしてこれが彼の留学生に対する支援活動の第一歩となった。

また日本人学生との交流も重視していた陳さんは、頻繁に中国人留学生と日本人学生を集めて登山やスキー等のイベントを企画し、積極的に文化交流活動にも参加して、日本人学生と歴史や文化に関して交流や意見交換も進んで行った。

こうした活動を経験していく中で、陳さんにとってとても感慨深かった出来事が1つあったという。それはある年、中国に帰省する際、日本人学生4人を誘って一緒に中国を旅行した時のことだった。

陳さんはこの日本人学生たちとは日本にいた時も歴史問題についての議論を交わしていた。そして彼は中日両国の学生は教科書や報道で接する情報に差異はあるものの、大多数の日本人学生は独立した考えを抱いており、教科書や報道を鵜吞みにすることなく、それらに対して疑念を抱く態度で接していると感じた。そこで一つの試みとして、その日本人学生4人を南京市にある中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞紀念館に連れて行ったという。彼らが紀念館に対しネガティブな感情を抱くことを当初は懸念していた陳さんだったが、予想に反し、日本人学生たちは3時間以上をかけて真剣に展示資料を見学したという。展示品の中には当時の日本の新聞もあり、彼らはそうした展示品をじっくり見学しただけでなく、これらの新聞に関する知識や、日本の教科書で学び得た知識との比較もしていたという。そして紀念館の見学を終えた後、彼らは陳さんに対し、この時代の歴史に対して新たな認識を抱くことができた非常に貴重な体験だったとした。

この出来事をきっかけに、陳さんは中日両国の学生は書籍で知り得た知識を超越したより豊かな、より深い交流をすることができ、何よりも直接触れ合う交流は互いにより多くの情報を得ることができると感じたという。そしてそれ以降、彼はより積極的に中日青年学生交流活動を組織するようになった。その努力の甲斐あって、より多くの日本人学生が活動への参加を通じて、中国語を学び、中国文化を理解し、中日学生間の相互方向での交流を実現した。

NPO法人の活動体験を通じて、蘇州大学日本連絡事務所の設立を推進

李顥淳さんは来日した後、群馬大学に入学し、留学生活を送った。同大学は日本各地に設けられている国立大学の1つで、首都圏からは離れているため、外国人も比較的少なく、地元の人々が外国人と接する機会もそれほど多くない。しかし、日常的なふれあいを通じて、地元の日本人は中国人留学生に非常に好意的だと感じたという。特に地元のNPO法人や友好交流団体は、留学生のサポートだけでなく、中日文化交流活動をしばしば催し、地元住民の中国への理解を深める活動をしていた。そうした体験を通じて、李さんはNPO法人に対する理解を深め、それがその後の日中青年学生友好協会設立のための貴重な経験となった。

大学卒業後、李さんは日本に残り、ある不動産管理会社に就職。そして仕事以外の時間を利用して、中日青年交流活動を促進する活動を展開していった。それから数年後、彼は姜伝超さんと出会うことになる。

姜伝超さんは江蘇省蘇州市にある蘇州大学の対外交流プロジェクトを通じて日本に短期留学。大学を卒業すると、再び日本に渡り、李さんが働く企業に彼も就職した。そして李さんの勧めで、姜さんも中日青年学生交流活動に興味を抱くようになったという。

2019年の終わりに姜さんは蘇州大学を訪問し、母校と日本の交流をサポートをしたいと申し出た。そして2020年1月初旬に、蘇州大学代表団が日本を訪問。姜さんが仲介役となり、代表団は彼の勤める企業を訪問し、高橋幸一郎社長と意見交流を行い、共同で蘇州大学日本連絡事務所を設立する覚書を結んだ。

株式会社KACHIAL社長高橋幸一郎さん(写真左)と東京で会談した蘇州大学副学長(当時、現学長)の張暁宏さん(写真右、写真提供・姜伝超さん)。

連絡事務所が設立されて間もなく新型コロナウイルス感染症が流行し、留学生の派遣を含めた多くの業務をストップせざるを得ない状況に追い込まれたが、李さんと姜さんは可能な範囲で交流活動を続けるための方法を考え続けた。そして彼らは金沢大学や東京学芸大学、開智国際大学などを訪問し、コロナ後に蘇州大学と相互に留学生を迎え入れる件などに関しての検討を進めていった。またその一方で、コロナが原因で、国を跨いで移動することができない状況下で、日本に留学している蘇州大学の学生や、蘇州大学に留学している日本人学生の支援を始めた。コロナが原因で長期にわたり日本に留学中の子供に会えず不安を抱える中国の保護者のために、連絡事務所はそうした中国人留学生たちを訪ね、保護者達に近況報告を行った。また中国に留学している子供に長期にわたり会いに行くことができない日本の保護者に対しては、連絡事務所が関連する情報をまとめ、蘇州大学の関連当局に依頼して、サポートを委託するといった対応を行ったこともあったという。

理解と支持を得て 青年学生交流活動の範囲を拡大

高橋社長の協力を仰ぎ、日本に蘇州大学日本連絡事務所を設立した動機は、母校に対する恩返しだけでなく、むしろ李さんと姜さんの自らの体験によるところが大きかった。姜さんは、初めて日本にやってきた留学生が短期間のうちに日本社会を理解するには、情報収集が不可欠であり、現地での勉強と生活に適応することは極めて困難であることから、プラットフォームを組織して彼らをサポートする必要があると考えたからだ。

また李さんと姜さんが高橋社長の支持を取り付けることができたのは、一つには高橋社長が2人の行う公益活動の精神に感動したからで、もう一つは高橋社長自身の経験と思いからくるものだった。

高橋社長は16歳の時に米国に留学しており、外国人が現地社会に適応することは必ずしも容易ではないということを自身の経験から理解していた。そして日本という単一民族社会においては中国人留学生はさらに多くの困難に見舞われているだろうという考えから、李さんと姜さんが留学生をサポートする行動に共感を覚えたという。

また米国での自身の経験から、高橋社長は、外部からの情報の影響を受けることで、人間の価値観形成の過程において、徐々にその先入観にとらわれていくことになるとしている。他人を理解するにあたり、まずその人がどこの国の人かということで判断するということに対し、高橋社長は、「これは紛れもない悲しい事実」だとしている。そのため高橋社長は、そうした先入観がまだ形成されていない若い時期に、より多くの国々の若者たちと交流し、相互理解を深めることが非常に重要であると考えている。

同時に中日両国の関係に関しても、高橋社長は両国はアジアの重要な隣国で、ボーダーレスな関係を築くべきだと考えている。そうした関係を実現するためには、両国の青年と学生がより互いの国を理解し、未来に向かって優れた「土壌」を築くことが求められる。そして中日両国の青年と学生への支援を通して、両国の更なる文化交流と教育の発展を推し進めることで、両国経済の発展にも寄与することを高橋社長は期待している。

こうした高橋社長の積極的な支持を受け、李さんと姜さん、陳さんは出会い、同じ志を持つ者として心を通じ合わせ、自発的に組織して、より幅広い中日青年学生交流を展開することに目を向け始めた。

自らの留学経験を踏まえて、彼らは3人とも留学生支援の拡大は先ず首都圏以外で行うべきだと考えた。そこで日本の地方にある大学を訪問し、より多くの大学と中国の大学との交換留学プログラム等を展開するように働きかけていく一方で、彼らは各地の中日友好交流組織にも積極的に連絡をとった。群馬県や石川県、埼玉県、愛知県等の日中友好協会と連携してスピーチコンテストの開催や中国文化講座の開講、中日学生オンライン座談会の開催といった活動を検討していった。

コロナの影響で多くのアイデアをすぐに実現することはできなかったが、3人の若者たちは可能な範囲で弛まぬ努力を続け、活動を続けていった。

3年の努力実り、日中青年学生友好協会を設立

3人の活動の規模が拡大するのに伴い、陳さんと李さん、姜さんは今後の活動を展開していく上で、正式な組織を立ち上げる必要があると感じるようになっていった。そしてこれまでの経験と、継続し続けてきた学びや模索を通じて、NPO法人を設立させることを正式に決めた。

2022年9月29日、3年近くにわたる努力の結果、NPO法人日中青年学生友好協会が正式に設立された。

新たな中日青年学生友好事業を立ち上げた中国の3人の若者、李顥淳さん、陳佳嶸さん、姜伝超さん(写真左から、スクリーンショット)。

李さんは協会の設立日について、「9月29日を協会設立日に選んだのは、ちょうど50年前のこの日、中日国交正常化が実現したから。この記念すべき日に、協会は中日友好のバトンを繋ぎ、中日両国の学生の留学サポートを行い、両国の学生の友好と交流を深めることを自分たちの務めとして、次の50年の中日関係の発展に貢献したい」とした。

人脈など各方面で最大のサポートができるよう、高橋社長が自ら協会の理事長に就任。そして今後さらに多くの大学及び教育機関が協会の活動に加わるよう推し進めていくことで、より多くの中国人留学生を受け入れることができる優れた「土壌」を作り、中日両国の青年と学生が交流できる機会をより多く作り出し、互いの誤解を解き、理解を深められるようにしたいとした。そして高橋社長は、「中日青年間の交流において、まずは、良好な個人的関係を築くためのサポートを誰かが行う必要があり、その上で両国の発展を良い方向へ推し進めていきたい」と語った。

「人民網日本語版」2022年12月30日

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