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田中陽子:「小さくて、愛しい、東北の田舎町」

田中陽子:「小さくて、愛しい、東北の田舎町」
町のほぼ全景

 私は今、遼寧省撫順市新賓満族自治県という小さな田舎町にある朝鮮族の中学・高校で日本語を教えています。冬場は-30℃を下回る厳しい気候のこの町では、至るところで出稼ぎ労働者募集の文字を目にします。赴任してから1年半の間に、生徒を含む直接の知り合い6家族が韓国、日本、アメリカへと旅立っていきました。
 まだ事情を知らなかった去年、あるクラスで尋ねると、父の日を父親といっしょに過ごした子供はたった1人でした。農村出身で寮住まいの生徒も数人いますが、それでも半数以上の生徒の親が出稼ぎに出ています。ふだんは明るい子供たちですが、時折、歯を食いしばるような表情を見せることがあります。小学生の時に親が韓国に行って以来、10年近く会っておらず、親に捨てられたと言う子供。作文を書かせるたびに親のことを書くのですが、感極まって読むことができない子供。
 親はこう言います。「生活がかかってるんだ、家族を養わなきゃならないんだ、孫の代まで面倒見るんだ、わかるか?」と。もちろん、この地で生活している私には、そうやって生きていくしかないのだということも理解はできます。でも、離れ離れになる家族を見ていると、やはり心は痛みます。
 ある生徒の家を訪ねると、学校の近くのアパートで、おばあさんと子供4人がいっしょに暮らしていました。子供たちは兄弟ではなく、親戚筋にあたるそうです。30平方メートルほどのスペースに、勉強机は1つだけ、ベッドも1つ、まさに肩寄せ合って生きているという感じを受けました。
 私はこの町で唯一の外国人ですが、寂しいと感じたことはありません。支え合って生きることが当たり前のここでは、大人から子供まで、会う人会う人が、「何か困ったことがあったら、いつでも私に言ってください」と言ってくれるからです。そして、「この地の生活は容易ではない。ここに来た、それだけでうれしい。歴史なんて過去のこと。おまえは今日から妹だ!」というふうに、オッパ(お兄さん)が、オンニ(お姉さん)が増えていきます。春が来るのをただじっと待つ、長い長い冬をともに過ごした仲間がいるこの小さな町は、私にとっても愛しい場所です。
 卒業すれば生徒は皆、町を出ていきます。新賓の小さな家々の軒下から大空へと羽ばたいていく、その背中に私はエールを送ります。そして、一度巣立った雛たちがいつかまたこの地に戻ってきて、家族いっしょに暮らせる社会を築いてくれることを心から願っています。
 22年度2次隊 撫順市新賓満族自治県朝鮮族中学 田中陽子
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 「人民網日本語版」2012年7月13日

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折鶴を手に、日本の地震被災地の復興を祈る。
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