「禁煙」は簡単だが「スマホ断ち」は難しい? (2)
○知らない間に「情報依存症」に?
上海大学社会学部の顧駿・教授は、社会学的立場から、次のような見方を示した。
「スマホは今や、『うつむき族』にとって必要不可欠なツールとなっている。テンポアップした生活と重くのしかかる仕事上の圧力によって、都市に住む若者達にとって、『完全なプライベートタイム』はますます少なくなっている。しかしその一方、食事をする・道を歩くなどの『断片的な時間』は増えている。そこで、多くの若者は、スマホなどのモバイル端末を利用して、『断片的な時間』を娯楽・レジャーの時間に変えているのだ。」
「空いた時間ができた時に、スマホをいじるのが悪いという訳ではない。ただ、長期的に依存・耽溺するようになると、目や頸椎などに不具合が生じる恐れがある。さらに深刻なのは、潜在的な社交不安障害や心理的問題が発生する可能性があることだ。多くの『うつむき族』は、もし自分の手元にスマホが無ければ、言いようのない焦燥感に襲われると告白している。というのも、スマホにあまりにも依存しているため、極端なケースでは、『神経症』的な挙動が見られる場合もある」。
上海の地下鉄駅で、ある「うつむき族」は、「もしスマホを持っていなければ、手持無沙汰でどうしようもないと思う。スマホを覗きこむのも、実際に目的があって見ている訳ではない。空いた時間に何をして良いのか分からず、ついアプリを起動して、微博(ウェイボー・ミニブログ)にアクセスしてしまう」と打ち明けた。
上海市心理学会の副会長を務める復旦大学心理学科の孫時進・教授は、「このような症状は、心理学的に見て、一種の『情報依存症』といえる。『うつむき族』が、時代の渦に巻き込まれ、時代の先を進んでいる人々であることは事実だ。もしスマホやネットが自分の周りになければ、周りの人々との社交圏から『外れた』と感じるだろう。だが、別の側面から見ると、『うつむき族』の現実の交際範囲は非常に狭く、情報を得、交流するための選択肢は大変少ない」と指摘した。
「バーチャル社交」に依存しすぎるあまり、現実のありふれた社交がなおざりになり、人間関係がうまくいかなくなる。ネットユーザー「小暉」さんは、「僕は、バーチャルの世界ではとても活発で、微博を数万件発信してきた。だが、職場では、隣の席の同僚も含め、職場の人々とはほとんど口を利かずに、QQや微信でやり取りする。顔と顔を突き合わせて話をするのが億劫でたまらない。どのみち、ちょっと指で操作するだけで、チャットアプリを使えば全て話が済む」と話した。
復旦大学報道学院副院長の李双竜・ジャーナリズム学部教授は、「スマホ依存は、強制性を伴う精神依存でありメディア依存である。通常、このような依存行為は、主に、現実の人間関係から発生する緊張やそこから逃避したいという気持ちから生じる。また、自分が目的もなしに多くの時間を浪費しているという事実を認識することは、彼らにとって大変困難極まることなのだ」との見方を示した。