中央経済政策会議が12月10日から12日にかけて北京で開催された。2020年は小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的な完成と第13次5カ年計画(2016~20年)が総仕上げの年だ。奮闘目標「2つの百年」の歴史的交叉地点に立ち、より複雑な中国内外の環境に直面して、来年の中国経済がどのような動きをみせるかに広く注目が集まる。
財政・通貨政策にどのような新しい内容があるか?
会議では、引き続き積極的な財政政策と安定的な通貨政策を実施するという2020年のマクロ政策の方向性の基調が確定された。これは中国のマクロ政策が10年連続で採用してきた「積極的+安定的」の組み合わせだ。しかし従来の組み合わせの背後には新たな内容が含まれている。
財政政策について、会議では、「積極的な財政政策では質向上と効率向上に力を入れ、構造調整をさらに重視し、一般会計の支出を断固圧縮し、重点分野の保障をしっかりと行い、末端の賃金の保障、運営の保障、基本的民生を保障する」と指摘された。
2018年の中央経済政策会議で提起されたのは「積極的な財政政策では効率向上に力を入れ、より大規模な減税・費用削減を実施し、地方政府の特定債権の規模を大幅に増やす」ことだった。
比較してわかるのは、今年の表現はより具体的であり、「効率向上に力を入れ」が「質向上と効率向上に力を入れ」に変わり、また「構造調整をさらに重視し、一般会計の支出を断固として圧縮し、重点分野の保障をしっかりと行う」ことが提起された。
国家金融・発展実験室の曽剛副室長は、「一方で、積極的な財政政策で質向上と効率向上に力を入れるには、公共支出の全体的水準を拡大し減税・費用削減を実施して、安定成長のためによりよい支援を提供することが必要だ。また一方で、構造調整をより強調し、戦略的新興産業の発展を支える支出を増やし、産業構造を最適化すると同時に、国民生活への保障を拡大し、社会政策の支えるべき最低ラインを確保し、社会全体の安定した運営を保障することが必要だ」と述べた。
エコノミストの趙錫軍氏は、「積極的な財政政策の重点にいくつかの変化が生じ、構造調整と経済の質・効率の向上に重点が置かれるようになった。質・効率向上は実際には基本的で主導的なマクロ調整政策と経済発展の新たな要求を結びつけ、目標と政策の一致性を維持するものだ」との見方を示した。
瑞銀証券の中国チーフエコノミストの汪濤氏は、「2回にわたる大規模な減税の後なので、来年は減税の可能性は低く、財政赤字が目に見えて増加することはあり得ず、20年の財政政策は重点をより突出させることになる」と述べた。
来年の不動産市場の調整・コントロールにどのような変化があるだろうか?
会議では「不動産は住むものであって、投機のためのものではないという位置づけを堅持する」ことが強調された。専門家は、「『地価の安定、不動産価格の安定、期待感の安定』の要求の下、来年の政策は不動産を活性化することはしないが、地方には一定の政策調整の自主的な権限が与えられるだろう」との見方を示した。
中国社会科学院財経戦略研究院住宅ビッグデータプロジェクトグループの鄒琳華グループ長は、「中国経済は下ぶれ圧力が拡大し、これまでの予想では、不動産市場は適度に経済振興に利用され、『住宅は投機のためのものではない』という位置づけが弱まるかもしれないとされていた。『住宅は投機のためのものではない』ことを繰り返し述べ、政策のボーダーラインを明確にすれば、2020年の不動産市場に『一時的な暖かさ』のような季節性の強い変動が再び現れる事態は有効に回避できる」と述べた。
不動産に詳しい張波氏は、「不動産調整・コントロール手段はこれからも長期のものと短期のものを併用することになり、特に長期メカニズムの実施が今後も持続的に推進され、内容には社会保障対策用住宅の建設、リース用土地の供給側に対する保障、都市部の財産権共有住宅の推進、不動産に対する各種税金の法律的側面の推進・実施などが含まれる」と述べた。
上海易居不動産研究院の楊紅旭副院長は、「未来の不動産市場の調整・コントロール政策は安定が中心になり、中央政府レベルではさらに高度化した調整コントロールを行うことはないと同時に、国民生活をより重視するようになるとみられる。これは一部の政策が調整・緩和される可能性があることを意味する。全面的引き締めによる調整・コントロールは合理的な住宅消費と不動産購入ニーズを『誤って損なう』ため、国民生活を重視するなら漸進的かつ合理的な政策によるバックアップが必要になる」と述べた。
鄒氏によれば、「『都市ごとの施策の全面実施』は地方政府が(地価の安定、不動産価格の安定、期待感の安定の)『3つの安定』を基礎として、一定の政策調整の自主的な権限をもつことを意味する。市場情勢に合致しない一部の調整・コントロール政策は限界的調整に直面する可能性がある」という。
汪氏は、「来年の中国は全局的な不動産引き締め政策を緩めることはなく、頭金の割合を引き下げたりローン政策を大幅に緩和したりすることはないとみられる。しかし一部の地方政府が購入制限政策を小幅に緩めることは認められるとみられ、定住要件の簡素化や人材導入政策などの方法を通じて制限政策は小幅に緩和されるだろう」との見方を示した。
張氏はこれを補う形で、「不動産市場が過熱する都市の調整・コントロールは引き続き一定の高い圧力を保つだろうが、不動産価格の下ぶれ圧力が大きい三線・四線都市とそれ以下の都市では不動産価格を支援する政策が打ち出され、購入者の心理状態の安定を保とうとするかもしれない。よって未来の不動産市場には一方的で持続的な温度上昇の局面は現れず、全体として安定した小幅の変動がやはり主流のトレンドになるだろう」と述べた。
「デジタル経済」に初めて言及
例年の中央経済政策会議のリリースを比較してわかるのは、今年の会議では、「デジタル経済の発展に力を入れる」と初めて言及されたことだ。
中国工程院の鄔賀銓院士は取材に答える中で、「(デジタル経済は)今年の複数の重要会議でデジタル経済の発展が言及され、中央経済政策会議で言及されても正常なことだ。これはマクロレベルでデジタル経済に言及したものであり、実際にはデジタル経済の発展は今年になって始まったことではなく、デジタル経済についてはかねてより言われてきた」と述べた。
新時代証券の潘向東チーフエコノミストは、「中央経済政策会議は質の高い発展を推進することを強調しており、デジタル経済は注力ポイントになるとみられる。科学技術イノベーションを重視すれば、未来の人工知能(AI)、インダストリアルインターネット、モノのインターネット(IoT)などの成長分野が利益を受けることになり、5G商用化と関連インフラの川上から川下に至る産業も注目に値するものになる」と述べた。
昨年の中央経済政策会議では、「5G商用化の歩みを加速させ、AI、インダストリアルインターネット、IoTなどの新型インフラ建設を強化する」ことに言及したが、今年は5Gに関する内容がなかった。
鄔氏はこれについて、「今年は5Gの商用化がすでに始まったので、わざわざ言及する必要がなかった。2019年6月6日、中国は5G商用化の営業許可証を発行し、5Gの商用化が正式にスタートした。現在、大勢のユーザーが5G携帯電話を利用している」と述べた。
実際、5Gとデジタル経済は相互に補完しあう関係にある。工業・情報化部(省)の陳肇雄副部長は以前に、「5GはIoE(インターネットですべてのものをつなぐ)を実現するための重要な情報インフラであり、経済社会のデジタル化に向けたモデル転換を促進する上で重要な支えの役割とけん引の役割を果たす。『5G+インダストリアルインターネット』が加速的に追求され、工業経済のデジタル化・ネットワーク化・スマート化に向けた発展を力強く支えている」と述べている。
デジタル経済の国内総生産(GDP)の伸びに対する寄与を忘れるわけにはいかない。業界団体のGSMAアソシエーションの研究によれば、18年に中国のモバイル業界が直接的・間接的に生み出した雇用は850万人に達し、生み出した経済的付加価値は5兆2千億元(1元は約15.7円)に上ったという。
またGSMAアソシエーションは、2023年までに移動通信が中国経済のGDPに約6兆元寄与し、業界は5Gへの移行を加速させていくと予想している。さらに、中国信通院も2021年から2025年まで、5Gは中国の経済成長を15兆2千億元押し上げると試算している。
鄔氏は、「中央政府はやはり安定を維持しながら前進するという全体的基調を堅持し、大きな方向性には変化がなく、積極的な財政政策と安定的な通貨政策が引き続き大きな方向性になるだろう。『6つの安定』(雇用の安定、金融の安定、対外貿易の安定、外資の安定、投資の安定、予想の安定)が2018年に言及され、今年また言及されたことは、中央政府の政策が基本的に安定していること、引き続きこのような指導思想に基づくことを物語るものだ」と述べた。
また鄔氏は、「今年の環境はより一層複雑だが、中央政府の経済発展戦略の考え方には変化がなく、より強調されるようになったことは自分たちのことをしっかりやる、ということだ」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月13日