2019年には中国内外のリスクによる挑戦が目に見えて増加するという複雑な局面に直面しながら、中国の経済と社会は健全で安定した発展状況を維持した。この1年間の経済分野の流行語を総括すると、さまざまな角度から中国人の経済生活における集団の記憶をとどめることができ、また異なる角度から困難を克服しながら前進し、さまざまな姿をみせる中国の奮闘ぶりをうかがうこともできる。
流行語1:周期に逆行した調整
昨年末に行われた中央経済政策会議での要求を踏まえ、周期に逆行した調節の強化が今年のマクロ政策の中心的基調になった。
今年の中国経済は下ぶれ圧力が引き続き拡大し、さまざまな短期的問題と長期的問題、外部の問題と内部の問題、周期的な問題と構造的な問題が交互に錯綜して現れた。よく知られた供給側構造改革がターゲットにしたのは主に構造的矛盾であり、解決するのは長期的な問題で、もちろん短期的な効果もある。周期に逆行した調節は主に経済の下ぶれ周期に対応するためのもので、短期的な変動を落ち着かせ、成長予想を安定させる。具体的な措置をみると、周期に逆行した調節には積極的な財政政策と緩やかな金融政策の両面がある。
流行語2:より大規模な減税・費用削減
「より大規模な減税・費用削減を実施する」ことも昨年の中央経済政策会議の精神であり、周期に逆行した調節を行うマクロ政策の一部分だが、その影響が非常に大きく、通年にわたって維持され、目に見える経済安定効果があるため、単独に1項目を立てることにした。
今年は「より大規模な減税・費用削減」が引き続き強化され、付加価値税、法人税、個人所得税など12税目に及び、また教育付加費、地方教育付加費など10費用に及んだ……データをみると、第1-3四半期には、全国で新たに行われた減税・費用削減の金額は1兆7834億元(1元は約15.4円)に達した。このうち付加価値税改革による減税額は7035億元、小規模・零細企業の包摂的政策による減税額は1827億元、個人所得税の2段階改革による累計減税額は4426億元に上った。
流行語3:中米貿易摩擦
昨年3月に米トランプ政権が貿易戦争を一方的に発動してから、中米貿易摩擦は起伏の多い道をたどり、中国の経済運営における大きな背景、大きな変数になった。
今年に入ると、米政府は中国からの輸入商品への関税率を引き上げるとか、中国からの輸入商品の関税対象品目を拡大するなどとたびたび発表し、中国は一つ一つに対抗してきた。この間に、米政府は華為(ファーウェイ)をはじめとする企業を制裁対象リストの「エンティティリスト」に加え、米企業がコア部品やコア技術をこうした中国企業に販売することを禁じ、貿易戦争は一段階エスカレートしてテクノロジーの封じ込めに発展し、中米両国の産業、貿易、経済に損害をもたらした。
貿易戦争について、中国の態度は明確だ。望んではいないが、恐れているわけではない。中国政府は終始一貫して相互尊重と平等を基礎とし、協議や交渉によって双方の経済貿易分野における溝を解決しようとしてきた。
流行語4:5G
今年の6月6日、工業・情報化部(省)は中国電信、中国移動、中国聯通、中国広電に5G商用化の営業許可証を発行した。これにより中国は5G商用化元年に突入し、5Gの大規模な商用化がスタートした。
1G技術は移動中の通話という難問を解決したというなら、2G技術は広域カバーを実現し、3G技術は画像の送信を可能にし、4G技術はブロードバンド化した発展を真に実現し、微信(WeChat)、モバイル決済、シェアリングエコノミー(共有経済)、ショート動画などの誕生発展をもたらしたといえる。そして5G技術は、無限の可能性に満ちた新しい未来をもたらすことになる。
中国では、5Gに関する研究開発と投資が爆発的に増加しており、デジタル都市セキュリティシステム、ドローンによる救援活動、遠隔操作の自動車運転、4K高精細リアルタイム教室、遠隔医療、インダストリアルインターネット(産業のインターネット)など多くの分野・産業が、5Gの到来を受けて活発な動きをみせている。
流行語5:ハイテクベンチャーボード
今年6月13日、ハイテクベンチャーボードが設立され、中国資本市場に新しいボードが誕生した。
ハイテクベンチャーボードは国家戦略に合致し、キーとなるコア技術でブレークスルーを達成し、市場に高く評価されたテクノロジーイノベーション企業が主なサービス対象で、次世代情報技術(IT)、先端設備、新材料、新エネルギー、省エネ・環境保護、バイオ医薬といったハイテク産業と戦略的新興産業を重点的に支援する。現在、ハイテク企業数十社が上場を果たし、このことは中国の産業のモデル転換・高度化、経済の高い品質の発展を実現する上で大きな力になる。
流行語6:「買って買って買って」
商品PRのライブ配信が今年の「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)では全面的かつ爆発的な勢いをみせ、大手ECはどこも重点マーケティングの土俵とした。淘宝(タオバオ)、京東、快手、抖音(TikTok)、蘑茹街、網易考拉などがこの新しいECの競争に続々参入した。淘宝のまとめたデータでは、今年の天猫(Tmall)の「ダブル11」では20万を超えるブランド・企業の半分が自らライブ配信のスペースを開設し、配信回数は昨年の2倍に増えたという。
「OMG」(オーマイガー!)、「買って買って買って」……こんな「美を愛する数多くの人々」に喜ばれも嫌がられもする呼びかけを、多くの人は耳にしたことと思う。19年には「口紅アニキ」と呼ばれる李佳▼(王へんに奇)さんが大評判になった。11月10日の夜7時から翌日の深夜2時にかけて、李さんのライブ配信は視聴回数が3683万2500回に、「いいね!」が6507万7千件に達した。
11月11日の深夜から、天猫の「ダブル11」は次々記録を更新した。2時間で148ブランドが売上1億元を達成して「1億元クラブ」に入った。淘宝のライブ配信は9時間で成約額100億元を達成した。阿里研究院とデロイトトウシュトーマツなどが共同で発表した「中国輸入消費市場研究報告」は、「ライブ配信を行うECの消費者を誘導する役割は明確であり、輸入の新たな消費形態をリードし始めた」と指摘した。
流行語7:「好きなだけ果物を食べる」「好きなだけ豚肉を食べる」
上半期には果物、下半期には豚肉など、一部の農産品価格が上昇して消費者物価指数(CPI)を押し上げた。現在、果物価格は正常な水準に戻り、豚肉価格は最近は下落しつつも、なお高い水準にある。
多くの農産品はライフサイクルが長く、価格に周期的な変動が生じやすい。今回の豚肉価格上昇は上昇幅が大きく、継続した時間が長く、これは主に「豚肉の周期」にアフリカ豚コレラの影響が加わって、供給不足が続いたためだ。現在のCPI上昇は主に豚肉価格の上昇にけん引されたものであり、明らかな構造的特徴がみられ、その他の商品価格には異動はみられない。全体としてみれば、中国の安定した通貨政策のさじ加減が適切で、経済運営は安定しており、これから短期間にインフレが発生する可能性は小さいといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月12日