ペット経済は若い人向けの「孤独を癒すビジネス」だ。人々の特別な思いと溶け合い、インターネットの追い風を受けて、中国では今、ペット経済が爆発的発展に向かっている。
調査機関のマーケティングリサーチによると、中国人は2019年にペットに関連して2020億元(1元は約15.4円)を消費し、前年比19%増加することが予想される。中国の現在の猫・犬飼育数は世界一で、24年には2億4800万匹に達する見込みだ。都市の猫・犬の飼い主のほぼ半数が90後(1990年代生まれ)で、その約半分がシングルだ。
昔は子供を「うちのワンちゃん」などと呼んだものだが今は犬を「うちの子」と呼ぶ
「2019年中国ペット産業白書」によると、ペットの飼い主の59.1%が、「ペットを自分の子供だと思っている」。
プログラマーの王さんは杭州市で働いて2年になる。1年前のある雨の夜、濡れそぼった野良猫が仕事帰りの王さんにくっついて、王さんの家のエレベーターに乗り込んできた。こうして王さんの猫中心の「ニャン星人」生活が始まった。今やこの唇の上のあたりにチャップリンのちょび髭のような黒い毛のある「チャーリー」と名付けられた小動物が、王さんのSNSのアイコンを独占するようになった。「実家も大学も杭州ではないので、近くには昔からの友達が少ない。チャーリーはずっと一緒にいてくれる」という。
大学を卒業して1年ほどになる蘭さんは、社会人3か月目にブリティッシュ・ショートヘアの猫を飼い始めた。仕事に行っている間に猫が寂しいのではと心配して、数ヶ月前にパートナーをあてがった。今年の「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)には「2人のお猫様」のために2千元近く使った。
ECプラットフォームによれば、今年の「ダブル11」は1日でペット関連の取引額が前年比約130%増加し、イベント開始から65分で昨年1年間の取引額を上回ったという。
孤独な若者が支える「愛の投資先市場」
大勢の「理想の暮らし」を求めて大都市にやって来た若者たちが、「金もなく、恋愛相手もいない」という「言い知れぬこの世の艱難辛苦」を実感した後、暮らしとは目の前の大変さをやり過ごすだけではなく、これからの大変さもやり過ごさなければならないものだと思い至るようになる。そんな影のようにつきまとう無力感の中、ペットは孤独をやり過ごす格好の存在になる。
ペットはたいていかわいらしい外見と無邪気な心をもっている。かわいがられることが好きで、愛情を示すのも好きで、若者の心や感情の隙間をちょうどよく埋めてくれる。
若者は他人とのつきあいで心をすり減らすより、ペットに資金と精力を注ぎ込み、愛情を注ぐことの直接的な喜びとペットからの愛情のお返しを得たいと考える。