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【中国キーワード】五輪が火をつけたスポーツ関連消費ブーム、中国市場にもたらした効果とは?

丸わかり!中国キーワード

人民網日本語版 2021年08月12日09:40

8月8日、東京五輪が閉幕した。新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、「五輪効果」に後押しされて、関連産業が爆発的発展を迎え、中国国内市場にも新たな消費の変化を数多くもたらした。

国産スポーツブランドが従来の枠を破る

五輪期間中、競技で颯爽と活躍する選手たちが瞬く間に「ライブコマースのトップスター」になり、選手たちが使用した物品がECプラットフォームで「爆発的な人気商品」になった。

淘宝(タオバオ)が先ごろ発表した2021年の東京五輪人気商品ランキングでは、開幕から1週間の段階では金メダル1号の楊倩選手と同じデザインのヘアアクセサリーが首位に立ち、陳夢選手と同じデザインの卓球ラケットのネックレス、侯志慧選手が使用した風油精(エッセンシャルオイル)などもランキングに入った。淘宝のデータでは、7月24-30日だけで、淘宝プラットフォームで「楊倩選手と同じデザインのアヒルのヘアアクセサリー」の1日の検索件数は4200%急増した。また競技日程が進むにつれ、「陳夢」、「張怡寧」、「蘇炳添」などのキーワードを含んだ検索件数が大幅に増加した。ファンたちの消費意欲に支えられて、楊舒予選手と同じデザインのスマートフォンカバー、侯志慧選手と同じデザインの保温マグなどの商品が次々に新たな注目点になった。そして張継科選手のユニフォームのレプリカ、さらには北京五輪、北京冬季五輪の関連グッズの検索件数も短期間で爆発的に増加した。

実際のところ、五輪そのものが関心の高まりや売上増を牽引した。江蘇省南京市の商業施設・東方福来徳のある総合電子玩具店の店員は、「店内と微信(WeChat)で、ニンテンドースイッチのソフト『マリオ&ソニックAT東京2020オリンピック』の問い合わせ件数が明らかに増加した。このゲームがリリースされたのは2年前にもかかわらずだ」と話した。

五輪チャンピオンと同じ商品だけでなく、オンラインの大手ECプラットフォームで売られているTシャツやトートバッグ、抱き枕、スマホケースなどの商品も、五輪要素が加わって売上が急増したものが数多くある。

今回の五輪期間中、中国国産スポーツブランドが「従来の枠を破った」ことが注目を集めた。

「自分は中国の男女卓球チームのファンで、試合は全部テレビでじっくり観戦する。中国選手のユニフォームはかっこいいし、颯爽とした感じなので、専門店でレプリカを買った」。こう話す四川省楽山市の李俊淳さんは8日に市内中心部の国産スポーツブランド専門店を訪れ、ごひいきの選手のユニフォームのレプリカを購入し、消費を通じて五輪ムードを味わったという。

ニッチな種目が大衆の視野の中へ

今回の五輪では、新競技としてスケートボード、サーフィン、スポーツクライミング、野球・ソフトボール、空手の5つが加えられた。競技場の外でも、こうした「ニッチな種目」が徐々に人々の生活に入り込み、関連スポーツ施設の人気に火がつき始め、関連器具の売上も伸びている。

北京のスケボー用品店では、子どもを持つ親が取材に対して、「うちの子はずっとスケボーに興味があったが、親としてはこれまでスケボーには反対だった。すごく危険ですぐけがをしそうだと思っていたし、スケボーはちゃんとしたスポーツ種目ではなく、こんなものに夢中になっていたらダメになってしまうと思っていた。でもここ半月ほど、子どもと一緒に家で五輪のスケートボードのパークの試合を見ていて、この競技についていろいろなことを知った。今は子どもがスケボーをすることに反対していない」と話した。

スケボー用品店を経営するベテランスケボー愛好家の王舟さんは取材に、「20年前にはスケボーはストリート文化やニッチな文化の代表に過ぎず、スケボーをやる人は世の中に反抗する若者と見られていた。スケボーが五輪種目になり、このニッチなスポーツを広めるのに絶好の機会が訪れ、多くの人の凝り固まった偏見も正すことができた。今年7月と8月のボードの売上は例年の夏休みシーズンよりも明らかに多く、中には東京五輪の試合を見て興味を覚えたという人も少なくない。自分も五輪がこのスポーツを一層発展させてくれるのではと非常に期待している。ここ数年、スケボーの愛好家は年々増加しており、多くの学校外のスポーツトレーニング機関がスケボー教室を開設し、中国でもプロの大会が行われた」と話した。

スケボーだけでなく、東京五輪はクライミング施設にも熱気を呼び込んだ。北京市朝陽区の屋内クライミング施設のスタッフは、「少数のクライミング愛好家を除き、当施設で日常的に受け入れるお客様の大半は好奇心からクライミングを体験してみたいという方たちで、クライミングについてはあまりよくご存じない。でもこ数日はお客様が増加し、その中には東京五輪で試合を見てやってみたくなったと、特にボルダリングを指定してチャレンジする方が少なくない」と述べた。

ショート動画共有アプリの「TikTok(ティックトック)」のスポーツ「いいね」ランキングベスト10では、バスケットボールやサッカー、競泳、陸上など世界で主流のスポーツ種目の占める割合が半分を超えている。しかし、サーフィンやボート、ラグビー、馬術などのニッチな五輪種目は過去1年間に再生回数がこれまでで一番増加しており、雪上綱引やハンググライダー、水球などの民間スポーツ種目も注目を集めているという。

国民全体のトレーニング意欲が高まる

東京五輪は多くの人がスケボーやスポーツクライミングなどの新種目を知るきっかけになっただけでなく、中国国内のトレーニングブームも巻き起こした。五輪がスポーツへの注目を呼び起こし、多くの人が体を動かし始めた。スポーツ施設やトレーニングジムの中には顧客数が激増したところもある。

北京市朝陽区のバドミントン施設の責任者は、「8月は予約でいっぱい、今は9月、10月以降の分しか予約できない。例年の夏休みシーズンは生徒や学生が大勢予約しに来てプレーするが、今年は東京五輪の影響で、予約する方の中には大人がたくさん増えた。こうした方たちはバドミントンの試合を見てプレーできる場所を予約しようと考え、施設はさらに混み合うことになった。プレーしたいならかなり前から予約する必要がある」と話した。

バドミントン施設だけでなく、多くの人がトレーニング熱を再燃させ、プールやトレーニングジムなども非常に人気だ。北京市の王さんは取材に、「これまでジムに行ってもいつも三日坊主で、怠け癖がついて行かなくなるのが落ちだったが、ここ2週間は五輪を見て、選手たちのがんばっている姿にエネルギーをもらった。特に蘇炳添選手は走ることへの意欲を改めてかき立ててくれた。今は平日はいつもジムに行って走っている」と話した。

消費のレベルアップから産業の高度化まで 文化・スポーツ・ビジネス・旅行がより深く融合

これまでの大規模なスポーツイベントでは、開催期間が終われば関連の消費への意欲が低下するのが常で、さらに今回は半年後に北京冬季五輪・パラリンピックが控えている。目下のこの五輪消費ブームをどうやって持続させたらいいだろうか。

大衆という基礎が、常にスポーツ消費のカギを握る。京東のビッグデータによると、2017年から2020年にかけて1人あたりスポーツ消費金額は増加を続けており、消費市場が最も大きいスポーツ種目はマラソン、バスケット、ヨガだった。ここから、スポーツの浸透率の高まりがうかがえる。

少し前に国務院が通達した「国民健康づくり計画(2021-2025年)」は、25年をめどに国民の健康づくりのための公共サービス体制をさらに整備し、日常的にスポーツで体を鍛える人々の割合を38.5%にまで高め、県(市・区)、郷・鎮(街道<エリア>)、行政村(コミュニティ)の公共健康づくり施設やコミュニティの「15分間健康づくり圏」(徒歩15分圏内に健康づくりができる施設があること)のフルカバーを実現し、全国のスポーツ産業を5兆元(1元は約17.3円)規模にまで拡大するとしている。

スポーツ市場の活力とスポーツ消費の意欲が絶えずかき立てられ、供給サイドにも規模拡大と質向上が求められるようになった。

南京財経大学の現代サービス業シンクタンクで首席専門家を務める張為付教授は、「中国国内経済の発展はすでにスポーツ消費と健康消費を追求する段階に到達した。特に新型コロナウイルス感染症の打撃の中、人々は体の健康とスポーツ・トレーニングにより注目するようになった。一方で、中国国内のスポーツ消費分野にはすでに整った産業チェーンが備わり、良好なビジネスエコシステムが国産スポーツブランドの誕生・発展を支えている。国内メーカーは上手くチャンスをつかみ、チャンスを拡大・発展させ、最終的に長く続く発展の原動力と競争力を形成する必要がある。今回の五輪消費ブームの場合、関連企業がより『新しい』製品と『新しい』サービスを絶えず打ち出して、消費者の絶えず変化するニーズに応え、新たな消費の成長源を育成し、自身の競争力を高めなければ、消費ブームを続かせることはできない」と述べた。

専門家は、「スポーツ消費をより質の高い発展へ向かわせようとするなら、スポーツ産業のレベルアップが必ずこれに追いついていなければならず、文化・スポーツ・ビジネス・旅行の深い融合に向かわなければならない」と指摘。張氏は、「2022年北京冬季五輪・パラリンピックがまもなく開催され、スポーツ消費とスポーツ産業は引き続き急速発展のチャンス期を迎えるが、感染症がリバウンドし長期的に存在することのマイナス影響も受ける。スポーツ消費を押し上げ、スポーツ産業の高度化を推進したいなら、文化・スポーツ・ビジネス・旅行の融合がさらに新技術や新モデル、新業態へと向かっていくことが必要になる」との見方を示した。(人民網日本語版論説員)

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「人民網日本語版」2021年8月12日

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