一体いつ頃からだろうか。夏になると街には「奇妙な格好」をした女性が大勢現れるようになった。日差しを遮るためのつばが広い帽子、黒縁の特大サングラス、全身を包む黒いマント、巨大な日傘などを利用して、頭のてっぺんから足のつま先まで覆い隠し、髪の毛一本たりとも日に当てまいとしている。
「子どもを育てても老後のためにはならない。日焼け対策をして初めて老後の肌を守れる」というのが、今時の若者の紫外線(UV)対策をめぐる格言だ。
「ネットで人気」の新UV対策商品で財布が空っぽに
UV対策には、1本の日傘から「完全武装」までいろいろあるが、主にハード面の対策とソフト面の対策の2種類に分かれる。ソフト面の対策とは、日焼け止めクリームや日焼け止めスプレーを使い、紫外線を反射させるか吸収して、日焼け止めの効果を上げることだ。ハード面の対策とは、日焼けを防ぐ服、帽子、アームカバー、UVカット眼鏡などを着用して、物理的に紫外線を遮ることを言う。
ソフト対策はイマジネーションにあふれている。大手ブランドが相次いでイノベーションを打ち出している。パンテーンはUVカットヘアオイルを発売し、丸美は目元専用のUVカット商品で中国製化粧品の特色を打ち出し、小蜜坊はUVカットリップクリームを売り出した。
ターゲットを細かく見ると、女性消費者だけでなく、男性と乳幼児の割合が上昇を続けている。唯品会のデータでは、今年3月の男性向けUV対策化粧品の売上量増加率は女性の2倍だったという。
ここ2年近くで、UV対策商品は機能の細分化が一層進み、一部のブルーライトと紫外線をカットできるクリームの広告を見ると、機能の中心が電子デバイスの発するブルーライトのカットに移ったことがわかる。
画期的な技術がハードUV対策の新たな人気商品に?
UVカットクリームのメーカーが想像もしなかったことだが、この市場のシェアを奪うのは他のクリームメーカーではなく、なんとハード面のUV対策商品だ。
アウトドア製品のキャメルの公式旗艦店をのぞくと、UV対策ウェアにはヒアルロン酸加工を施した生地が使用され、保湿効果を上げている。別の一部のブランドのUV対策ウェアには美白効果、コラーゲン配合によるしっとり効果、肌を清潔に保つ効果などがあるという。
蕉下や蕉内などのネットで人気のアパレルブランドは、画期的な技術の重心を紫外線保護指数(UPF)や紫外線A波(UVA)対策、また着用した時の「涼感」に置いている。
消費主義が盛んな今日、消費者はブランドや外観などに喜んでお金を払い、「高い顔面偏差値+画期的な技術」も、消費者にUV対策を超えたアイデンティティと満足感を与えている。
全面的なUV対策は本当に健康のためになるのか?それとも消費主義の落とし穴か?
UV対策は果たして必要なのかといえば、必要であることは間違いない。
しかし頭から足下まで完全に包む必要があるかといえば、必要ないという答えが返ってくることは確実だ。
最近、浙江省杭州市で「90後(1990年代生まれ)」の女性が、養蜂用防護服のようなスタイルで全身を日差しから遮っていたところ、骨粗しょう症になってしまったというニュースが注目を集めた。林さんという女性はほとんど外に出ることなく、外に出る時には「完全武装」で、サングラス、帽子、マスクがどれも欠かせなかった。またUV対策の効果を維持しようとして、仕事の同僚たちと同じようにコーヒーばかり飲んでいたという。医師は、「UV対策のやり過ぎ、運動の欠如、カフェインの取り過ぎが、骨粗しょう症の誘因だ」と話す。
米国立衛生研究所によると、ビタミンDはカルシウムの吸収をサポートする。食べ物や飲み物で十分な量のビタミンDを摂取している人が少なく、人体のビタミンDの90%は太陽を浴びて体内で生成される。よって日に当たる時間がなければ、カルシウムの吸収に極めて大きな影響を与えるという。
つまり、UV対策をしっかり行なえば行なうほど、体内で生成されるビタミンDが少なくなるということだ。すると骨がもろくなったり、骨折しやすくなったり、さらには心血管疾患や神経系疾患を引き起こすおそれもある。
もちろん、これはUV対策がまったく要らないということではなく、日光を完全に遮断してはならないということだ。適切な保護をした上で意識的に日光に当たることが必要だ。(編集KS)
「人民網日本語版」2022年6月22日