国際原子力機関(IAEA)が日本の福島原発汚染水の処分に関する包括報告書を発表すると、原発汚染水の海洋放出に反対する声が各地で高まった。(文:羅歓欣・中国社会科学院国際法研究所副研究員、中国社会科学院海洋法治研究センター副主任兼秘書長)
国際原子力機関憲章の締約国は現在170ヶ国余り。IAEAによる福島原発汚染水のレビューは締約国総会でのいかなる議論も投票も経ておらず、国際機関の通常の議事手続きも踏んでいない。IAEAタスクフォースの設置過程を振り返ると、そのレビューは日本の一方的な委託に基づき実施されたものであり、報告書には国際法上の効力はなく、原発汚染水の海洋放出計画にいかなる合法性も正当性も与えることはできない。
まず、IAEA福島原発汚染水タスクフォースは日本政府と「委託関係」にあり、その作業は日本の委託した範囲に制限されている。日本はIAEAに多核種除去設備(ALPS)システムの安全性に関するレビューを委託しただけであり、IAEAタスクフォースの実際のレビュー内容もこの方面のみに限られた。日本が他の実行可能な放射性物質汚染除去手段を尽くしたのかについては審査が行われなかったばかりか、原発汚染水の海洋放出計画の合法性についても言及されていない。
次に、IAEAのレビューは日本政府が一方的に提供した資料と条件に基づくもので、日本が「誠実に」情報を提供したか否かは審査しなかった。IAEAタスクフォースが目にすることのできた実際の状況、測定できたサンプルはいずれも限定的だった。なぜなら、IAEAは主に日本の提出した資料に対して書面審査を行ったのであり、現場視察については、日程や対象、範囲を日本側が指定したか、日本側が入念な手配と準備を終えた後にIAEAタスクフォースが現場に入ったからだ。
IAEAは包括報告書でも、日本の福島原発汚染水海洋放出計画は日本政府が自ら決定したものであり、IAEAとは関係がないと指摘した。また、包括報告書はIAEA加盟国の意見を代表するものではなく、IAEA及び加盟国はいかなる責任も結果も負わないとしている。(編集NA)
「人民網日本語版」2023年7月18日