【第121回】【最高人民法院の労働紛争案件審理の法律適用の若干問題に関する解釈(四)】における競業制限について (3)
分析:
司法実務において、雇用単位が競業制限期間内に一方的に競業制限協議を解除できるかどうかについては異なる見解が存在する。競業制限制度の目的は雇用単位の商業秘密を保護するためのものであり、雇用単位が保護を継続する必要がないと判断すれば、競業制限協議を解除することができ、労働者の就職権利もまた制限を受けず、その利益を損なうこともないという見解がある一方で、労働契約を解除終了する場合、労働者は競業制限協議の制約を受けるために、自らが熟知する領域の業務に就くことができず、かつ競業制限の約定期間に基づき、仕事、生活設計を行わなければならない。雇用単位がいつでも競業制限協議を解除できよう許可してしまうと、労働者のあらかじめ立てた計画や合理的な予測を混乱させ、労働者の権益を損なうことになる。そのうえ、競業制限協議が双方の義務契約である以上、一方が思いのままに解除することはできないという見解がある。
「解釈(四)」では条件付で前者の見解を採用している。つまり、まず雇用単位が競業制限期限内に単独で競業制限協議の権利を解除できることを認め、同時に労働者の合法的権益を保護するため、労働者に競業制限経済補償の三か月分を別途支払うよう雇用単位に請求する権利を与えている。
第十条
労働者が競業制限の約定に違反し、雇用単位に対し違約金を支払った後、雇用単位は労働者に約定に基づき競業制限義務の継続履行を求めるとき、人民法院はこれを支持する。
分析:
司法実務において、競業制限義務に違反した労働者が違約金を支払った後、約定した競業制限期間は依然競業制限義務を負うべきか否か議論が分かれている。労働者はすでに違約責任を引き受けており、継続して競業制限義務を負う必要はないという見解がある一方で、競業制限の目的は雇用単位が事前に自発的な方法で商業秘密を保護することにあり、労働者はたとえ賠償の可能性があっても、雇用単位に商業秘密が漏えいする可能性とそのリスクを負わせてはならず、このため労働者は依然競業制限義務を負わなければならないという見解もある。
「解釈(四)」では後者の見解が採用されているが、実務上においては、“競業制限義務の継続履行”は非財産性の責任負担方式であり、決定を具体的にいかに実施するか?などの問題も存在する。(例:労働者が決定を執行しないまたは再び競業制限義務に違反する行為がある場合、雇用単位は再度労働者に賠償責任を要求する権利があるかどうか。)
作者:周暘 段和段法律事務所パートナー弁護士(早稲田大学法学研究科卒 法学修士)
作者:高嵩 段和段法律事務所パートナー弁護士(北京大学法学部卒、元北京第2中級人民法院裁判官)
「人民網日本語版」2013年3月15日
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